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2ヶ月ぶりにセックスした俺と彼女の話。⑤
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起きたら17時を過ぎていて、俺の下半身は申し訳程度にバスタオルで隠されていた。
枕元に畳んで置いてあった服を身につけて、リビングへ続く扉を開ける。
「おはよう」
「あ、おはようございます……」
反省の意味を込めて敬語で話す俺を見て、彼女が首をかしげた。
「ごめん、せっかく誕生日だったのに何もしなくて」
「えぇ?いいよ」
「誕生日プレゼントとか、その、好きなものがわかんないから、用意してない。一緒に買おうと思ってて」
「うんうん」
「あと中に出してすみませんでした」
ソファに座る彼女の足元に跪いて土下座をする。
「逆に君は欲しいものある?」
「え、俺?」
「うん」
「もっと一緒にいる時間が欲しい」
「あれ、そのために合鍵渡したんだけどな」
「いや、でも夜に仕事してるって言ってたし、邪魔になるから頻繁に使えないでしょ」
「そっか」
しばらく何かを考えているふうに黙り込んだ彼女は、突然ソファから立ち上がった。
「……ちょっと、出かけてくる」
「え、どこに?」
「コンビニ」
「俺も行く」
「君はシャワーでも浴びてなさい」
「すぐ帰るよ」そう言って彼女は出て行った。
シャワーを浴びろと言われたので、大人しくその場で着ていたTシャツを脱ぐ。
……さすがに怒ったんだろうか。
誕生日にセックスして無許可で中出しした挙句疲れて寝て、プレゼントも買ってなくて、もっと一緒にいたいとか女々しいこと言って、愛想を尽かされたんだろうか。
ひとり反省会をしたものの、シャワーを浴びる気力も彼女を追いかける気力も湧き上がる前に、玄関がガチャリとなった。
「あれ、はだかんぼだ」
「あ、おかえり……」
「ただいま」と笑う彼女の手には、雑誌とコンビニ袋が下がっていた。
「え、どうしたの、これ」
「買った」
ドサッと厚みのある雑誌がテーブルに落とされる。
雑に中身をパラパラめくってから、巻頭にあるピンク色のインクで書かれた用紙を取り出した。
どこから持ってきたのか、ボールペンを使って無言で枠内を埋めていく。
『妻になる人』……?
「え、えぇ!?」
彼女が買ったのは結婚情報誌で、書いていたのは全面ピンクの婚姻届だった。
その欄を鼻歌まじりに埋めている。
「はい」
住所と名前を埋めただけの書類を手渡される。
「誕生日プレゼント、君の人生でいいよ」
壮大な要求をされて、頬がひきつる。
社会人一年目なこととか、彼女とはまだ付き合って半年だとか、様々な言い訳が頭の中を駆け巡る。
大前提として、好きではあるけど。
いきなり結婚じゃなくて、同棲はどうだろうか。
最低行為をした手前、そんな提案もできない。
「……やっぱり、怒ってる、の?」
ピンク色の紙を持つ半裸の俺を見て、イタズラっぽく、ふふっ、と彼女が笑った。
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