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第6話
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翌日の早朝、泣き腫らした自分の目を見て絶望した。
こんな酷い顔で出勤できない…。
慌てて顔を洗い、化粧でどうにか誤魔化す。
「…よし。」
溢れて止まらなくなった想いもようやく落ち着きを取り戻し、何もなかったように鏡の前で笑顔を作る。
「陵ー」目を覚ました足立くんに呼ばれ、リビングに駆けていく。
「なにー?」
「ごめん!昨日はなんか色々口走っちゃって…。」
「ううん!私こそ迷惑かけちゃってごめんね?」
「全然!でも、なんかあったら相談してくれよな。甘えたって頼ったっていいんだぜ?」
「ふふ、ありがと。でも私、どんな状態になったとしても簡単に誰にでも甘えたり泣きついたりしたくないから。
気持ちは有難く受け取ります。」
頭を軽く下げてそう告げると、彼は私の頭を優しく撫でた。
「わかった、陵は偉いよほんと。」
「ありがとう。」
「じゃあ俺もう行くわ。昨日は泊めてくれてありがと!世話になりました!
じゃあまた会社でなー。」
「うん!」
玄関まで彼を見送った後、私は準備をして出勤した。
そして昨夜の出来事をかき消す様に仕事に没頭した。
他人との関わり合いをできるだけ避けて、休憩は一人人目につかないところで取った。
「四六時中笑顔貼り付けてるのもなんか疲れるなぁ…。」
「…あ!陵さん!」偶然通りかかったらしい浅倉先輩に呼び止められ、動揺が隠せない。
「昨日はほんとごめん!!酔っちゃってて…
なんか変なことしてない?迷惑かけてたりしたらほんっとごめん…!」
「…いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」
また、私は偽った笑顔を貼りつける。
「そっか、ならよかった。また飲みに行こう!」
「はい!是非!」
よかったと安心した貴方の笑顔が愛おしくて、世界で一番輝いて見えて
私の違和感と不安と迷いで滅茶苦茶に掻き乱された心を洗うように綺麗で何よりも好きなもの。
一番側で見ていたいもの。
ずっと側にあった。仕事中も食事に出掛けているときもずっと…
ずっと貴方は楽しそうに笑っていてくれて、私を元気づけてくれて、私に束の間の幸せをいつもくれていた。
今だってそれは変わっていない。貴方の笑顔は変わらず素敵で私の一番好きなもの
なのにどうしても、貴方が離れて行ってしまったようで
貴方の切ない顔、弱弱しい声。唐突に離れてもう二度と繋がれることのないその手。
思い出したいのは変わらない笑顔で
思い出してしまうのは貴方の悲しげな表情や声ばかり。
こんなはずじゃなかった
貴方の恋人になんてなれなくても、貴方の側にいられるだけで私はそれでよかったのに。
なのに、好きな人がいたと分かっただけでこんなにも動揺していて、こんなにも苦しくなる。
貴方の特別な人になんてなれなくてよかったのに
「…私、いつからこんなに…欲張りになったんだろう。」
こんな酷い顔で出勤できない…。
慌てて顔を洗い、化粧でどうにか誤魔化す。
「…よし。」
溢れて止まらなくなった想いもようやく落ち着きを取り戻し、何もなかったように鏡の前で笑顔を作る。
「陵ー」目を覚ました足立くんに呼ばれ、リビングに駆けていく。
「なにー?」
「ごめん!昨日はなんか色々口走っちゃって…。」
「ううん!私こそ迷惑かけちゃってごめんね?」
「全然!でも、なんかあったら相談してくれよな。甘えたって頼ったっていいんだぜ?」
「ふふ、ありがと。でも私、どんな状態になったとしても簡単に誰にでも甘えたり泣きついたりしたくないから。
気持ちは有難く受け取ります。」
頭を軽く下げてそう告げると、彼は私の頭を優しく撫でた。
「わかった、陵は偉いよほんと。」
「ありがとう。」
「じゃあ俺もう行くわ。昨日は泊めてくれてありがと!世話になりました!
じゃあまた会社でなー。」
「うん!」
玄関まで彼を見送った後、私は準備をして出勤した。
そして昨夜の出来事をかき消す様に仕事に没頭した。
他人との関わり合いをできるだけ避けて、休憩は一人人目につかないところで取った。
「四六時中笑顔貼り付けてるのもなんか疲れるなぁ…。」
「…あ!陵さん!」偶然通りかかったらしい浅倉先輩に呼び止められ、動揺が隠せない。
「昨日はほんとごめん!!酔っちゃってて…
なんか変なことしてない?迷惑かけてたりしたらほんっとごめん…!」
「…いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」
また、私は偽った笑顔を貼りつける。
「そっか、ならよかった。また飲みに行こう!」
「はい!是非!」
よかったと安心した貴方の笑顔が愛おしくて、世界で一番輝いて見えて
私の違和感と不安と迷いで滅茶苦茶に掻き乱された心を洗うように綺麗で何よりも好きなもの。
一番側で見ていたいもの。
ずっと側にあった。仕事中も食事に出掛けているときもずっと…
ずっと貴方は楽しそうに笑っていてくれて、私を元気づけてくれて、私に束の間の幸せをいつもくれていた。
今だってそれは変わっていない。貴方の笑顔は変わらず素敵で私の一番好きなもの
なのにどうしても、貴方が離れて行ってしまったようで
貴方の切ない顔、弱弱しい声。唐突に離れてもう二度と繋がれることのないその手。
思い出したいのは変わらない笑顔で
思い出してしまうのは貴方の悲しげな表情や声ばかり。
こんなはずじゃなかった
貴方の恋人になんてなれなくても、貴方の側にいられるだけで私はそれでよかったのに。
なのに、好きな人がいたと分かっただけでこんなにも動揺していて、こんなにも苦しくなる。
貴方の特別な人になんてなれなくてよかったのに
「…私、いつからこんなに…欲張りになったんだろう。」
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