ぱぴLove〜私の幼なじみはちょっと変〜

邪神 白猫

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♡最終章♡

何度でも、君に恋をする Part⑥

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「大好きだよ……私、ひぃくんの事大好きだもん……。不倫なんて……っ、浮気なんて絶対にしないよ……っ」


 まるで独り言のように小さな声でそう呟くと、ガクガクと揺れていた身体がピタリと止まった。


「……本当っ!!?」


 キラキラと瞳を輝かせるひぃくんは、とても嬉しそうな顔をして私を見つめる。


(またですか……っ。忍法、涙隠しの術。あんなに流していた涙は何処いずこへ……?)


 目の前で嬉しそうに微笑んでいるひぃくんを見て、目まぐるしく変わるその表情に顔面がヒクつく。


「良かったなぁ、響っ!」


 それまで黙って私達を見ていたお父さんは、そう言ってポンッとひぃくんの肩に手を乗せると嬉しそうに笑った。


「うんっ! 花音、結婚してくれるって!」

「そうか~! 良かったな~!」


(……えっ!?)


 嬉しそうに話している姿を見て、焦った私は二人に向けて急いで口を開いた。


「っ……わ、私っ! 結婚するなんて言ってないよ!?」

「何言ってるんだ、花音。言ってたぞ? 結婚するって。……なぁ? 響」

「うんっ! 言った!」


(えっ!? 私……っ、言った!? 言ったの!? 自分でも気付かない内に、無意識に言ってしまったの!!?)


 パニックで混乱した頭のまま、チラリとお母さん達に向けて視線を移してみる。
 すると、その視線に気付いたお母さん達は私に向けてニッコリと優しく微笑んだ。


(えっ……、その笑顔の意味は……? やっぱり私言ったの? 結婚するって)


 お母さん達の笑顔を見て、益々混乱して呆然とする私。
 その隙に、再び私の右手にボールペンを握らせたひぃくん。


「じゃあ、ここに名前書いてねっ?」


 フニャッと笑って小首を傾げるひぃくんを見て、私は思いっきり顔面を引きつらせた。


(いや……、ちょっと待って。やっぱり言ってないよっ! 私、結婚するなんて言ってないからーーっ!)


 今にも泣き出してしまいそうな程に情けない顔をする私は、一縷いちるの望みをかけてお兄ちゃんの方を見た。


(お願い、お兄ちゃん。私を見捨てないで……っ)


 この場で唯一頼れる存在だと思われるお兄ちゃんを見つめて、瞳を潤ませながら心の中で懇願する。
 ソファに座って呆れながらこの光景を眺めていたお兄ちゃんは、そんな私を見て大きな溜息を吐いた。


「……だから、からかうなって言ってるだろ。花音はすぐ騙されるんだから」



 ────!!!



(お兄ちゃんっ……! 私を見捨てた訳じゃなかったのね……っ!?)


 お兄ちゃんに見捨てられたとばかり思っていた私は、目の前のお兄ちゃんを見つめて喜びに小さく身体を震わせる。


「っ、……お兄ちゃんっ!」


 ガバッと勢いよく立ち上がった私は、お兄ちゃんに向かって走り寄るとそのままダイブした。


「……っ! 私を見捨てた訳じゃなかったのねっ!? 良かった……っ !」

「…………。見捨てるって何だよ」


 泣きそうな顔をしながらも喜ぶ私を見て、呆れながらも優しく抱きとめてくれたお兄ちゃん。


(っ……やっぱり、私の味方はお兄ちゃんだけだよ。これからも、ずっとずっと私の味方でいてね?)


 そんな事を思いながら、フフッと小さく微笑む。すると、そんな私をすぐ近くで見ていた彩奈は、クスッと小さな笑い声を漏らした。


「──花音」



 ────!?



 突然、ヌッと私の顔を覗き込んできたひぃくんは、私と視線を合わせると小首を傾げてフニャッと微笑んだ。


(ビッ、ビックリした……っ)


 いきなりのドアップとか、心臓に悪いから本当に辞めて頂きたい。
 目の前でニコニコと幸せそうに微笑むひぃくんを見て、何だか嫌な予感がした私は無意識にお兄ちゃんの服をキュッと握りしめた。


(怖いよ、ひぃくん。何だか凄く怖い、その笑顔……)


「良かったねー? 翔も賛成だって、俺達の結婚」


 そう告げると、私の目の前でニコッと笑ってみせたひぃくん。


(この人は一体、何を言ってるの……?)


 さっきのお兄ちゃんの言葉を、本当にちゃんと聞いていたのだろうか? 何をどう聞き間違えたらそんな解釈になるというのだ。
 目の前にいるひぃくんを見つめながら、私は思いっきり顔を引きつらせた。


(まっ、負けないんだから……っ。そう──今の私にはお兄ちゃんがついてる! ……ひぃくんになんて絶対に負けないんだからっ!)


 そんな事を思った私は、気持ちを立て直すと目の前のひぃくんをキッと睨みつけた。


「っ、……そんなに見つめないでよー、花音。可愛すぎて我慢ができなくなっちゃうよ」


 私の顔を見て、そんな事を言ったひぃくん。ユラユラと身体を横に揺らしながら、とても嬉しそうに微笑んでいる。
 私は見つめているのではなく、睨んでいるのだ。そんな事ですら、今のひぃくんには伝わらないのだろうか?


(ダメだ……っ。私じゃやっぱり敵わないかもしれない……)


 ニコニコと嬉しそうに微笑むひぃくんを見て、気持ちで負けてしまった私はヒクリと口元を引きつらせた。
 そんな私達のやり取りを黙って見ていたお兄ちゃんは、突然ひぃくんの肩を掴むと後ろへ押し退けた。


「おい、響。それ以上花音に近づくな。……だいたい、俺がいつ結婚を認めたんだよ? 勝手な事言うな」

「えー? 言ってたよ? さっき」

「言ってないだろ。一体どんな解釈したらそうなるんだよ」


 ニコニコと微笑むひぃくんを見て、呆れたような顔をして小さく溜息を吐くお兄ちゃん。


「またまたー。……照れなくてもいいんだよ? ちゃんと解ってるから」


 そう言ってフニャッと笑って小首を傾げるひぃくん。


「お前は何も解ってないよ……。何で照れる必要があるんだよ、アホか」


 目の前で呑気に微笑んでいるひぃくんを見て、呆れた顔のまま溜息まじりにそう小さく呟いたお兄ちゃん。


「何だ~? 翔。お前、照れてたのか? おかしな奴だな~、何でお前が照れる必要があるんだ?」


 そう言って、ハハハと豪快に笑うお父さん。


「だから……、照れてないって。おかしいのはコイツだろ」


 ウンザリとした顔でそう呟いたお兄ちゃんは、もはや戦意喪失気味のよう。
 それもそのはず。ひぃくんもお父さんも全く話が通じないのだ。こんな二人を相手にどう対抗すべきか、私だって分からない。

 でも、ちゃんと話して説得するしかないのだ。
 だって、私は高校生で結婚だなんて、そんなこと絶対にできないから。


「ひぃくん。私、やっぱりまだ結婚はできないよ。だって私……まだ高校生なんだよ?」


(またひぃくんが大泣きしちゃったらどうしよう……)


 そんな事を考えてビクビクとしながらも、目の前のひぃくんに向けてハッキリとそう宣言をする。


「恥ずかしがっちゃって可愛いねー、花音は」


 ニコッと微笑んだひぃくんは、そう言うと私の頬をツンッとつついた。


「ち……違うよ、ひぃくん。恥ずかしがってるんじゃなくて──」

「大丈夫だよ? ちゃんと解ってるから」


(いや、解ってない……っ。解ってないよ、ひぃくん。私、全然大丈夫なんかじゃないから……っ!)


 目の前でニコニコと微笑んでいるひぃくんを見つめながら、あまりの話しの通じなさに徐々に顔面蒼白になってゆく私の顔。


「翔も花音も照れ屋さんだな~」


 そんな事を言いながら、ハハハと豪快に笑っているお父さん。


(だから違うってば! さっきから何言ってるの!? この二人は……っ!)


 そんな二人の姿を見てドン引きした私は、真っ青な顔をしたまま大声を上げた。


「っ、……本当に違うからっ!! 私まだ高校生なんだよっ!? 結婚なんてできるわけないでしょ!? やめてよっ、お父さんまでっ!!」


 突然の大声に、一瞬キョトンとした顔を見せたひぃくん。何かを閃いたような顔をさせると、私に向けてフニャッと微笑む。


「そっか。花音は沢山エッチがしたいんだね? そんなに心配しなくても大丈夫だよ。いいよ、いっぱいしようねー」



 ────!!!?



 ひぃくんの放った言葉に、硬直した私の顔面がピクピクと引きつる。


(私が一体いつ、エッチの話しをしたっていうの……? それじゃまるで、私が性欲マシンの変態みたいじゃない……っ! なんて事言うのよ、ひぃくんのバカ……っ!)


 目の前で呑気にニコニコと微笑んでいるひぃくん。


(私にはもう……っ、ひぃくんの思考が全く解らないよ……)


 今にも泣き出しそうな顔をした私は、目の前のひぃくんに向けて勢いよく口を開いた。


「っ、ひぃくんの変態っ!! バカッ!! ……っもう嫌いっ!! あっちに行ってっ!! 近寄らないでっ!!」


 そんな暴言を吐きまくると、羞恥に耐えかねた私はお兄ちゃんの胸に顔をうずめた。


「かの~んっ!」



 ────!!?



 そんな私をお兄ちゃんごと抱きしめたひぃくん。


(あぁ……また、デジャヴが……っ)


 身体が傾いてゆく中、一瞬そんな事を思った私。
 そのままゆっくりと倒れると、気付けばソファの上でサンドイッチ状態の私達。下にはお兄ちゃん、上にはひぃくん。重くて死にそうだから、本当に辞めて頂きたい。


「恥ずかしがっちゃって可愛いねー、花音は。いっぱいエッチしようね?」

「……っ。この体勢で変な事言うなよっ! 気持ち悪いなっ! 早くどけっ! 揺れるなっ!!」


 私の上で身体を揺らしながら、「かの~ん。かの~ん」と嬉しそうな声を上げているひぃくん。


(や、やめて……っ。お願い、揺れないで……っひぃくんのバカ! 変態……っ!!)


 苦しさに呻き声を上げるだけの私は、心の中で何度もひぃくんのことを変態とののしる。 
 苦しさと羞恥心から顔を真っ赤に染め上げながらも、私の上で揺れているひぃくんの体温を背中越しに静かに感じる。

 その温もりが何故かとても優しく感じたのは……私の気のせいなのかもしれない。



 ──やっぱり、ひぃくんはちょっと変。


 いつだってこうして、私は振り回されるのだ。それはきっと、これからも変わらない。
 そんなひぃくんの事を、時には嫌だなんて思ったりする事もあるけど。だけどやっぱり私は、どうしようもない程にひぃくんに惚れているんだと思う。




 だって、そのたびに私は──



 何度だって、また君に恋をしちゃうんだから。








─完─






本編完結となります。
次ページより、番外編スタート

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