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番外編3~小話集~
After the dream…2
しおりを挟むルーカスは見たもの全てが思わずうっとりするような微笑みを浮かべた。
「今日ではないが、すぐにでも。来月にはもう君はここにはいないだろうね。」
どこからともなく息を呑む声が聞こえる。
ここにいる人間たちは、皆ルーカスの浮かべるこの笑みがどういった類のものなのかを正確に理解していたのだ。
「まあほんと!?やっとこの辛気臭い場所ともおさらばだわ!次期王妃である私にこんな場所似合わないものね!」
「次期王妃?何が?ふふ……君は本当に冗談が上手いね。」
「え?だってそうでしょ?あなたが私を妃にしたいと思ったからここに来たんでしょ?」
「あっははははははははははははは!!!!何を言い出すかと思えば!」
「…………え……?」
突然大声で笑い出したルーカスに、流石のメアリーもたじろぐ。
再び彼の瞳がメアリーに向けられた時、それは先程までとは打って変わって剣呑な光を含んでいた。
「僕が……?お前を好いているとでも…………?正気か?いや、違うか。いい夢を見たな?…………残念だったな。僕が愛しているのは今も昔も、そしてこれからもずっとアリシアただ一人だけだ。そこにお前ごときが入り込む余地などありはしない。そもそも彼女を陥れようとした君に救いようがあるとでも?」
「な、ならどうしてここに……?ここから出してくれるって……。」
メアリーと目線を合わせるためにしゃがみ込んだルーカスの瞳は光を写してはおらず、どこまでも引き摺り込まれそうな夜の海を思わせる。
震える声を何とか絞り出すメアリーはこれ以上ないと言えるほど必死であった。
「君がいう通りさ。もうすぐこの辛気臭い場所から出られるとも。でも、僕は決定事項を伝えにきただけだよ。誰よりも先に君の反応が見たくてね。僕が出してあげようとしたわけじゃあない。…………………………喜べ、メアリー・ポーラ元男爵令嬢。君の処刑が決まった。」
「………………え」
「それではね。良い余生を。」
再びこの場所に来た時同様、完璧な微笑みを湛えたルーカスは、目的は果たしたと言わんばかりの顔をしてその場を去った。
後には少女の悲鳴と、その体を牢の鉄柵にぶつけるガシャガシャという音を残して。
また時が過ぎれば静寂が訪れるだろう。
――――ここは。
夢から覚めたものが集う場所。
夢破れたものの集う場所。
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