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「………………だ、そうですよ。王妃殿下。」
ここで今までずっと沈黙を貫き通していたシルヴィアが声を上げた。だがそれはルバートに対してでは無く、静かに話を聞いていただけに見えた王妃に向かって。
「……そうねぇ……。残念だけれどもう関係改善は望めないでしょうね。今までご苦労さま、エガートン公爵令嬢。……本当に最後まで迷惑かけてごめんなさいね。」
王妃は本当に残念そうにシルヴィアの方を見やった。彼女は、婚約破棄をみとめるという方向性のようだ。
「ふんっ!母上もそう仰っている!金輪際、俺の婚約者だなどと宣うなよ!……それで母上、次の婚約者にこのサラを……と思うのですが。」
やけに自信満々にルバートがそう宣言する。
周りからは非難の視線がひしひしと注がれている。それも当然だろう。ここにいる男たちはみんな、サラの心を手に入れたくてこんな行動を起こしたのだ。ルバートのこの宣言は彼らの『今のうちはまだサラはみんなのものである』という不文律を破ることになるのだから。
せめて身分を鑑みて王妃が反対してくれないものか……と彼らは淡い期待を胸に彼女を見つめる。
だが、彼女からかえってきた答えはその期待に反するものとなった。
「別に私に許可を取る必要なんかないわよ。勝手になさい。」
王妃は深く深くため息をつくとそうはっきりと宣言した。
彼女の猛烈な反対にあうだろうと予想していた彼らはどうにも拍子抜けした様子だ。
だが、ルバート以外の面々にとっては放置しておけるほどの問題ではなかった。
一気に緊迫した空気になる中、一番の渦中の人物であるサラが悠々とした足取りでシルヴィアの真ん前に再び進み出た。
その顔は興奮に紅潮しており、勝利の愉悦に溢れていた。
「………………だ、そうですよ。王妃殿下。」
ここで今までずっと沈黙を貫き通していたシルヴィアが声を上げた。だがそれはルバートに対してでは無く、静かに話を聞いていただけに見えた王妃に向かって。
「……そうねぇ……。残念だけれどもう関係改善は望めないでしょうね。今までご苦労さま、エガートン公爵令嬢。……本当に最後まで迷惑かけてごめんなさいね。」
王妃は本当に残念そうにシルヴィアの方を見やった。彼女は、婚約破棄をみとめるという方向性のようだ。
「ふんっ!母上もそう仰っている!金輪際、俺の婚約者だなどと宣うなよ!……それで母上、次の婚約者にこのサラを……と思うのですが。」
やけに自信満々にルバートがそう宣言する。
周りからは非難の視線がひしひしと注がれている。それも当然だろう。ここにいる男たちはみんな、サラの心を手に入れたくてこんな行動を起こしたのだ。ルバートのこの宣言は彼らの『今のうちはまだサラはみんなのものである』という不文律を破ることになるのだから。
せめて身分を鑑みて王妃が反対してくれないものか……と彼らは淡い期待を胸に彼女を見つめる。
だが、彼女からかえってきた答えはその期待に反するものとなった。
「別に私に許可を取る必要なんかないわよ。勝手になさい。」
王妃は深く深くため息をつくとそうはっきりと宣言した。
彼女の猛烈な反対にあうだろうと予想していた彼らはどうにも拍子抜けした様子だ。
だが、ルバート以外の面々にとっては放置しておけるほどの問題ではなかった。
一気に緊迫した空気になる中、一番の渦中の人物であるサラが悠々とした足取りでシルヴィアの真ん前に再び進み出た。
その顔は興奮に紅潮しており、勝利の愉悦に溢れていた。
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