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「わ、私たち、一度席を外した方がよろしいでしょうか……?」

震える声で沈黙を破ったのは一人の令嬢。
これから確実に面倒臭いことが起こると容易に想像できるこの状況で、居座り続けるのは得策ではないと考えたのだろう。
この場の主である王妃に伺いを立てたのだが。


「その必要はない。」

返答は思わぬところからかかった。
彼女が振り向いた先には王太子・ルバートが佇んでいた。


「むしろ、皆も聞くべきだろう。その女の悪事をな!」

そう言ってビシッとシルヴィアを指差すルバート。
そう言われてしまえば逃げることも叶わない。
王妃に伺いを立てようとした令嬢は渋々この場に止まることにしたのだ。

ルバートが高らかに宣言したところに後続の集団が追いついた。
クリストファー・エガートン公爵令息、エドワード・ホールデン爵令息、アレックス・オースティン伯爵令息、アーサー・フォスター子爵、そして彼らに守られるように中心にいるサラ・フィンレー男爵令嬢。
問題の面子勢揃いである。


「エガートン公爵令嬢!ここにいるサラに対して行った数々の悪事に対して謝罪を要求する!」

最初に口を開いたのはホールデン侯爵令息だった。
頬を紅潮させて興奮しているのが容易に見てとれる。
愛しい少女に頼られてやる気にみなぎっているのだろうか。それとも正義の鉄槌を下す己に酔っているのか。
ふと後ろに続く少年たちを見ると皆が同じ顔をして、たった今名を呼ばれたシルヴィアを睨みつけていた。――いや、全員は語弊があるか。
クリストファー・エガートン公爵令息だけは少し離れたところから冷め切った目を向けていた。
実の姉を見つめる目とは思えない感情の読み取れない瞳。

だが、感情が読み取れないのはシルヴィアも同じだった。
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