【完結】悲劇のヒロインぶっているみたいですけれど、よく周りをご覧になって?

珊瑚

文字の大きさ
上 下
21 / 78
番外編1~プロポーズ編~

1話

しおりを挟む
それは卒業式の後の事。揺れる馬車の中でアリシアは今日の事を振り返っていた。彼女は今回の騒動の説明の為、王宮へと向かっていた。

疲労や精神状態を考え、明日でも良いとの事ではあったが、国の筆頭公爵家の後継者の婚約が破談になり、更に王太子の婚約者が決まったのだ。この一大ニュースが明日には国中を駆け巡り、身動きが取れなくなる可能性が高いと考え、今日中に動く事にしたのだ。

パーティー会場から直接王宮に向かおうかと思っていたが、その場を鎮める必要があったことから国王及び公爵がその場に少しの間残るとの事であったので、その間に1度公爵家に寄る事にした。

本来なら王宮に参内する時には下品にならない程度に着飾る事が多いのだが、気を使った国王が公爵令嬢としてではなく、姪として、身内として王宮に来るようにと言ってくれた為、疲れ切っていたアリシアは、重くて華美な夜会用のドレスから、装飾品が少なくシンプルながらも美しく、幾らか楽なドレスに着替え、疲労した身体に鞭打って現在ここにいる。
王都にある公爵家の別邸から王宮まで近いというのがせめてもの救いだろうか。

王宮に到着し、出迎えてくれたルーカスにエスコートされつつ通された客間には国王と王妃、そして公爵と公爵夫人が揃っていた。ルーカスの顔が少し赤らんで見えたのは照れているのだろうか。
挨拶と遅くなったことへの謝罪をしようとするも、私的な場であると止められてしまった。
室内のテーブルには人数分のお茶が用意してあった。空席に座り、使用人がアリシアの分のお茶を入れて退出するのを見届けると、ぽつぽつと話が始まった。
どうやらあらかたルーカスが説明したらしく、話題の中心は今日の出来事ではなく、これからの流れについての確認になるようだった。


「まずはあの後の話からだな。……流石に色々な事がありすぎて広まるとまずい事も多々あるからな……今日の事は箝口令を敷いた。」

国王が口を開いた。確かにあの場所にいた人々から話が漏れると混乱に陥る可能性がある。
咄嗟にした判断は妥当なものだろう。


「それから、兵士に連れて行かせた女だが……あまりに激しく抵抗するから薬を打って大人しくさせたまま地下牢に入れておいた。」
「……え、地下牢ですか……?貴人用の牢ではなく……?」

普通、貴族が犯罪を犯した場合は裁判が終わるまで貴人用の牢に入れられる。そこは牢と言うほど殺伐とした場所ではなく、そこそこ豪華な一室である。
置かれている家具や提供される食事も高級な物が多く、下手すると貧乏貴族などは普段より豪華な生活になることもある。流石に逃走することを防ぐ為に窓には鉄格子がつき、扉の外には見張りが24時間ついているが、不便といえばそのくらいだろう。

メアリーも男爵令嬢とはいえ貴族ではあるのでそちらに入れられると思っていたのだが……。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

この国では魔力を譲渡できる

ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」  無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。  五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

残念ですが、その婚約破棄宣言は失敗です

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【婚約破棄宣言は、計画的に】 今夜は伯爵令息ブライアンと、同じく伯爵令嬢キャサリンの婚約お披露目パーティーだった。しかしブライアンが伴ってきた女性は、かねてより噂のあった子爵家令嬢だった。ブライアンはキャサリンに声高く婚約破棄宣言を突きつけたのだが、思わぬ事態に直面することになる―― * あっさり終わります * 他サイトでも投稿中

【完結】妹に婚約者を奪われた傷あり令嬢は、化け物伯爵と幸せを掴む

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢リューディアは侯爵家次男アルヴィと婚約が決まり友人に祝福されていた。親同士が決めたとはいえ、美しく人気のあるアルヴィとの婚約はリューディアにとっても嬉しいことだった。 しかし腹違いの妹カイヤはそれを妬み、母親と共謀してリューディアの顔に傷をつけた。赤く醜い跡が残り、口元も歪んでしまったリューディア。婚約は解消され、新たにカイヤと結び直された。 もう私の人生は終わったと、部屋に閉じこもっていたリューディア。その時、化け物のように醜い容姿の辺境伯から縁談が持ちかけられる。このままカイヤたちと一緒に暮らすぐらいならと、その縁談を受けることにした。 見合い当日、辺境伯は大きな傷があるリューディアに驚くが、お互いの利害が一致したことで二人は結婚を決意する。 顔と心に大きな傷を負ったヒロインが、優しいヒーローに溺愛されて癒されていくお話です。 ※傷やあざの描写があります。苦手な方はご遠慮ください。 ※溺愛タグは初めてなので、上手く表現できていないかもしれません。ゆるっと見守ってください。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?

カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。 フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

処理中です...