僕は何度も君に恋をする

乃愛

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第1話

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僕は恋をした。惹かれた。ときめいた。
艶やかな黒髪が印象的で、首を傾げて悩む仕草や届かない場所の本に一生懸命手を伸ばす姿が可愛らしく、且つ上品だった。そんな彼女は僕の心を掴んで離さなかった。

僕は偶然大学の帰り道に立ち寄った書店で彼女に出逢った。
特に目的があって書店に入ったわけではなかったが、週刊誌を幾つか手に取って眺めていた。
小説のコーナーに移った時、好きな作家の新刊を見つけた。
僕はテンションが上がってその場で少し立ち読みした。恋愛小説だった、帰宅時間が迫っているにも関わらず僕は不思議と手を止めることが出来ず、最後まで読みきってしまった。
一目で気に入った新刊を持って僕はレジに向かおうとした。 その時だった。

「んー…」一生懸命高いところの本を取ろうとする女性にふと目を奪われた。
おそらく彼女の身長は158cm、到底自力では取れそうにない高さだ。
脚立を使おうとしないのかそれとも脚立に気付いていないのか。
自力で必死に取ろうとしていた。普段なら誰かが助けるだろうと通り過ぎるこの場所を、今僕は通り過ぎることが出来ない。彼女にこの上なく惹かれて、目が離せない。
気づいた頃には彼女が取りたいのであろう本の場所に手を伸ばしていた。
「あっ…ごめんなさい、ありがとうございます!」
「いえ…」僕は緊張して会話を続けられずにいた。
「本当にありがとうございました!失礼します!」彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべて去って行ってしまった。僕はこれでいいのか?勇気を振り絞って本を取ったのにお礼を言われて関係を終えてしまっても…いいはずがなかった。
「あのっ!」僕は彼女を呼び止めた。振り返った彼女は黙って首を傾げた。
「そ、その作家さん、僕も好きなんです。今から時間があったら…近くのカフェで一緒に読書でもしませんか?」
僕はなにを言ってるんだ!見ず知らずの男と一緒に読書だなんて。引かれたに決まってる。
僕は恥ずかしさに耐え切れず下を向いた。

「私もこの作家さん大好きです、30分くらいで良ければ一緒に読みたいですっ」
…え。
僕は完全に動揺した。自ら誘っておきながらこんな気持ち悪い提案に乗ってくれる女性がいるなんて思いもしなかった。

僕は彼女の行きつけだというカフェについていった。
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