ぱぴLove〜私の幼なじみはちょっと変〜

邪神 白猫

文字の大きさ
上 下
25 / 47
♡第二章♡

恋人はサンタクロース Part③

しおりを挟む




 サンタクロースの衣装へと着替え終えた私は、左手を目線の高さまで掲げると貰ったばかりの指輪を眺めた。
 その指輪はとてもシンプルな作りで、控えめなハートの形をした飾りの中央には一粒の小さな石がはめ込んである。
 シンプルだけど、決して安物には見えない。きっと、それなりの値段はしたはずだ。


(そういえば、まだちゃんとお礼を言ってなかったかも……。ちゃんとお礼言わなくちゃ)


 眺めていた指輪から視線を外すと、私は目の前のノブに手を掛けて廊下へと続く扉を開いた。


「ひぃくん」


 扉のすぐ近くで待っていたひぃくんは、私の姿を捉えると途端に瞳をキラキラと輝かせた。


「花音っ、可愛いー!」


 そう言ってフニャッと微笑むひぃくん。
 私はフフッと照れた様な笑みを見せると、そのままひぃくんへ向けて口を開いた。


「ひぃくん、指輪ありがとう。絶対に大切にするからね」


 私が言葉を言い終えた次の瞬間、ガバッと抱きついてきたひぃくん。



 ────!!



 その突然の行動に一瞬驚きつつも、ひぃくんの背中にそっと腕を回してみる。


「あーっ! もぅ、可愛すぎるよ~! 今すぐ結婚したいよー!」


(うーん……。それはちょっと困るかなぁ)


 そんな事を思いながらも、フフッと小さく笑い声を漏らす。
 すると、抱きしめる力をふっと緩めたひぃくんは、身体をほんの少しだけ離すと優しい眼差しを向けて小さく微笑んだ。

 チュッと小さなリップ音を響かせて、軽く触れるだけのキスをしたひぃくん。


「……っ」

「可愛いー。トマトみたいだねっ」


 クスッと笑ったひぃくんは、そう告げると私の頬をツンっとつつく。
 未だに何度しても慣れない私は、真っ赤になっているのであろう顔を隠すようにして少しだけ俯いた。


(……もぅっ。言わないでよ、ひぃくんのバカッ。余計に恥ずかしいじゃない……っ)


 そんな私の様子を見てクスクスと笑い声を漏らしたひぃくんは、俯いたままの私の手を取るとベッドの上へと座らせた。


「ねぇサンタさん?」


 その声に反応してひぃくんの方を見てみると、フニャッと笑いながら小首を傾げて私を見ている。


「なぁに?」


 どうやら、今の私はサンタさんという設定らしい。それがなんだか可笑しくて、思わずクスリと笑い声を漏らす。


「プレゼントちょーだい?」

「……へ?」


 ニコニコと微笑むひぃくんを前に、焦った私は間抜けな声を溢すと瞳を泳がせた。


(えっ……。コスプレするのがプレゼントじゃなかったの? どうしよう……っ私、本当にプレゼント用意してないのに……)


 申し訳ない気持ちで押し潰されそうになりながら、眉尻を下げた情けない顔でひぃくんを見つめる。


「あのね、ひぃくん。私……、本当にプレゼント用意してないの。ごめんなさい」


 自分の不甲斐なさに反省しながら謝罪の言葉を述べると、クスッと笑い声を漏らしたひぃくんが私の耳元で甘く囁いた。


「プレゼントならちゃんとあるよ?」

「え……?」



 ────!?



 気付けば、ベッドの上で仰向け状態になっている私。
 目の前には、ニコニコと微笑むひぃくんの姿。その背後に広がるのは、ひぃくんの部屋の天井らしきもの。


(……え? この状況は……一体、何……?)


 突然の出来事に上手く処理しきれない私は、目の前にいるひぃくんをただ呆然と見上げる。


「プレゼントは花音だよ?」


 私の上にまたがっているひぃくんは、フニャッと嬉しそうに微笑むと未だ処理しきれずに呆然とする私に向かって平然とそう言い放った。


(……っ!!? えっ!? えーーっっ!!? まっ、まままっ、ちょっ……待ってっ! むっ、む、ムリムリムリムリーー!!! ひぃくんの事は好きだけど……大好きだけど……っ! ま、まだ心の準備がっ……!!!)


 この状況が何を意味するのか察した私は、一人脳内でパニックを起こす。恥ずかしさで一瞬真っ赤に染まった顔は瞬時に青へと変わり、緊張からビシリと硬直してしまった身体はピクリとも動かなくなった。
 そんな私を愛おしそうに見つめるひぃくんは、緊張で強張こわばる私の頬を優しく撫でると口を開いた。


「大丈夫だよ、花音。心配しないで。凄く可愛いから」


 そう告げると、とても幸せそうな顔でフニャッと微笑んだひぃくん。


(…………)


 この状況下で、私が今心配しているのはどう考えたって己の可愛さである訳がない。それなのに、そんな訳のわからない事を言っているひぃくん。


(それ、本気で言ってるの……?)


 あまりにも的外れなひぃくんの言葉に、軽く絶望感を覚える。
 それでも、青ざめたままジッと固まるだけの私は、ゆっくりと近付いてくるひぃくんの姿を、ただ眺めていることしかできなかった。

 やけにスローモーションに見えるその動きを、ただジッと見開いた瞳で追いかける事しかできない私。


(っど、どどど、どうしよう……っ。無理だよ……っ。私……、まだ無理っ……!!!)


 間近に迫ったひぃくんの顔を前に、ギュッと固く瞼を閉じた──その時。



 ────ドンッ!!!! ────!!?



 すぐ間近で鳴り響いた物凄い音に驚き、私は閉じていた瞼を勢いよく全開にさせた。


(……いっ、今のは一体、何っ!!?)


「……あっ」


 私の上に跨っているひぃくんが、小さく声を漏らした。その視線は、つい先程までは私を見つめていたというのに、今はベッドわきへと向けられている。
 そこにあるのは、私の部屋へと侵入する時にひぃくんが使用している窓。何やら嫌な予感がした私は、ひぃくんの視線を辿ってゆっくりと窓の方へと首を動かしてみた。



 ────!!?!!?



「ヒィッ……!!?」


 あまりの恐ろしさに、小さく声を漏らしてブルリと震えた私。そんな私の視界に飛び込んできたのは、それは世にも恐ろしい光景だった。
 窓にへばりついて私達を凝視する鬼──もとい、鬼の形相で怒り狂っているお兄ちゃんが、血走った瞳で私達を凝視している姿だったのだから。





 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

邪神 白猫
恋愛
◆お知らせ◆ 現在、新たに加筆修正したものを新規公開中です 新タイトル 【ぱぴLove〜私の幼なじみはちょっと変〜】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/21507582/669902083 ↑ お手間をお掛けして申し訳ありませんが、こちらの作品の方で“しおり”や“お気に入り”等をお願いしますm(._.)m 見た目は完璧な王子様。 だけど、中身はちょっと変な残念イケメン。 そんな幼なじみに溺愛される美少女の物語ーー。 お隣りさん同士で、小さな頃からの幼なじみの花音と響。 昔からちょっと変わっている響の思考は、長年の付き合いでも理解が不能?! そんな響に溺愛される花音は、今日もやっぱり振り回される……! 嫌よ嫌よも好きのうち?! 基本甘くて、たまに笑える!そんな二人の恋模様。 ※ 表紙&作中に出てくるイラストは全てフリーアイコンを使用しています タイトルは造語を使用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

処理中です...