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番外編1~プロポーズ編~
1話
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それは卒業式の後の事。揺れる馬車の中でアリシアは今日の事を振り返っていた。彼女は今回の騒動の説明の為、王宮へと向かっていた。
疲労や精神状態を考え、明日でも良いとの事ではあったが、国の筆頭公爵家の後継者の婚約が破談になり、更に王太子の婚約者が決まったのだ。この一大ニュースが明日には国中を駆け巡り、身動きが取れなくなる可能性が高いと考え、今日中に動く事にしたのだ。
パーティー会場から直接王宮に向かおうかと思っていたが、その場を鎮める必要があったことから国王及び公爵がその場に少しの間残るとの事であったので、その間に1度公爵家に寄る事にした。
本来なら王宮に参内する時には下品にならない程度に着飾る事が多いのだが、気を使った国王が公爵令嬢としてではなく、姪として、身内として王宮に来るようにと言ってくれた為、疲れ切っていたアリシアは、重くて華美な夜会用のドレスから、装飾品が少なくシンプルながらも美しく、幾らか楽なドレスに着替え、疲労した身体に鞭打って現在ここにいる。
王都にある公爵家の別邸から王宮まで近いというのがせめてもの救いだろうか。
王宮に到着し、出迎えてくれたルーカスにエスコートされつつ通された客間には国王と王妃、そして公爵と公爵夫人が揃っていた。ルーカスの顔が少し赤らんで見えたのは照れているのだろうか。
挨拶と遅くなったことへの謝罪をしようとするも、私的な場であると止められてしまった。
室内のテーブルには人数分のお茶が用意してあった。空席に座り、使用人がアリシアの分のお茶を入れて退出するのを見届けると、ぽつぽつと話が始まった。
どうやらあらかたルーカスが説明したらしく、話題の中心は今日の出来事ではなく、これからの流れについての確認になるようだった。
「まずはあの後の話からだな。……流石に色々な事がありすぎて広まるとまずい事も多々あるからな……今日の事は箝口令を敷いた。」
国王が口を開いた。確かにあの場所にいた人々から話が漏れると混乱に陥る可能性がある。
咄嗟にした判断は妥当なものだろう。
「それから、兵士に連れて行かせた女だが……あまりに激しく抵抗するから薬を打って大人しくさせたまま地下牢に入れておいた。」
「……え、地下牢ですか……?貴人用の牢ではなく……?」
普通、貴族が犯罪を犯した場合は裁判が終わるまで貴人用の牢に入れられる。そこは牢と言うほど殺伐とした場所ではなく、そこそこ豪華な一室である。
置かれている家具や提供される食事も高級な物が多く、下手すると貧乏貴族などは普段より豪華な生活になることもある。流石に逃走することを防ぐ為に窓には鉄格子がつき、扉の外には見張りが24時間ついているが、不便といえばそのくらいだろう。
メアリーも男爵令嬢とはいえ貴族ではあるのでそちらに入れられると思っていたのだが……。
疲労や精神状態を考え、明日でも良いとの事ではあったが、国の筆頭公爵家の後継者の婚約が破談になり、更に王太子の婚約者が決まったのだ。この一大ニュースが明日には国中を駆け巡り、身動きが取れなくなる可能性が高いと考え、今日中に動く事にしたのだ。
パーティー会場から直接王宮に向かおうかと思っていたが、その場を鎮める必要があったことから国王及び公爵がその場に少しの間残るとの事であったので、その間に1度公爵家に寄る事にした。
本来なら王宮に参内する時には下品にならない程度に着飾る事が多いのだが、気を使った国王が公爵令嬢としてではなく、姪として、身内として王宮に来るようにと言ってくれた為、疲れ切っていたアリシアは、重くて華美な夜会用のドレスから、装飾品が少なくシンプルながらも美しく、幾らか楽なドレスに着替え、疲労した身体に鞭打って現在ここにいる。
王都にある公爵家の別邸から王宮まで近いというのがせめてもの救いだろうか。
王宮に到着し、出迎えてくれたルーカスにエスコートされつつ通された客間には国王と王妃、そして公爵と公爵夫人が揃っていた。ルーカスの顔が少し赤らんで見えたのは照れているのだろうか。
挨拶と遅くなったことへの謝罪をしようとするも、私的な場であると止められてしまった。
室内のテーブルには人数分のお茶が用意してあった。空席に座り、使用人がアリシアの分のお茶を入れて退出するのを見届けると、ぽつぽつと話が始まった。
どうやらあらかたルーカスが説明したらしく、話題の中心は今日の出来事ではなく、これからの流れについての確認になるようだった。
「まずはあの後の話からだな。……流石に色々な事がありすぎて広まるとまずい事も多々あるからな……今日の事は箝口令を敷いた。」
国王が口を開いた。確かにあの場所にいた人々から話が漏れると混乱に陥る可能性がある。
咄嗟にした判断は妥当なものだろう。
「それから、兵士に連れて行かせた女だが……あまりに激しく抵抗するから薬を打って大人しくさせたまま地下牢に入れておいた。」
「……え、地下牢ですか……?貴人用の牢ではなく……?」
普通、貴族が犯罪を犯した場合は裁判が終わるまで貴人用の牢に入れられる。そこは牢と言うほど殺伐とした場所ではなく、そこそこ豪華な一室である。
置かれている家具や提供される食事も高級な物が多く、下手すると貧乏貴族などは普段より豪華な生活になることもある。流石に逃走することを防ぐ為に窓には鉄格子がつき、扉の外には見張りが24時間ついているが、不便といえばそのくらいだろう。
メアリーも男爵令嬢とはいえ貴族ではあるのでそちらに入れられると思っていたのだが……。
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