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第三話
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「嫌・・っ!離して!」
「いつもそうやって男の事馬鹿にしてんだろ!思い知らせてやる・・男をなめたらどうなるか・・」男が萌咲の唇を奪おうとした時だった。
「橋倉さんっ!!」たまたまそこを通りかかった透が二人に駆け寄った。
「何してるんですかあなた!」透は二人を引き剥がして男に問う。
「なにって、こいつがいつも俺を馬鹿にしてやがるから喝入れてやってんだよ。お前もこいつの毒牙に引っかかってんのか?可哀想に。お前みたいなガリ勉に、こいつが引っかかる訳ねーだろ。」男が透を見て笑うと、透は目の色を変えた。
「・・・橋倉さんが貴方みたいな男性を好きになるわけないでしょう。それに僕は彼女に何もされていないし、まず彼女はそんなことしません!」透は声を荒げた。
「ふっ、お前は何にも知らねーんだな。可哀想だよホント。まぁせいぜいこいつにたぶらかされて傷つく事だな。」男はその場を去った。
「・・・ありがと。」萌咲は素っ気ない返事をした。
「いえ、それより大丈夫ですか?腕。真っ赤です。」透は腕を見て心配そうな顔をした。
「あぁ・・あの人に掴まれてさ。大丈夫、ありがとう。・・・ごめんなさい。心配かけて」萌咲は頭を深く下げた。
「あぁ、いえいえ!頭を上げてください!こちらこそ、一人で女性を帰すなんてすいません。送ります。」
「うん、ありがと。」送ると言ってくれた優しさも嬉しかったが、なにより細い路地にも関わらず、助けに来てくれた優しさに目頭が熱くなった。
「じゃあ・・」透は目の前に手を出した。
「・・・え?」驚いた表情をすると、透は少し照れながら顔を赤くした。
「また、変な男性に連れて行かれたら心配なので。手、つ・・繋いでたら大丈夫じゃないかなって・・・。い、嫌ならすいません!僕なりに考えた結果なんですけど・・。」透は頭を掻いて照れくさそうにした。
「ん・・ありがとう。優しいね、ホントに。」あまりにも照れる透を見て、萌咲は微笑んだ。
「あ!その笑顔です!僕がずっと好きだった笑顔。その笑顔がなによりも好きです。だからずっと、笑っててください。」
自然に出てくる誠実で優しい言葉が乾いた心に染みて、萌咲の心を潤した。
すると、無意識に涙がこぼれた。
「え!?あ、ごめんなさい!僕、何か気に障る事言っちゃいました!?ホントにすいません!」オロオロした様子の透を見て、思わず吹き出した。
「ふふっ、ありがとう透くん。私・・・」一瞬行動が停止した萌咲は何とも言えない気持ちになった。今までに感じた事のないその感情に、萌咲は戸惑い、硬直した
そして、言葉を詰まらせた。
「・・・?橋倉さん?どうしました?」透は不思議そうな顔をして、俯いた萌咲の顔を覗き込む。
「・・・あ、ごめん。何でもない。じゃあ帰ろう。」萌咲は我に返ると、透の手を取り、歩き出す。
今さっきの謎めいた感情は何だったのだろう。
そんな不思議な感情とフワフワした気持ちを交差させながら、自宅に着いた。
「いつもそうやって男の事馬鹿にしてんだろ!思い知らせてやる・・男をなめたらどうなるか・・」男が萌咲の唇を奪おうとした時だった。
「橋倉さんっ!!」たまたまそこを通りかかった透が二人に駆け寄った。
「何してるんですかあなた!」透は二人を引き剥がして男に問う。
「なにって、こいつがいつも俺を馬鹿にしてやがるから喝入れてやってんだよ。お前もこいつの毒牙に引っかかってんのか?可哀想に。お前みたいなガリ勉に、こいつが引っかかる訳ねーだろ。」男が透を見て笑うと、透は目の色を変えた。
「・・・橋倉さんが貴方みたいな男性を好きになるわけないでしょう。それに僕は彼女に何もされていないし、まず彼女はそんなことしません!」透は声を荒げた。
「ふっ、お前は何にも知らねーんだな。可哀想だよホント。まぁせいぜいこいつにたぶらかされて傷つく事だな。」男はその場を去った。
「・・・ありがと。」萌咲は素っ気ない返事をした。
「いえ、それより大丈夫ですか?腕。真っ赤です。」透は腕を見て心配そうな顔をした。
「あぁ・・あの人に掴まれてさ。大丈夫、ありがとう。・・・ごめんなさい。心配かけて」萌咲は頭を深く下げた。
「あぁ、いえいえ!頭を上げてください!こちらこそ、一人で女性を帰すなんてすいません。送ります。」
「うん、ありがと。」送ると言ってくれた優しさも嬉しかったが、なにより細い路地にも関わらず、助けに来てくれた優しさに目頭が熱くなった。
「じゃあ・・」透は目の前に手を出した。
「・・・え?」驚いた表情をすると、透は少し照れながら顔を赤くした。
「また、変な男性に連れて行かれたら心配なので。手、つ・・繋いでたら大丈夫じゃないかなって・・・。い、嫌ならすいません!僕なりに考えた結果なんですけど・・。」透は頭を掻いて照れくさそうにした。
「ん・・ありがとう。優しいね、ホントに。」あまりにも照れる透を見て、萌咲は微笑んだ。
「あ!その笑顔です!僕がずっと好きだった笑顔。その笑顔がなによりも好きです。だからずっと、笑っててください。」
自然に出てくる誠実で優しい言葉が乾いた心に染みて、萌咲の心を潤した。
すると、無意識に涙がこぼれた。
「え!?あ、ごめんなさい!僕、何か気に障る事言っちゃいました!?ホントにすいません!」オロオロした様子の透を見て、思わず吹き出した。
「ふふっ、ありがとう透くん。私・・・」一瞬行動が停止した萌咲は何とも言えない気持ちになった。今までに感じた事のないその感情に、萌咲は戸惑い、硬直した
そして、言葉を詰まらせた。
「・・・?橋倉さん?どうしました?」透は不思議そうな顔をして、俯いた萌咲の顔を覗き込む。
「・・・あ、ごめん。何でもない。じゃあ帰ろう。」萌咲は我に返ると、透の手を取り、歩き出す。
今さっきの謎めいた感情は何だったのだろう。
そんな不思議な感情とフワフワした気持ちを交差させながら、自宅に着いた。
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