上 下
3 / 26

グッジョブ、山田

しおりを挟む



 キャッキャとはしゃぐ美兎ちゃんの後ろ姿を眺めながら、その眩しすぎる光景に感嘆の息を漏らす。


(これが、天使のたわむれというやつか……?)


 外に出てからというもの、美兎ちゃんの関心はすっかりと『山田さん』が独占状態でいささか邪魔ではあるのだが。こんなにも可愛らしい光景を見せてくれるのなら、潰れた不細工な顔も少しくらいは大目に見てやろうだなんて、寛大な気持ちになったりもする。


(感謝しろよ、山田。いや……感謝するのは俺の方か?)


 それにしても、さっきからヒラヒラと揺れ動くスカートは、今にも捲れ上がってしまいそうでヒヤヒヤとする。
 ラッキースケベは俺としては勿論大歓迎なのだが、他の野郎には1ミリたりとも見せたくはない。


(見んじゃねぇ……! 見たら、ブッ殺すっ!!)


 通りすがりのサラリーマンにガンを飛ばせば、青白い顔をして足早に去ってゆく。


「瑛斗先生っ! 早く、早くぅ~!」


 満面の笑顔で振り返り、俺に向けてヒラヒラと手招きをする美兎ちゃん。
 天国へのご招待にいざなわれ、ドスの効いた顔から一瞬で破顔させるとフラフラと宙を舞うように美兎ちゃんの元へと近付く。


「お待たせ。美兎ちゃん(マイ・ワイフ)」

「もぅ~! ちゃんと着いて来てね?」

「ごめんごめん。ちゃんと着いてくよ(一生)」


 イチャイチャしながら、一人脳内で家族ごっこに励む。


(……最高かっ♡♡♡)


 残念ながら子供の顔は少しばかり不細工気味だが、美兎ちゃんとの子供だと思えば不思議と愛しさが込み上げてくる。


(お前、よく見りゃ可愛いな……)


 そんなことを思いながら足元を見れば、美兎ちゃんの足首をペロペロと美味しそうに舐める山田。


(……。……やっぱお前、ムカつくっ!!)


 幸せ気分は即終了。


(俺のハッピータイムを返しやがれ……っ!)


 そう思ってガンを飛ばせば、ビクリと震えた山田が一気に走り出した。


「……きゃっ!」


 突然の出来事に、美兎ちゃんの手元から離れてしまったリード。首輪からリードを垂らしたまま、ダッシュで駆け抜けていく『山田さん』。


「ダメ~ッ! 山田さんっ! 待ってぇ~!」


 半泣きで『山田さん』を追い掛ける美兎ちゃんの横を通り過ぎると、俺は勢いよく仔犬に向かってダイブした。


(……っこの野郎。美兎ちゃんを泣かせるとは、いい度胸だな)


 溢れ出る怒りを抑えつつ優しく抱き抱えれば、遅れて追い付いた美兎ちゃんが口を開いた。


「……瑛斗先生、ありがとうっ! 大丈夫!?」

「うん、大丈夫。はい、『山田さん』。もう離しちゃダメだよ?」

「……っうん。ごめんなさい」


 未だ半泣き状態の美兎ちゃんにそっと『山田さん』を返してやれば、愛おしそうにスリスリと頬を寄せる美兎ちゃん。


(……うん。そのご褒美俺が欲しかったわ)


 そう思って山田に目を向けた──その時。



 ────!!?!!?



「……っ、みず……っ!!?!!?」

「え? 水……? キャーッ!! 瑛斗先生、鼻血ッ!!」
 

 俺の鼻からタラリと垂れる鼻血を見て、一人アタフタと焦る美兎ちゃん。
 そんな姿を他所に、俺は目の前の光景を眺めて鼻の下を目一杯伸ばした。


(……グッジョブ、山田)


 俺は心の中で、山田に向けて称賛の親指を立てた。

 美兎ちゃんに抱き抱えられた山田の足にはスカートが引っかかり、見事に捲れ上がったそこには、水玉の可愛いパンツが広がっている。


(最高のご褒美だよ……♡♡♡    美兎ちゃん、ありがとうっ!!!)

 
 俺はそのご褒美を堪能すべく、一瞬たりとも気を抜かずにガン見し続けたのだった。
 


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

女子大生家庭教師・秘密の成功報酬

芦屋 道庵 (冷月 冴 改め)
恋愛
弘前さくらは、大手企業・二村建設の専務の家に生まれた。何不自由なく育てられ、都内の国立大学に通っていたが、二十歳になった時、両親が飛行機事故で亡くなった。一転して天涯孤独の身になってしまったさくらに、二村建設社長夫人・二村玲子が救いの手を差し伸べる。二村の邸宅に住み込み、一人息子で高校三年の悠馬の家庭教師をすることになる。さくらと悠馬は幼なじみで、姉と弟のような存在だった。それを受けたさくら。玲子はさらに、秘密のミッションを提示してきた……。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

処理中です...