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しおりを挟む僕には、もうすぐ付き合って一年目を迎える彼女がいる。
そんな彼女には最近何か悩みがあるようだったが、「何かあった?」と聞けば「ううん。何もないよ」と微笑むだけだったので、僕の勘違いかとそれ以降は特に気にすることもなかった。
──それから数日が経ったある日のこと。
大学のキャンパス内にある食堂で昼食をとっていると、目の前に座った由衣が少しだけ曇った表情をさせながら躊躇いがちにその口を開いた。
「……あの、ね。私っ……最近誰かにつけられてる気がするの」
「……えっ?」
少し間の抜けた声を発した僕は、食べかけの菓子パンを握った右手をゆっくりと下ろすと、少し潤んだ瞳でこちらを見つめる由衣を見つめ返した。
「えっ。それってストーカーってこと?」
「うん……、たぶん」
それだけ答えると、暗い表情をさせた由衣は伏せた瞼を小さく震わせた。
きっととても不安で怖いのだろう。そんな感情が表情から見て取れる。
「大丈夫だよ、由衣。僕がついてるから」
安心させるようにしてそっと小さな手を包み込めば、由衣は「ありがとう」と言って小さく微笑んだ。
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