井戸の中

邪神 白猫

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◆◆◆



 ──翌日。
 いつものように学校へと登校した俺は、誰も教室にいない時間帯を見計らうと、智が大事にしているペンケースをコッソリと盗んだ。
 智が筆箱代わりに使っている、この少し変わった型のポーチ。海外旅行に行った親戚からのお土産だとかで、そんな話を教室で自慢気にしていた智の姿を思い返す。

 俺は手元のポーチを宙にかざすと、迷う事なくその手を離して井戸の中へと落とした。
 ポーチの行方を目で追って見ていると、それは井戸の底へと着く瞬間、まるで何かに吸い込まれるようにして忽然と姿を消した。


「……ざまぁみろ」


 何とも不可解なその現象を不思議に思いながらも、爽快感からフッと鼻から息を漏らしてほくそ笑む。


「──おいっ!! 公平っ!!」


 ────!!?


 突然の大声に驚いた俺は、ビクリと肩を揺らすと慌てて後ろを振り返った。


「ペンケース盗んだのお前だろっ!!!」


 そう叫んだ智は、酷く怒った形相を浮かべながら俺へと向かって突進してくる。それをすんでの所でかわすと、目の前の智を睨みながら口を開く。


「……そんなの知るかよっ!!」

「お前以外に誰がいるんだよっ! この貧乏人がっ!!」


 掴みかかって殴ろうとする智をかわしながらも、必死にその場を転げ回って逃げようとする俺。何とか立ち上がって背を向けた──その時。
 背後からグイッと髪を掴まれた俺は、その痛みに思わず顔を歪めた。


(くそ……っ!)


 転がっていた石を咄嗟に掴んだ俺は、振り向きざまに力任せにその手を大きく振り上げる。



 ────ゴッ!


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