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2章
7
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義弟は何も言わずじっと私を見ていた。
驚いたふうでもない。私の耳から手を離し、空洞のような真っ黒な目でこちらを見ている。感情が急に読めなくなった。
「……ご、ごめんなさい。私が言うべきではないですね。忘れてください」
長く感じる沈黙に耐えきれなくなって、視線を逸らした。そのまま布団の中へ潜り込むように体を捩る。
ほとんど同時に衣擦れの音がして義弟の体温が近くなった。
そして布団に隠れる私の頭を胸に抱えるようにして、息が苦しくなるくらい強い力で抱きすくめた。
「――今から、」
義弟の声が耳元で低く響く。
「今からすることは、夢だと思って、明日になったら、忘れてください」
思わず頭を持ち上げようとしたけど、びくともしない。
「…………嫌」
私は義弟の背中に腕を回してしがみつき、かぶりを振った。
「嫌よ。絶対、忘れない」
義弟の腕の力が緩んだ。その隙にもがくようにして布団から顔を出す。義弟がどんな顔をしているのか見たかった。
目が合った義弟は、困ったようにうっすらと笑いながら眉を下げていた。私はもう一度その目を見て「嫌」と声を振り絞った。
諦めた声で笑って、義弟の唇が私の額に触れた。
驚いている暇なんてなかった。
額から、伏せたまぶたと頬を通って、最後に恐々と唇に触れる。
目を瞑りながら、義弟の浴衣の胸あたりに手を伸ばしてゆっくり背中に回した。
啄むようなキスが何度も繰り返されて、尖らせた舌先がこじ開けるように唇を這う。
「――っ」
頭のてっぺんから足の爪先まで電気が走ったような感覚がした。わずかに開いた隙間を潜り抜けて、ぬめった舌が入ってくる。
背中に回した手で浴衣の生地を握り、瞑っていた目をいっそう硬く閉じる。
「んぅっ、……んっ、ん……」
くぐもった自分の声が鼻から抜ける。
義弟の、さっきまでの遠慮がちな態度が一転した。
「んぁっ……ん、……っ、はぁ……っ」
呼吸すらままならないほど激しく口腔内を舐め回されて、意識がぼうっと霞んでくる。
「あっ、……まって、んっ」
唇を離して顔を背けてもダメだった。顎を持ち上げられると再び舌が捩じ込まれて、また息ができなくなる。
大きな手が、横向きになった私の頭から背中を通ってお尻まで大きくゆっくりと撫でた。
「……っ」
薄い生地越しに熱い体温が伝わって、思わず肩を震わせてしまう。
今度は立てた指先が背中のある場所を引っ掻いた。一瞬でぷつりと弾けて、ネグリジェの中で胸の締め付けが緩む。
あっという間に布団の上で仰向けにひっくり返されて、義弟が私の上に跨りながら見下ろした。
大きな手がまた額や頬を通って髪を撫でる。何度も視界が遮られて、義弟の唇が今度は首すじに吸い付いた。違う箇所を変わるがわる吸いつかれて声を漏らしそうになる。義弟がどんな顔で私に触れているのか、見たくても見られないのがもどかしかった。
服の中でたわんだ下着ごと胸を掬い上げられ、今度は指先が胸の先端をとらえた。ビリッとしたむず痒さに驚いていると、もう片方の手がネグリジェの裾から入ってきた。膝や太ももをなぞるように撫でていき、あっさりと隠された場所に行き着く。
自分で望んでいたくせにいざとなったらひどく緊張して、無意識に内ももに力が入った。首すじを這っていた舌が離れて、私の足の間に手を添えたまま義弟が上体をずらす。急に目の前に彼の顔が来たから驚いて背けてしまった。無防備に晒した耳の縁をべろりと大きく舐め上げて、耳たぶを軽く噛まれる。背中がゾクゾクと震えて、骨抜きになったように体の力が抜けた。その瞬間、するりと足の間に潜り込んだ手がショーツ越しに私の中心をなぞった。くすぐるように何度も往復する一方で耳の中を尖った舌先がほじくるから、まるで複数の人に同時に触られているようだった。舐められたり弄られたりするたびに意識があちこちに飛んで、快楽が積み重なってあっという間に飲み込まれていきそうになる。
耳孔をしゃぶるぬめった音が鼓膜を直接震わせるせいで、私はとうとう声を抑えきれなくなった。
秘部の形がわかるほど蜜を吸い込んだショーツがピッタリと張り付いて、義弟の爪がぷっくりと膨れた突起に何度も引っかかる。腰を浮かせて下腹部に力を込めると内側からとろとろとさらに染み出てくる感覚がした。それに比例して指の動きが速さを増していく。義弟の手を阻もうとする直前で間に合わず、内ももが引き攣って、ぶるっと背中が大きく震える。
「――――っ」
息を飲んで、唇とまぶたをぎゅっと硬く結んだ。頭の中が真っ白になって震えが断続的になる。爪先で弾かれたところがむず痒い。執拗に耳を這っていた義弟の舌が離れて、今度は隣に体を倒した。私の頭の下に手を差し込んで抱き締めて、足の間を弄っていた手が今度は張り付いたショーツを剥がして中に入ってきた。
「あ……んんっ」
たった1本の指が、絶頂したばかりの膣内に沈んでくる。
関節を折り曲げて膣壁を擦りながらどんどん奥深くまで入って、耳を塞ぎたくなるくらい淫猥な音が足の間から漏れ出る。恥ずかしさから義弟の浴衣の袂を握りしめた。息苦しくなるのも構わずに顔をうずめて義弟の胸の中で声を押し殺す。
自分では絶対に届かないところまで義弟の指先が触れて、びくんっと体が反り返ったように跳ねる。離れてしまった頭をもう一度抱きかかえられて、身動きの取れない状態になりながら体の奥を指の腹で細かく撫でられるとまた内ももの筋肉がわななく。
「ふ、ぅう……っ、んん……っ」
また絶頂の波が近づいてきた。体の中心に力が入って膣内の指を根本から強く締め付ける。義弟の指が同じところを何度も押し上げた。息をするために開いた口から湿った熱が漏れる。……あとほんの数回、撫でてくれたら達することができたはずだった。なのに深く沈んだ指は締め付けから逃れるように膣内からぬるりと抜けてしまった。
「んぁっ、……あっ、あぁっ」
指にべったりとまとわりついた愛液を突起にまぶして、今度は直接、円を描くように優しく触れられる。ぬるぬると滑るからくすぐったいはずなのに、指が陰核をかすめるたびにどういうわけか気持ちよくて腰がくねる。そこで一度達したからだろうか。ちょっとした刺激で反応するくらい弱くなっている気がした。
「もっ……、もう、そこ、は……」
袂を握りすぎてはだけてしまった義弟の胸元に顔を突っ込んだまま手探りで遮る。ただ義弟の手の甲を触っただけなのに自分の分泌したもので指が濡れた。どれだけ感じて体が反応したのか……、考えたら恥ずかしくなって思考と体が一瞬硬直する。その隙を突いてもう一度、今度は指を2本に増やして私の中に入ってきた。さっきとは比べ物にならない下腹部の圧迫感に息が止まる。
「は、ぁっ……」
「……痛いですか?」
心配そうに聞いておきながら指が抜かれる気配はない。義弟は、一番奥の、さっき触れたところにまた指の腹を押し付けて、私の頭頂を見下ろしている。目が合わなくてもわかる。ずっと見られている。私は小さく首を横に振って義弟の体にしがみついた。
「ちがうの……、きもちいい……」
「……ここ?」
ぐぢゅっ、と粘液と空気の混ざり合う音が響いて、私のなかで義弟の指が関節を曲げながらぐねぐねともがく。私の反応を見ながら気持ちいいところを探って何度も押し上げて、撫でて、擦る。下腹部を引き絞るともっといいところに当たった。ずっと欲しくて焦がれていたものだ。
「あっ、あぁっ、あっ……ん、ぅう……っ、くぅうっ」
さっきの中途半端だった熱が再燃して、あっという間に上り詰めていく。頭のてっぺんから背中まで電流が駆け上る。腰から下が溶け出してしまったかのように感覚がなくなっていく。
義弟の指がぴったりと止まった。膣内の震えを確かめるように私のなかでじっとしている。こんな簡単に果てただなんて気づかれたくないのに、私のなかは無骨な指を吸い上げるように収縮を繰り返した。
やがてゆっくりと指が抜かれていって、義弟との間に溜まった熱が漏れた。しがみついていた腕を離す。目線を合わせられなくてうつむいたままでいると義弟の手がネグリジェの裾を太ももから腰の辺りまで捲った。
「……脱いで」
低く掠れた声がぶっきらぼうに言ってネグリジェを優しく引っ張る。言われた通りに布団の中でもぞもぞと脱ぐと、義弟が「全部」と言いながら下着に手をかけた。一瞬で全て取り払われると心許なくなって胸の前で両腕を抱いた。
「それじゃ、よく見えない」
義弟が私の手首を掴んで剥がそうとする。いくら暗い部屋で、布団の中だとしても恥ずかしい。無言で抱いた腕に力を込めると、義弟が小さく笑った。
「……強情ですね」
いつもの口調でそう言って諦めたのか布団の中に潜る。どんどん潜っていく義弟の頭がちょうどお腹の位置に来て、抱きしめるように腕が背中に回った。それからいきなりへその上を舐めた。驚いて布団をどかすとちょうど真下に義弟の頭があった。こちらを見上げることなく手が腰からお尻を撫でて、さらに下へ潜ろうとする。
「あっ、やだっ」
これより頭を下げられたらと思うと恥ずかしくて心臓が止まりそうだった。とっさに義弟の頬を掴もうと両手を伸ばす。だけどするりとかわされて義弟の頭と手がどんどん下がっていった。
「やっ、やだっ、ダメ……っ」
何度嫌だと訴えても聞き入れてもらえず、とうとう膝裏に手を差し込まれて大きく開かれた。羞恥心と諦めがぐちゃぐちゃに混ざって背けるように両手で顔を覆う。足の間に義弟の熱っぽい息がかかって、背筋をそらした。
「……や」
何の躊躇いもなく義弟の唇がそこに触れた。空気の潰れた音の後、ぬるりと生温かいものが秘裂を這ってそこに溜まった愛液を舐めとる。匂いすらわかるような本当の至近距離で見られていると思うと、指で触られたときよりもずっとずっと恥ずかしい。漏れ出てきそうになる声を殺して息も噛み締める。顔中が熱くのぼせたようになって、肩が震えて、悲しいわけでも怖いわけないのにどういうわけか目尻に涙が滲んできた。
義弟が、表面だけをうっすらとなぞるように舌先を尖らせて動かす。そのたびに聞こえてくる、猫がミルクを舐めるような水音に耳も塞ぎたくなった。性感の気持ちよさよりも恥ずかしさが勝って、震えながら、早く終わって欲しいとすら思う。
ちろちろと控えめに動いていた舌が、今度は全ての愛液を舐めとるようにべったりと秘部に張り付いた。驚きでひゅっと喉が鳴って意思と無関係に体がもっと小刻みに震える。少し怖くなって義弟の頭に手を伸ばした。
カラスの羽のように真っ黒く濡れた頭に私の指先が触れると、抵抗するように強く唇を押し付けてきて、義弟の舌が陰唇を掻き分けてさらに奥に入ってきた。腰の辺りからぞわりと痺れて足が勝手に空中を蹴る。舌が私のなかで抜き差しを繰り返すと義弟の鼻先も一緒になって突起に擦れて悲鳴のような声が出た。
生き物のように温かくぬめった舌が、私の浅いところを何度も往復する。力で抵抗を示してもどうにもならないと観念して再び声をひそめると、今度は顔の位置を少しずらして陰核を包皮ごと下からなぞって吸い上げた。弱点をわざとらしく音を立てて吸い上げて、ぽっかりと開いた膣内に2本の指がまた押し入ってくる。
私から嬌声を引き出すような行為は、私自身がさらに二度果てて意識を手放すまで続いた。じっとりとかいた汗が玉になって布団の上に流れ落ちるくらい、どこをどうすれば深く感じるのかしつこく探られた。思考回路がぶちぶちと容赦無く断たれて、何も考えられないほど真っ白に塗りつぶされた頭で、何度も終わりにして欲しいと泣いて訴えたところまでは覚えている。
普段、物静かな義弟の内に秘めた底知れぬ情欲をぶつけられて心の中では嬉しいはずなのに、それと同時にどうしようもない寂しさがじりじりと胸の奥底で燻った。彼にとってこれが最初で最後だと思ってした行為なのだとしたら、私は本当に一生、忘れることができない。
驚いたふうでもない。私の耳から手を離し、空洞のような真っ黒な目でこちらを見ている。感情が急に読めなくなった。
「……ご、ごめんなさい。私が言うべきではないですね。忘れてください」
長く感じる沈黙に耐えきれなくなって、視線を逸らした。そのまま布団の中へ潜り込むように体を捩る。
ほとんど同時に衣擦れの音がして義弟の体温が近くなった。
そして布団に隠れる私の頭を胸に抱えるようにして、息が苦しくなるくらい強い力で抱きすくめた。
「――今から、」
義弟の声が耳元で低く響く。
「今からすることは、夢だと思って、明日になったら、忘れてください」
思わず頭を持ち上げようとしたけど、びくともしない。
「…………嫌」
私は義弟の背中に腕を回してしがみつき、かぶりを振った。
「嫌よ。絶対、忘れない」
義弟の腕の力が緩んだ。その隙にもがくようにして布団から顔を出す。義弟がどんな顔をしているのか見たかった。
目が合った義弟は、困ったようにうっすらと笑いながら眉を下げていた。私はもう一度その目を見て「嫌」と声を振り絞った。
諦めた声で笑って、義弟の唇が私の額に触れた。
驚いている暇なんてなかった。
額から、伏せたまぶたと頬を通って、最後に恐々と唇に触れる。
目を瞑りながら、義弟の浴衣の胸あたりに手を伸ばしてゆっくり背中に回した。
啄むようなキスが何度も繰り返されて、尖らせた舌先がこじ開けるように唇を這う。
「――っ」
頭のてっぺんから足の爪先まで電気が走ったような感覚がした。わずかに開いた隙間を潜り抜けて、ぬめった舌が入ってくる。
背中に回した手で浴衣の生地を握り、瞑っていた目をいっそう硬く閉じる。
「んぅっ、……んっ、ん……」
くぐもった自分の声が鼻から抜ける。
義弟の、さっきまでの遠慮がちな態度が一転した。
「んぁっ……ん、……っ、はぁ……っ」
呼吸すらままならないほど激しく口腔内を舐め回されて、意識がぼうっと霞んでくる。
「あっ、……まって、んっ」
唇を離して顔を背けてもダメだった。顎を持ち上げられると再び舌が捩じ込まれて、また息ができなくなる。
大きな手が、横向きになった私の頭から背中を通ってお尻まで大きくゆっくりと撫でた。
「……っ」
薄い生地越しに熱い体温が伝わって、思わず肩を震わせてしまう。
今度は立てた指先が背中のある場所を引っ掻いた。一瞬でぷつりと弾けて、ネグリジェの中で胸の締め付けが緩む。
あっという間に布団の上で仰向けにひっくり返されて、義弟が私の上に跨りながら見下ろした。
大きな手がまた額や頬を通って髪を撫でる。何度も視界が遮られて、義弟の唇が今度は首すじに吸い付いた。違う箇所を変わるがわる吸いつかれて声を漏らしそうになる。義弟がどんな顔で私に触れているのか、見たくても見られないのがもどかしかった。
服の中でたわんだ下着ごと胸を掬い上げられ、今度は指先が胸の先端をとらえた。ビリッとしたむず痒さに驚いていると、もう片方の手がネグリジェの裾から入ってきた。膝や太ももをなぞるように撫でていき、あっさりと隠された場所に行き着く。
自分で望んでいたくせにいざとなったらひどく緊張して、無意識に内ももに力が入った。首すじを這っていた舌が離れて、私の足の間に手を添えたまま義弟が上体をずらす。急に目の前に彼の顔が来たから驚いて背けてしまった。無防備に晒した耳の縁をべろりと大きく舐め上げて、耳たぶを軽く噛まれる。背中がゾクゾクと震えて、骨抜きになったように体の力が抜けた。その瞬間、するりと足の間に潜り込んだ手がショーツ越しに私の中心をなぞった。くすぐるように何度も往復する一方で耳の中を尖った舌先がほじくるから、まるで複数の人に同時に触られているようだった。舐められたり弄られたりするたびに意識があちこちに飛んで、快楽が積み重なってあっという間に飲み込まれていきそうになる。
耳孔をしゃぶるぬめった音が鼓膜を直接震わせるせいで、私はとうとう声を抑えきれなくなった。
秘部の形がわかるほど蜜を吸い込んだショーツがピッタリと張り付いて、義弟の爪がぷっくりと膨れた突起に何度も引っかかる。腰を浮かせて下腹部に力を込めると内側からとろとろとさらに染み出てくる感覚がした。それに比例して指の動きが速さを増していく。義弟の手を阻もうとする直前で間に合わず、内ももが引き攣って、ぶるっと背中が大きく震える。
「――――っ」
息を飲んで、唇とまぶたをぎゅっと硬く結んだ。頭の中が真っ白になって震えが断続的になる。爪先で弾かれたところがむず痒い。執拗に耳を這っていた義弟の舌が離れて、今度は隣に体を倒した。私の頭の下に手を差し込んで抱き締めて、足の間を弄っていた手が今度は張り付いたショーツを剥がして中に入ってきた。
「あ……んんっ」
たった1本の指が、絶頂したばかりの膣内に沈んでくる。
関節を折り曲げて膣壁を擦りながらどんどん奥深くまで入って、耳を塞ぎたくなるくらい淫猥な音が足の間から漏れ出る。恥ずかしさから義弟の浴衣の袂を握りしめた。息苦しくなるのも構わずに顔をうずめて義弟の胸の中で声を押し殺す。
自分では絶対に届かないところまで義弟の指先が触れて、びくんっと体が反り返ったように跳ねる。離れてしまった頭をもう一度抱きかかえられて、身動きの取れない状態になりながら体の奥を指の腹で細かく撫でられるとまた内ももの筋肉がわななく。
「ふ、ぅう……っ、んん……っ」
また絶頂の波が近づいてきた。体の中心に力が入って膣内の指を根本から強く締め付ける。義弟の指が同じところを何度も押し上げた。息をするために開いた口から湿った熱が漏れる。……あとほんの数回、撫でてくれたら達することができたはずだった。なのに深く沈んだ指は締め付けから逃れるように膣内からぬるりと抜けてしまった。
「んぁっ、……あっ、あぁっ」
指にべったりとまとわりついた愛液を突起にまぶして、今度は直接、円を描くように優しく触れられる。ぬるぬると滑るからくすぐったいはずなのに、指が陰核をかすめるたびにどういうわけか気持ちよくて腰がくねる。そこで一度達したからだろうか。ちょっとした刺激で反応するくらい弱くなっている気がした。
「もっ……、もう、そこ、は……」
袂を握りすぎてはだけてしまった義弟の胸元に顔を突っ込んだまま手探りで遮る。ただ義弟の手の甲を触っただけなのに自分の分泌したもので指が濡れた。どれだけ感じて体が反応したのか……、考えたら恥ずかしくなって思考と体が一瞬硬直する。その隙を突いてもう一度、今度は指を2本に増やして私の中に入ってきた。さっきとは比べ物にならない下腹部の圧迫感に息が止まる。
「は、ぁっ……」
「……痛いですか?」
心配そうに聞いておきながら指が抜かれる気配はない。義弟は、一番奥の、さっき触れたところにまた指の腹を押し付けて、私の頭頂を見下ろしている。目が合わなくてもわかる。ずっと見られている。私は小さく首を横に振って義弟の体にしがみついた。
「ちがうの……、きもちいい……」
「……ここ?」
ぐぢゅっ、と粘液と空気の混ざり合う音が響いて、私のなかで義弟の指が関節を曲げながらぐねぐねともがく。私の反応を見ながら気持ちいいところを探って何度も押し上げて、撫でて、擦る。下腹部を引き絞るともっといいところに当たった。ずっと欲しくて焦がれていたものだ。
「あっ、あぁっ、あっ……ん、ぅう……っ、くぅうっ」
さっきの中途半端だった熱が再燃して、あっという間に上り詰めていく。頭のてっぺんから背中まで電流が駆け上る。腰から下が溶け出してしまったかのように感覚がなくなっていく。
義弟の指がぴったりと止まった。膣内の震えを確かめるように私のなかでじっとしている。こんな簡単に果てただなんて気づかれたくないのに、私のなかは無骨な指を吸い上げるように収縮を繰り返した。
やがてゆっくりと指が抜かれていって、義弟との間に溜まった熱が漏れた。しがみついていた腕を離す。目線を合わせられなくてうつむいたままでいると義弟の手がネグリジェの裾を太ももから腰の辺りまで捲った。
「……脱いで」
低く掠れた声がぶっきらぼうに言ってネグリジェを優しく引っ張る。言われた通りに布団の中でもぞもぞと脱ぐと、義弟が「全部」と言いながら下着に手をかけた。一瞬で全て取り払われると心許なくなって胸の前で両腕を抱いた。
「それじゃ、よく見えない」
義弟が私の手首を掴んで剥がそうとする。いくら暗い部屋で、布団の中だとしても恥ずかしい。無言で抱いた腕に力を込めると、義弟が小さく笑った。
「……強情ですね」
いつもの口調でそう言って諦めたのか布団の中に潜る。どんどん潜っていく義弟の頭がちょうどお腹の位置に来て、抱きしめるように腕が背中に回った。それからいきなりへその上を舐めた。驚いて布団をどかすとちょうど真下に義弟の頭があった。こちらを見上げることなく手が腰からお尻を撫でて、さらに下へ潜ろうとする。
「あっ、やだっ」
これより頭を下げられたらと思うと恥ずかしくて心臓が止まりそうだった。とっさに義弟の頬を掴もうと両手を伸ばす。だけどするりとかわされて義弟の頭と手がどんどん下がっていった。
「やっ、やだっ、ダメ……っ」
何度嫌だと訴えても聞き入れてもらえず、とうとう膝裏に手を差し込まれて大きく開かれた。羞恥心と諦めがぐちゃぐちゃに混ざって背けるように両手で顔を覆う。足の間に義弟の熱っぽい息がかかって、背筋をそらした。
「……や」
何の躊躇いもなく義弟の唇がそこに触れた。空気の潰れた音の後、ぬるりと生温かいものが秘裂を這ってそこに溜まった愛液を舐めとる。匂いすらわかるような本当の至近距離で見られていると思うと、指で触られたときよりもずっとずっと恥ずかしい。漏れ出てきそうになる声を殺して息も噛み締める。顔中が熱くのぼせたようになって、肩が震えて、悲しいわけでも怖いわけないのにどういうわけか目尻に涙が滲んできた。
義弟が、表面だけをうっすらとなぞるように舌先を尖らせて動かす。そのたびに聞こえてくる、猫がミルクを舐めるような水音に耳も塞ぎたくなった。性感の気持ちよさよりも恥ずかしさが勝って、震えながら、早く終わって欲しいとすら思う。
ちろちろと控えめに動いていた舌が、今度は全ての愛液を舐めとるようにべったりと秘部に張り付いた。驚きでひゅっと喉が鳴って意思と無関係に体がもっと小刻みに震える。少し怖くなって義弟の頭に手を伸ばした。
カラスの羽のように真っ黒く濡れた頭に私の指先が触れると、抵抗するように強く唇を押し付けてきて、義弟の舌が陰唇を掻き分けてさらに奥に入ってきた。腰の辺りからぞわりと痺れて足が勝手に空中を蹴る。舌が私のなかで抜き差しを繰り返すと義弟の鼻先も一緒になって突起に擦れて悲鳴のような声が出た。
生き物のように温かくぬめった舌が、私の浅いところを何度も往復する。力で抵抗を示してもどうにもならないと観念して再び声をひそめると、今度は顔の位置を少しずらして陰核を包皮ごと下からなぞって吸い上げた。弱点をわざとらしく音を立てて吸い上げて、ぽっかりと開いた膣内に2本の指がまた押し入ってくる。
私から嬌声を引き出すような行為は、私自身がさらに二度果てて意識を手放すまで続いた。じっとりとかいた汗が玉になって布団の上に流れ落ちるくらい、どこをどうすれば深く感じるのかしつこく探られた。思考回路がぶちぶちと容赦無く断たれて、何も考えられないほど真っ白に塗りつぶされた頭で、何度も終わりにして欲しいと泣いて訴えたところまでは覚えている。
普段、物静かな義弟の内に秘めた底知れぬ情欲をぶつけられて心の中では嬉しいはずなのに、それと同時にどうしようもない寂しさがじりじりと胸の奥底で燻った。彼にとってこれが最初で最後だと思ってした行為なのだとしたら、私は本当に一生、忘れることができない。
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