49 / 78
番外編2~ルーカスside~
22話
しおりを挟む
「私の実家では、魔道具を扱っております。それで、監視用に校内の何ヶ所かに記録用の映像器具を仕掛けておいたら良いのではないかと思ってアリシア様に先日進言させて頂きました。いかがでしょう?」
最初に口火を切ったのはローザだった。
先程の彼女の話から考えると、その時にはアリシアにそこまでは必要ないのではないかと断られたに違いない。その時はひきさがったのだろうが、きっと納得していなかったに違いない。
だからこそ、ルーカスが味方に着いてくれると分かった今、もういちどその話を蒸し返してみることにしたのだろう。
そして、その判断は正しかった。
今、アリシアにはルーカスの調査に協力すると言ってしまった現実がある。映像記録を残せるなら、ルーカスは、アリシア自身が口で伝えるよりもずっと正確な調査が出来るだろう。
彼女の中に断るという選択肢は、既に消えてしまっていたのだ。
「それが一番良いような気がしますわ。……もしよろしければ、ルーカス様が映像器具を起動して頂けないでしょうか?きっと私たちがするよりもずっと信憑性のある強力な証拠となり得るでしょう。」
アリシアの前向きな返答にローザは一瞬目を丸くしたが、彼女の気が変わらないうちに急いで話を進めてしまう事に決めたようだ。
「ご存知かもしれませんが、私の実家は魔道具を多く取り扱っております。商品を提供させて頂きますのでお使いください。」
「……いいえ、対価はきちんと払うわ。そこまで貴女にさせる訳にはいかないもの。気持ちだけ頂くわね。」
「いえ、ですが……。」
「あぁ、アリシアの言う通りだ。それに、ちょっと今回は別件でもその記録を見させて頂きたい。だから、その気持ちは嬉しいが、きちんとお金は払わせて貰いたいんだ。」
「…………分かりました……。おふたりがそう仰るなら。でも、大量に購入して下さるのは大変助かります。ですから気持ち程度のお値下げはさせて頂きますね。……これくらいはお許しください。」
ローザをちょっとがっかりさせてしまったようだが、タダで提供させたとなると後々収賄及び贈賄として問題になっては困る。これから色々な事を計画しているのに、こちらに弱みが出来てしまってはこまふのだ。
だが、ローザも友人とそのいとこからお金を取るのは気が引けるのだろう。まして、発案者は自分だ。これでは宣伝行為と思われてしまっても仕方がない。だがまぁ、割引程度なら許されるだろう。
「ありがとうございます。ローザさん。ありがたく受け取らせていただきますわ。」
ローザはアリシアの言葉に、それはそれはほっとしたような表情で微笑んでいたのだった。
最初に口火を切ったのはローザだった。
先程の彼女の話から考えると、その時にはアリシアにそこまでは必要ないのではないかと断られたに違いない。その時はひきさがったのだろうが、きっと納得していなかったに違いない。
だからこそ、ルーカスが味方に着いてくれると分かった今、もういちどその話を蒸し返してみることにしたのだろう。
そして、その判断は正しかった。
今、アリシアにはルーカスの調査に協力すると言ってしまった現実がある。映像記録を残せるなら、ルーカスは、アリシア自身が口で伝えるよりもずっと正確な調査が出来るだろう。
彼女の中に断るという選択肢は、既に消えてしまっていたのだ。
「それが一番良いような気がしますわ。……もしよろしければ、ルーカス様が映像器具を起動して頂けないでしょうか?きっと私たちがするよりもずっと信憑性のある強力な証拠となり得るでしょう。」
アリシアの前向きな返答にローザは一瞬目を丸くしたが、彼女の気が変わらないうちに急いで話を進めてしまう事に決めたようだ。
「ご存知かもしれませんが、私の実家は魔道具を多く取り扱っております。商品を提供させて頂きますのでお使いください。」
「……いいえ、対価はきちんと払うわ。そこまで貴女にさせる訳にはいかないもの。気持ちだけ頂くわね。」
「いえ、ですが……。」
「あぁ、アリシアの言う通りだ。それに、ちょっと今回は別件でもその記録を見させて頂きたい。だから、その気持ちは嬉しいが、きちんとお金は払わせて貰いたいんだ。」
「…………分かりました……。おふたりがそう仰るなら。でも、大量に購入して下さるのは大変助かります。ですから気持ち程度のお値下げはさせて頂きますね。……これくらいはお許しください。」
ローザをちょっとがっかりさせてしまったようだが、タダで提供させたとなると後々収賄及び贈賄として問題になっては困る。これから色々な事を計画しているのに、こちらに弱みが出来てしまってはこまふのだ。
だが、ローザも友人とそのいとこからお金を取るのは気が引けるのだろう。まして、発案者は自分だ。これでは宣伝行為と思われてしまっても仕方がない。だがまぁ、割引程度なら許されるだろう。
「ありがとうございます。ローザさん。ありがたく受け取らせていただきますわ。」
ローザはアリシアの言葉に、それはそれはほっとしたような表情で微笑んでいたのだった。
22
お気に入りに追加
1,395
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
残念ですが、その婚約破棄宣言は失敗です
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【婚約破棄宣言は、計画的に】
今夜は伯爵令息ブライアンと、同じく伯爵令嬢キャサリンの婚約お披露目パーティーだった。しかしブライアンが伴ってきた女性は、かねてより噂のあった子爵家令嬢だった。ブライアンはキャサリンに声高く婚約破棄宣言を突きつけたのだが、思わぬ事態に直面することになる――
* あっさり終わります
* 他サイトでも投稿中

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

この国では魔力を譲渡できる
ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」
無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。
五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?
カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。
フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる