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2章
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ここに嫁いで初めて、夕食の時間がこんなに待ち遠しいと思った。今日の夕飯は冷やしうどんと天ぷらに決めて、すでにうどんは茹でて冷水でしめてある。
約束通り、天ぷらを作るのは義弟の担当だ。慣れた包丁さばきでカボチャを薄く切り、ナスに櫛状の切れ込みを入れていく。それから油を熱しているうちに衣を氷水で溶いて、切った野菜をくぐらせていった。その手際の良さがやけに新鮮で、私はまるで子供のように彼の隣にくっついて、飽きずにじっとその手元を見ていた。
「手際がいいですね」
「……その、あまり見られると、緊張します」
衣の雫を纏わせた菜箸を掲げて、ちらりとこちらを見てからすぐに前を向いて笑う。
「だって、気になるもの」
ジュワジュワと音を立てながら油に浸かっているのはナスとカボチャで、本命の茗荷はまだ衣の入ったボウルの中で待機していた。
「天ぷらといえばエビなんでしょうけど、ごめんなさい、私、甲殻類アレルギーで触れないの。夫がいた頃に一度、手袋をつけてはらわたを取ってみたのだけど、やっぱり痒くなっちゃって」
「そうなんですね」
「今からでも、お肉、切りましょうか」
「いいえ、野菜だけで、十分です」
義弟の言う通り、鍋やボウルの中にはナスが一本分、かぼちゃが四分の一個分、茗荷が大量にあった。これらを大人二人で食べ切れるかどうかといったところなのに、肉を追加するのは確かに胃が重くなりそうだ。
義弟のこめかみから汗が流れている。つけるのを忘れていた換気扇の紐を引っ張る。夕暮れ前の初夏の台所はただでさえ暑い。寝室へ走っていってうちわを持ってきた。ガスコンロの火が揺らいでしまわないように、義弟の真後ろへ立ってゆっくりとその背中に風を送る。白いTシャツが背中に張り付き、一つに束ねた毛先が揺れる。義弟が振り向いて何も言わずに目を細めた。
うちわの柄を持つ右手がビリッと痺れて、目の奥からじわりと涙が滲んで痛くなる。
あぁ、と、ため息を漏らす。
(私、この人が好きだ……)
胸の中で呟くと途端に恥ずかしくなって目を合わせられなくなる。私は曖昧に笑いながら少しだけ目線を下げた。そして義弟の頭から爪先までを風で覆うように、右手を大きくゆっくりと振り下ろした。
黙々と義弟の背中をあおぎ続けていると、ようやく全ての天ぷらが揚がり終わった。大皿に盛り付けてから後片付けまでやってしまおうとする義弟を「揚げたてが一番美味しいんだから」と押し留めて食卓へ着くように促す。お互い、顔を真っ赤にして額から汗が落ちるほどすっかり汗だくだった。
食卓には直前まで冷やしておいたうどんとつけ汁を並べ、薬味として生姜を擦ったものと、細くて天ぷらにするには少し物足りない茗荷を小口切りにして添えた。その他に生のままの茗荷をガラスの器に移してグリルで焼いておいた焼き味噌を用意する。これは義両親の仏前に供える分だ。
「少し、天ぷらをもらっていい? お義父さんとお義母さんに」
「あ、……はい」
義弟の許可をもらって、白い器に敷紙を敷き茗荷の天ぷらを移す。
「もう少し早く気づいていれば良かった。二人が大事にしていたものを三年も無駄にして、本当、申し訳ないです」
口に出して、菜箸を持つ指先が強張る。
思えばこの三年間、自分のことばかりで余裕がなかった。
結婚してすぐに義両親の通院や入院、義弟の世話が重なって「どうして私だけがこんな目に遭うのか」と自分の人生を悲観した。
年老いて身体が不自由になった義父母は、何度も私に「苦労をかけてごめんなさい」と謝っていたけど、それがさらに私を惨めにした。家と病院の往復の間、義両親に謝られるたびに私は社会から隔絶された気分になって、少しずつ「この人達のせいで」と最低なことを考えるようになっていた。
義父母が後を追うように相次いで亡くなったときは、担当していた患者が亡くなったときのような感覚だった。それは看護師時代に味わったもので、先に肩の荷が下りたような爽快さがきて、後からじんわりと悲しさと喪失感がくる。
望んでここの家の一員になったはずなのに、そう思ってしまうのは薄情だ。
朝のお供えは欠かさずしていても、亡くなってから大事にするのでは遅すぎる。生きているうちにもっと他にやれたことがあったはずだ。余裕を取り戻した今ならそう思うのに。義弟から話を聞いてこうしてやっと好物を用意するのも、生前、嫌々世話をしていた罪悪感から逃れるためというか、嫁としての至らない部分を今さら補てんしようとしているようで、いやらしい。
天ぷらの衣と敷紙が擦れ合ってカサカサと音を立てる。食器棚から竹製のお盆を取り出して、天ぷらと焼き味噌を添えた茗荷の皿を並べた。「持っていきますね」と声をかけると、義弟が椅子から立ち上がった。
「ありがとうございます」
「えっ」
義弟が私の目を見据えて、もう一度、「ありがとうございます」と言った。その澄んだ目で見られると余計に自分の行動が嘘くさく薄っぺらく思えて、「違うんです」と否定したくなる。
「……いいえ」
ほんの少し口角を上げて俯く。
朝のお勤めと日中の掃除以外に立ち入らない仏間は薄暗く、いつまでも線香の匂いがこもっているような気がした。
明かりをつけて仏前に持ってきた料理を供えている横で、義弟がろうそくを準備し線香に火をつけ、おりんを二回鳴らした。そういえば彼がここでこうしている姿を見るのは初めてだ。目を瞑り、俯き加減で手を合わせているその横顔を見つめる。まつ毛の先が小刻みに震えている。結んだ唇がさらに口の中に巻き込まれて喉がぐっと唸った。続けて鼻をすする音が聞こえてきたから、慌てて顔を逸らし私も線香を立てた。
手を合わせている間に畳と衣擦れの音がして、隣の空気が動いた。目を開けて義弟のほうへ顔を向けると、倒れ込むように彼の頭が畳の上に付いた。
「ありがとうございます……」
震えた声が折り畳まれた体の隙間から聞こえる。
「や、やめてくださいっ」
自分でも驚くほど高い声が出た。起き上がらせようと義弟の肩を掴む。のろのろと体を起こした義弟は目を赤くしていた。涙が雫になって重力に負けて落ちる。
「……自分のことばかりで」
義弟が絞り出した声にドキッとする。
「ずっと自分のことばかりで、病んでいるのだから、仕方ないと、外に出ることもしないで、……たくさん、迷惑を、かけました」
「申し訳ありません」と義弟がまた手をついた。私はまた、「やめて」と言った。
「し、仕方ないですよ。外に出られないくらい、自分のこともままならないくらい、体調が悪かったのでしょう? 風邪とは違ってすぐ治るものではないんですから」
心配するような声がけをしていて、私自身が義弟を適当に扱っていた日々を思い出した。白々しい。どの口が、と思う。食事だけ出して世話をした気になっていた私は、義弟に上から目線で語る資格はない。
「さ、早くご飯を食べましょう」
まだ何か言いたそうに口を開いた義弟を遮って立ち上がる。これ以上、この話を聞いたら私まで余計なことを打ち明けてしまいそうだ。義理の両親のこと、夫のこと、義弟のこと。どんな思いで接していたのか、全部知られたらきっと嫌われてしまう。
食卓についても、義弟は目を伏せて落ち込んだ顔をしていた。まだ何か言わなきゃいけないことがあったのだろうか。ついさっきまで笑って揚げ物をしていたのが白昼夢のようだ。ぎこちなくてもいいから、笑って欲しいのに。
もそもそと箸を動かす義弟の顔を見ながら、ほんのりとまだ温かい茗荷の天ぷらに口をつける。
「んっ、美味しい!」
思わず大きな声が出て、義弟がはっとした顔でこちらを見た。
食べた天ぷらは少し冷めて油が染みてしまっているけど、柔らかく、独特の苦味が消えていて食べやすい。
「あ、ごめんなさい、大きい声で。これ、すごく美味しい。初めて食べたけど食べやすくて。茗荷って独特な匂いというか風味があるでしょ。小さい頃、それが苦手で。天ぷらにするとこんなに柔らかくなるのね、不思議ねぇ」
早口に言いながらもう一口かじる。やっぱり美味しい。大人になってからほとんどの食べ物は口にしてきたつもりだったけど、まだ知らない美味しい食べ方にこうして出会うと無条件で感動する。
ふと目の前の義弟の表情が崩れた。箸を持つ手で顔を隠すようにして肩を震わせている。
「どうして笑うの」
「……ん、いえ、気に入ってもらえて、良かったです」
「うん、美味しい」
素直に頷いただけなのに、限界突破したように義弟が吹き出した。笑ってくれたのは嬉しいけどそんなに面白いことを言っただろうか。
それから義弟は機嫌を持ち直したように軽やかに箸を進めた。私も自分の皿にあった分を完食し、こんもりと山のように重なった余りの茗荷の天ぷらをほとんど食べた。それくらい美味しかった。そんな私を見て義弟はまた笑いを堪えていたけど。
「ごちそうさまでした」と二人で手を合わせて、食器を下げてからお風呂にお湯を溜める。
「揚げ物をしたからすごく汗をかいたでしょう。今日はぬるめにしましたから、お腹が落ち着いたら入ってください」
食卓に座って麦茶を飲んでいる義弟に声をかける。仏間からお供えした料理を取りに行き冷蔵庫へしまってから食器を洗う。夏場は水仕事が気持ちいい。わざと水を出しっぱなしにして油のついた器をたっぷりの泡で洗っていたら、横から空のグラスを持った手が伸びてきた。
「食卓と洗った皿、拭きますね」
グラスを置いた手が、今度は台拭きをすすぐ。
「えっ、そんな、いいのに、ご飯作ってくれたんだから休んで」
「二人でやれば、早く終わります」
「あ」
義弟は台拭きを絞ると、さっと離れて行ってしまった。
私が食器を洗っている間に素早く拭き終えると戻ってきて、今度は食器を拭く布巾を手に私の隣に立った。
「……ありがとうございます」
「いえ」
泡をすすいだ器を水切りかごに置いた瞬間、義弟が取って水滴を拭き取っていく。こうやって手伝ってもらうことは何度もあったのになぜか緊張して無言になる。
「天ぷら、多かったですね」
突然、話を振られて「えっ」と間抜けな声が出た。
「そう、そうですね。でも美味しかった」
「また作ってもいいですか?」
「もちろん!」
食い気味に答えると、また義弟が吹き出した。だけど何か言うわけでもなく、食器が大きい順に重ねられていく。
私は私で食べ物のカスが落ちているシンクを排水溝のネットへ流してから水を止めて、新しいネットを付け替える。義弟の言った通り、二人で片付けた方が早かった。
「では、お風呂行ってきます」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
台所の明かりを消して、義弟は寝巻きを取りに一度離れへ戻り、私は居間で少し休むことにした。昔ながらの外枠が銀色になっている扇風機のボタンをパチンとつける。これを台所に持っていけば良かった。愚直にうちわであおいだりして、恥ずかしい……。「強」のボタンを押して髪が巻き込まれないギリギリまで顔を近づける。
ここで「あー」とお決まりの声を出したくなるのを堪える。出したらきっと義弟に聞かれてしまうだろうから我慢した。
縁側の方から砂利を踏むような音がかすかにして、すぐに玄関の引き戸がガラガラと鳴った。「ほらね」と誰に対してなのか心の中で得意げになる。擦り足の足音と長い影が居間を通り過ぎていく。それを見届けてから間続きになっている寝室の襖を開けて、家計簿を取ってまた居間に戻った。
テレビをつけて天気予報だけをチェックする。明日も晴れで、今日より少し暑くなるらしい。午前中の涼しいうちに買い物に行かなくてはと思い、冷蔵庫の中身をチェックしに廊下を出た。長い廊下の左側を真っ直ぐに進むと突き当たりに脱衣所の扉があって、上半分の四角い磨りガラスからオレンジ色の灯りが漏れている。義弟はもう浴室に入っただろうか。
「…………」
魔が差したとしか言いようがない。気づいたら吸い寄せられるように脱衣所の扉に手をかけて中に入っていた。脱衣所の上は湯気が充満していてサウナのように蒸し暑い。全面磨りガラスになった浴室のドアの向こうからは、湯桶で汲み取ったお湯を勢いよく流す音が絶えず聞こえる。すぐそこに義弟がいる。磨りガラス越しに肌の色が見える。座っているのか、黒い頭のてっぺんが私の腰あたりの高さにある。
脱衣所の扉の前でじっとしていたら、お湯の音が止んだ。
「どうしました?」
突然、義弟の声がして目が覚めたように我に返る。
「……お義姉さん?」
また声がした。背中が雷に打たれたかと思うくらいビリッと強く痺れた。
「あ、あの、……あ、石鹸っ、石鹸、小さくなってないですか?」
洗面台の下の収納をバタバタと開けて買い置きを出す。昨日使ったときはまだ半分くらいの大きさだった。たった一日で溶けるわけがないのに。
「……大丈夫ですよ」
義弟の落ち着いた声が浴室に響く。
「そ、そうですか、ごめんなさい、入ってる途中に」
買い置きの箱を再度戻す。何をしているんだろう。首元から頭のてっぺんまで血がぐわっと湧き上がってくるような感覚がして、顔が熱くなって耳の中でキーンと金属音がした。何か言われる前にまた「ごめんなさい」と謝罪をして逃げる。体の後ろでパタンと控えめな音を立てて脱衣所の扉が閉まった。
最初の目的を忘れて居間へ戻り、自分の行動を誤魔化すように普段は見ないテレビ番組の音量を上げた。本当は寝室まで逃げたかった。だけどお風呂から上がれば義弟はいつも呼びに来てくれる。ここで私が寝室に行ってしまったら明らかに不自然だ。あからさまに避けてしまったように見える。「やましいことをしていました」と自白しているようなものだ。
何度か深呼吸を繰り返すと、今度はテレビに映るよく知らない有名人の笑い声が少し耳障りに感じた。視線を動かすとちゃぶ台に乗っている家計簿が目に入る。最初は明日の買い物のために冷蔵庫の中を確認しようとしていたのに。だけど頭に浮かんでくるのは磨りガラス越しの義弟の体で、これ以上、人の道を踏み外さないようにしなければいけないのに、どんどん歯止めが効かなくなっている。
家計簿を取って立ち上がる。義弟がお風呂からあがって来る前に今度こそ台所へ向かった。
冷蔵庫の中を開けて足りないものを書き出す。明日以降、何を作るのかまだ決めていないけど、常備している卵や豆腐が少なくなっていた。義弟のことを頭から追いやって、野菜の方はと考えているうちにどんどん冷静さを取り戻す。最後は米と乾物の残量を見て居間に戻った。
テレビの音量を下げて献立を組み立てる。夫から今月の生活費が振り込まれたばかりだから余裕があるように錯覚してしまうけど、ここで贅沢をしてしまったら後がきつくなる。だから月の初めはいつも少し悩む。
「——お義姉さん、お風呂、空きました」
いつの間に立っていたのか、障子越しに義弟の声がした。いつもの足音が聞こえなかった。
「……あ、はいっ、ありがとうございます!」
瞬時に心臓が飛び跳ねて声が大きくなる。
数秒の後、影が遠ざかって向かいの台所の明かりが点いた。お茶でも飲もうとしているのだろうか。
寝室へ下着と寝巻きを取りに行っても台所はまだ明るかった。顔を合わせるのは気まずい。かといってこのままここでぼうっとしていたら、義弟がまた声をかけに来るかもしれない。
なるべく音を立てないようにおそるおそる障子の引き戸を引くと、すぐに義弟が振り向いた。一瞬ですくんで、足の裏が居間の畳に張り付いたようになる。私が何かを言う前に、濡れた髪を下ろして浴衣姿の義弟は曖昧な顔で笑って小さく会釈をした。小さな雫が肩にかけたタオルに落ちる。
「……お、お風呂、いただきます」
声が最後にかけて尻すぼみになる。義弟が「はい」と言った後「ごゆっくり」と付け足した。頭を下げて短い廊下をパタパタと小走りで移動して、脱衣所のドアを閉めても心臓がまだ落ち着かない。さっきのことを何か言われるのではないかとヒヤヒヤした。だけどそんなことはなく義弟はいつも通りだった。私一人であたふたとしていて怪しい。
ふと、洗面台の鏡に写った自分が目に入った。顔がのぼせたように真っ赤で、気づかないうちに汗をかいていた。夕方の台所の時と同じくらいだ。額をなぞるように汗の玉が縁取られていて首すじにも解いた髪の毛がバラバラに張り付いている。どこかうつろな目は事後のようにも見える。こんな顔を義弟に見せていたのだろうか。
約束通り、天ぷらを作るのは義弟の担当だ。慣れた包丁さばきでカボチャを薄く切り、ナスに櫛状の切れ込みを入れていく。それから油を熱しているうちに衣を氷水で溶いて、切った野菜をくぐらせていった。その手際の良さがやけに新鮮で、私はまるで子供のように彼の隣にくっついて、飽きずにじっとその手元を見ていた。
「手際がいいですね」
「……その、あまり見られると、緊張します」
衣の雫を纏わせた菜箸を掲げて、ちらりとこちらを見てからすぐに前を向いて笑う。
「だって、気になるもの」
ジュワジュワと音を立てながら油に浸かっているのはナスとカボチャで、本命の茗荷はまだ衣の入ったボウルの中で待機していた。
「天ぷらといえばエビなんでしょうけど、ごめんなさい、私、甲殻類アレルギーで触れないの。夫がいた頃に一度、手袋をつけてはらわたを取ってみたのだけど、やっぱり痒くなっちゃって」
「そうなんですね」
「今からでも、お肉、切りましょうか」
「いいえ、野菜だけで、十分です」
義弟の言う通り、鍋やボウルの中にはナスが一本分、かぼちゃが四分の一個分、茗荷が大量にあった。これらを大人二人で食べ切れるかどうかといったところなのに、肉を追加するのは確かに胃が重くなりそうだ。
義弟のこめかみから汗が流れている。つけるのを忘れていた換気扇の紐を引っ張る。夕暮れ前の初夏の台所はただでさえ暑い。寝室へ走っていってうちわを持ってきた。ガスコンロの火が揺らいでしまわないように、義弟の真後ろへ立ってゆっくりとその背中に風を送る。白いTシャツが背中に張り付き、一つに束ねた毛先が揺れる。義弟が振り向いて何も言わずに目を細めた。
うちわの柄を持つ右手がビリッと痺れて、目の奥からじわりと涙が滲んで痛くなる。
あぁ、と、ため息を漏らす。
(私、この人が好きだ……)
胸の中で呟くと途端に恥ずかしくなって目を合わせられなくなる。私は曖昧に笑いながら少しだけ目線を下げた。そして義弟の頭から爪先までを風で覆うように、右手を大きくゆっくりと振り下ろした。
黙々と義弟の背中をあおぎ続けていると、ようやく全ての天ぷらが揚がり終わった。大皿に盛り付けてから後片付けまでやってしまおうとする義弟を「揚げたてが一番美味しいんだから」と押し留めて食卓へ着くように促す。お互い、顔を真っ赤にして額から汗が落ちるほどすっかり汗だくだった。
食卓には直前まで冷やしておいたうどんとつけ汁を並べ、薬味として生姜を擦ったものと、細くて天ぷらにするには少し物足りない茗荷を小口切りにして添えた。その他に生のままの茗荷をガラスの器に移してグリルで焼いておいた焼き味噌を用意する。これは義両親の仏前に供える分だ。
「少し、天ぷらをもらっていい? お義父さんとお義母さんに」
「あ、……はい」
義弟の許可をもらって、白い器に敷紙を敷き茗荷の天ぷらを移す。
「もう少し早く気づいていれば良かった。二人が大事にしていたものを三年も無駄にして、本当、申し訳ないです」
口に出して、菜箸を持つ指先が強張る。
思えばこの三年間、自分のことばかりで余裕がなかった。
結婚してすぐに義両親の通院や入院、義弟の世話が重なって「どうして私だけがこんな目に遭うのか」と自分の人生を悲観した。
年老いて身体が不自由になった義父母は、何度も私に「苦労をかけてごめんなさい」と謝っていたけど、それがさらに私を惨めにした。家と病院の往復の間、義両親に謝られるたびに私は社会から隔絶された気分になって、少しずつ「この人達のせいで」と最低なことを考えるようになっていた。
義父母が後を追うように相次いで亡くなったときは、担当していた患者が亡くなったときのような感覚だった。それは看護師時代に味わったもので、先に肩の荷が下りたような爽快さがきて、後からじんわりと悲しさと喪失感がくる。
望んでここの家の一員になったはずなのに、そう思ってしまうのは薄情だ。
朝のお供えは欠かさずしていても、亡くなってから大事にするのでは遅すぎる。生きているうちにもっと他にやれたことがあったはずだ。余裕を取り戻した今ならそう思うのに。義弟から話を聞いてこうしてやっと好物を用意するのも、生前、嫌々世話をしていた罪悪感から逃れるためというか、嫁としての至らない部分を今さら補てんしようとしているようで、いやらしい。
天ぷらの衣と敷紙が擦れ合ってカサカサと音を立てる。食器棚から竹製のお盆を取り出して、天ぷらと焼き味噌を添えた茗荷の皿を並べた。「持っていきますね」と声をかけると、義弟が椅子から立ち上がった。
「ありがとうございます」
「えっ」
義弟が私の目を見据えて、もう一度、「ありがとうございます」と言った。その澄んだ目で見られると余計に自分の行動が嘘くさく薄っぺらく思えて、「違うんです」と否定したくなる。
「……いいえ」
ほんの少し口角を上げて俯く。
朝のお勤めと日中の掃除以外に立ち入らない仏間は薄暗く、いつまでも線香の匂いがこもっているような気がした。
明かりをつけて仏前に持ってきた料理を供えている横で、義弟がろうそくを準備し線香に火をつけ、おりんを二回鳴らした。そういえば彼がここでこうしている姿を見るのは初めてだ。目を瞑り、俯き加減で手を合わせているその横顔を見つめる。まつ毛の先が小刻みに震えている。結んだ唇がさらに口の中に巻き込まれて喉がぐっと唸った。続けて鼻をすする音が聞こえてきたから、慌てて顔を逸らし私も線香を立てた。
手を合わせている間に畳と衣擦れの音がして、隣の空気が動いた。目を開けて義弟のほうへ顔を向けると、倒れ込むように彼の頭が畳の上に付いた。
「ありがとうございます……」
震えた声が折り畳まれた体の隙間から聞こえる。
「や、やめてくださいっ」
自分でも驚くほど高い声が出た。起き上がらせようと義弟の肩を掴む。のろのろと体を起こした義弟は目を赤くしていた。涙が雫になって重力に負けて落ちる。
「……自分のことばかりで」
義弟が絞り出した声にドキッとする。
「ずっと自分のことばかりで、病んでいるのだから、仕方ないと、外に出ることもしないで、……たくさん、迷惑を、かけました」
「申し訳ありません」と義弟がまた手をついた。私はまた、「やめて」と言った。
「し、仕方ないですよ。外に出られないくらい、自分のこともままならないくらい、体調が悪かったのでしょう? 風邪とは違ってすぐ治るものではないんですから」
心配するような声がけをしていて、私自身が義弟を適当に扱っていた日々を思い出した。白々しい。どの口が、と思う。食事だけ出して世話をした気になっていた私は、義弟に上から目線で語る資格はない。
「さ、早くご飯を食べましょう」
まだ何か言いたそうに口を開いた義弟を遮って立ち上がる。これ以上、この話を聞いたら私まで余計なことを打ち明けてしまいそうだ。義理の両親のこと、夫のこと、義弟のこと。どんな思いで接していたのか、全部知られたらきっと嫌われてしまう。
食卓についても、義弟は目を伏せて落ち込んだ顔をしていた。まだ何か言わなきゃいけないことがあったのだろうか。ついさっきまで笑って揚げ物をしていたのが白昼夢のようだ。ぎこちなくてもいいから、笑って欲しいのに。
もそもそと箸を動かす義弟の顔を見ながら、ほんのりとまだ温かい茗荷の天ぷらに口をつける。
「んっ、美味しい!」
思わず大きな声が出て、義弟がはっとした顔でこちらを見た。
食べた天ぷらは少し冷めて油が染みてしまっているけど、柔らかく、独特の苦味が消えていて食べやすい。
「あ、ごめんなさい、大きい声で。これ、すごく美味しい。初めて食べたけど食べやすくて。茗荷って独特な匂いというか風味があるでしょ。小さい頃、それが苦手で。天ぷらにするとこんなに柔らかくなるのね、不思議ねぇ」
早口に言いながらもう一口かじる。やっぱり美味しい。大人になってからほとんどの食べ物は口にしてきたつもりだったけど、まだ知らない美味しい食べ方にこうして出会うと無条件で感動する。
ふと目の前の義弟の表情が崩れた。箸を持つ手で顔を隠すようにして肩を震わせている。
「どうして笑うの」
「……ん、いえ、気に入ってもらえて、良かったです」
「うん、美味しい」
素直に頷いただけなのに、限界突破したように義弟が吹き出した。笑ってくれたのは嬉しいけどそんなに面白いことを言っただろうか。
それから義弟は機嫌を持ち直したように軽やかに箸を進めた。私も自分の皿にあった分を完食し、こんもりと山のように重なった余りの茗荷の天ぷらをほとんど食べた。それくらい美味しかった。そんな私を見て義弟はまた笑いを堪えていたけど。
「ごちそうさまでした」と二人で手を合わせて、食器を下げてからお風呂にお湯を溜める。
「揚げ物をしたからすごく汗をかいたでしょう。今日はぬるめにしましたから、お腹が落ち着いたら入ってください」
食卓に座って麦茶を飲んでいる義弟に声をかける。仏間からお供えした料理を取りに行き冷蔵庫へしまってから食器を洗う。夏場は水仕事が気持ちいい。わざと水を出しっぱなしにして油のついた器をたっぷりの泡で洗っていたら、横から空のグラスを持った手が伸びてきた。
「食卓と洗った皿、拭きますね」
グラスを置いた手が、今度は台拭きをすすぐ。
「えっ、そんな、いいのに、ご飯作ってくれたんだから休んで」
「二人でやれば、早く終わります」
「あ」
義弟は台拭きを絞ると、さっと離れて行ってしまった。
私が食器を洗っている間に素早く拭き終えると戻ってきて、今度は食器を拭く布巾を手に私の隣に立った。
「……ありがとうございます」
「いえ」
泡をすすいだ器を水切りかごに置いた瞬間、義弟が取って水滴を拭き取っていく。こうやって手伝ってもらうことは何度もあったのになぜか緊張して無言になる。
「天ぷら、多かったですね」
突然、話を振られて「えっ」と間抜けな声が出た。
「そう、そうですね。でも美味しかった」
「また作ってもいいですか?」
「もちろん!」
食い気味に答えると、また義弟が吹き出した。だけど何か言うわけでもなく、食器が大きい順に重ねられていく。
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「では、お風呂行ってきます」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
台所の明かりを消して、義弟は寝巻きを取りに一度離れへ戻り、私は居間で少し休むことにした。昔ながらの外枠が銀色になっている扇風機のボタンをパチンとつける。これを台所に持っていけば良かった。愚直にうちわであおいだりして、恥ずかしい……。「強」のボタンを押して髪が巻き込まれないギリギリまで顔を近づける。
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テレビをつけて天気予報だけをチェックする。明日も晴れで、今日より少し暑くなるらしい。午前中の涼しいうちに買い物に行かなくてはと思い、冷蔵庫の中身をチェックしに廊下を出た。長い廊下の左側を真っ直ぐに進むと突き当たりに脱衣所の扉があって、上半分の四角い磨りガラスからオレンジ色の灯りが漏れている。義弟はもう浴室に入っただろうか。
「…………」
魔が差したとしか言いようがない。気づいたら吸い寄せられるように脱衣所の扉に手をかけて中に入っていた。脱衣所の上は湯気が充満していてサウナのように蒸し暑い。全面磨りガラスになった浴室のドアの向こうからは、湯桶で汲み取ったお湯を勢いよく流す音が絶えず聞こえる。すぐそこに義弟がいる。磨りガラス越しに肌の色が見える。座っているのか、黒い頭のてっぺんが私の腰あたりの高さにある。
脱衣所の扉の前でじっとしていたら、お湯の音が止んだ。
「どうしました?」
突然、義弟の声がして目が覚めたように我に返る。
「……お義姉さん?」
また声がした。背中が雷に打たれたかと思うくらいビリッと強く痺れた。
「あ、あの、……あ、石鹸っ、石鹸、小さくなってないですか?」
洗面台の下の収納をバタバタと開けて買い置きを出す。昨日使ったときはまだ半分くらいの大きさだった。たった一日で溶けるわけがないのに。
「……大丈夫ですよ」
義弟の落ち着いた声が浴室に響く。
「そ、そうですか、ごめんなさい、入ってる途中に」
買い置きの箱を再度戻す。何をしているんだろう。首元から頭のてっぺんまで血がぐわっと湧き上がってくるような感覚がして、顔が熱くなって耳の中でキーンと金属音がした。何か言われる前にまた「ごめんなさい」と謝罪をして逃げる。体の後ろでパタンと控えめな音を立てて脱衣所の扉が閉まった。
最初の目的を忘れて居間へ戻り、自分の行動を誤魔化すように普段は見ないテレビ番組の音量を上げた。本当は寝室まで逃げたかった。だけどお風呂から上がれば義弟はいつも呼びに来てくれる。ここで私が寝室に行ってしまったら明らかに不自然だ。あからさまに避けてしまったように見える。「やましいことをしていました」と自白しているようなものだ。
何度か深呼吸を繰り返すと、今度はテレビに映るよく知らない有名人の笑い声が少し耳障りに感じた。視線を動かすとちゃぶ台に乗っている家計簿が目に入る。最初は明日の買い物のために冷蔵庫の中を確認しようとしていたのに。だけど頭に浮かんでくるのは磨りガラス越しの義弟の体で、これ以上、人の道を踏み外さないようにしなければいけないのに、どんどん歯止めが効かなくなっている。
家計簿を取って立ち上がる。義弟がお風呂からあがって来る前に今度こそ台所へ向かった。
冷蔵庫の中を開けて足りないものを書き出す。明日以降、何を作るのかまだ決めていないけど、常備している卵や豆腐が少なくなっていた。義弟のことを頭から追いやって、野菜の方はと考えているうちにどんどん冷静さを取り戻す。最後は米と乾物の残量を見て居間に戻った。
テレビの音量を下げて献立を組み立てる。夫から今月の生活費が振り込まれたばかりだから余裕があるように錯覚してしまうけど、ここで贅沢をしてしまったら後がきつくなる。だから月の初めはいつも少し悩む。
「——お義姉さん、お風呂、空きました」
いつの間に立っていたのか、障子越しに義弟の声がした。いつもの足音が聞こえなかった。
「……あ、はいっ、ありがとうございます!」
瞬時に心臓が飛び跳ねて声が大きくなる。
数秒の後、影が遠ざかって向かいの台所の明かりが点いた。お茶でも飲もうとしているのだろうか。
寝室へ下着と寝巻きを取りに行っても台所はまだ明るかった。顔を合わせるのは気まずい。かといってこのままここでぼうっとしていたら、義弟がまた声をかけに来るかもしれない。
なるべく音を立てないようにおそるおそる障子の引き戸を引くと、すぐに義弟が振り向いた。一瞬ですくんで、足の裏が居間の畳に張り付いたようになる。私が何かを言う前に、濡れた髪を下ろして浴衣姿の義弟は曖昧な顔で笑って小さく会釈をした。小さな雫が肩にかけたタオルに落ちる。
「……お、お風呂、いただきます」
声が最後にかけて尻すぼみになる。義弟が「はい」と言った後「ごゆっくり」と付け足した。頭を下げて短い廊下をパタパタと小走りで移動して、脱衣所のドアを閉めても心臓がまだ落ち着かない。さっきのことを何か言われるのではないかとヒヤヒヤした。だけどそんなことはなく義弟はいつも通りだった。私一人であたふたとしていて怪しい。
ふと、洗面台の鏡に写った自分が目に入った。顔がのぼせたように真っ赤で、気づかないうちに汗をかいていた。夕方の台所の時と同じくらいだ。額をなぞるように汗の玉が縁取られていて首すじにも解いた髪の毛がバラバラに張り付いている。どこかうつろな目は事後のようにも見える。こんな顔を義弟に見せていたのだろうか。
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