歪ーいびつー

邪神 白猫

文字の大きさ
上 下
40 / 47
最終章

朱莉【回想】

しおりを挟む
ーーーーーーーー



ーーーーーー



ーーーー





 キャンプファイヤーが終わると、私は奏多を探して会場の周りをウロウロと彷徨っていた。
 さっきからずっと探しているのに、中々見つけられない。

 諦めてテントへ戻ろうとした、その時ーー
 遠くの方に、チラリと見える奏多の後ろ姿を見つけた。


「……奏多ぁー!!」


 私の大声にも全く気付かない様子の奏多は、キョロキョロと誰かを探すような素振りをしている。
 きっと、夢でも探しているのだろうーー

 私はチクリと痛んだ胸に気付かないフリをすると、人の流れをかき分けながら奏多の後ろ姿を追い掛けた。




ーーーーーー





「どこに行っちゃったんだろ……」


 奏多の姿を見失ってしまった私は、寂しげに小さくポツリと呟いた。

 そのまま1人、川岸をつたってノロノロと歩いているとーー
 遠くに人影らしきものを見つけ、私は奏多かと思って近付いてみた。


「ーーあれ、……楓?」


 そこに居たのは、1人川を見つめて佇む楓だった。

 私の声に気付いた楓は、ゆっくりと振り返ると私の方に視線を向けた。


「……朱莉ちゃん。どうしたの?」


 私を視界に捉えた楓は、そう言ってニッコリと微笑む。


「奏多を追い掛けてたら、見失っちゃって……」

「あぁ……。きっと、屋外キッチンにいるんじゃないかな?」

「……楓は、こんなところで何してたの?」

「明日には、川に入れるかな? って見に来たんだけど……。まだ、ダメみたいだね」


 そう言って、小首を傾げて微笑んだ楓。
 そんな楓の顔から、何気なく下の方へと視線を移してみるとーー

 その手には、大きな石が握られている。そしてそこには……。なにやら、赤いものが付着している。


「ねぇ……。それって……、血……?」


 楓の手元を指差すと、恐る恐ると小さな声で尋ねてみる。


「……うん。悪い虫がいたから」


 そう言って、いつものように可愛らしく微笑んだ楓。


「……えっ! やだっ! それって、ムカデとか!?」

「うん。だから、もう行こう? 奏多もきっと、待ってるよ」


 手に持った石を川へと投げ入れた楓は、そう言ってニッコリと微笑むと、私を連れて屋外キッチンへと向かって歩き始めたのだった。





ーーーー



ーーーーーー



ーーーーーーーー



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

学園ミステリ~桐木純架

よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。 そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。 血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。 新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。 『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

呪配

真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。 デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。 『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』 その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。 不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……? 「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!

探偵幼稚園クロウ 三つの謎に挑む

トマト
ミステリー
探偵幼稚園クロウ 体育館の怪 踊る人体模型 三つの短編をまとめました。

どんでん返し

あいうら
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~ ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが… (「薪」より)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

7月は男子校の探偵少女

金時るるの
ミステリー
孤児院暮らしから一転、女であるにも関わらずなぜか全寮制の名門男子校に入学する事になったユーリ。 性別を隠しながらも初めての学園生活を満喫していたのもつかの間、とある出来事をきっかけに、ルームメイトに目を付けられて、厄介ごとを押し付けられる。 顔の塗りつぶされた肖像画。 完成しない彫刻作品。 ユーリが遭遇する謎の数々とその真相とは。 19世紀末。ヨーロッパのとある国を舞台にした日常系ミステリー。 (タイトルに※マークのついているエピソードは他キャラ視点です)

処理中です...