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本編
⑱《完結》
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祝砲が鳴り、楽しげな音楽と美味しい料理の香りが国中に広がっている。
今日はルーカスとアリシアの長子である王子の10回目の誕生日であった。彼は現在、次期王太子として勉学に励んでいる。
2つ下の彼の弟王子はツェローラ公爵家を継ぐべく、日々母の生家に通い、次期当主として祖父に教えを乞うていた。
2人の兄に可愛がられて育ったさらに3つ下の長女は兄ふたりを見習い、齢5つながらなかなかに強かに成長している。将来彼女に泣かされる子息達の様子が目に浮かぶようだ。
そんな平和な王太子一家の元に、本日は意外な人物が訪れていた。
「お久しぶりです、王太子殿下、王太子妃殿下。本日は面会を許可頂きありがとうございます。」
客間に通されたのはオリバーだった。
あの騒動の後、メアリーは処刑され、ポーラ男爵家の人間は爵位を剥奪の上鉱山へ鉱夫として送られた。これは国法と照らし合わせ、裁判で決定した事であった。
彼らは一生そこから出てくる事は叶わないだろう。
一方、オリバーは翌日両親と共に公爵家へ謝罪に訪れた。マーシャル侯爵夫妻は賠償を完済した後爵位を返上し、平民として暮らすと申し出たが、それは公爵が止めたのだ。
確かに元金として投資をしたのは事実だが、それを元に成功し、財産を増やす事に成功したのはひとえに彼らの才能と努力の結果だ。国として失うにはあまりにも惜しい存在だったのだ。
その為、投資は打ち切らず、その代わり侯爵家は今までの1.5倍の金額を公爵家へと納めることになった。
対して、オリバーの決意は強固であった。
女ひとりに騙され、まんまと信じ込んで踊らされた自分は貴族社会でやって行ける自信はないとの事だ。その為、平民として働き、慰謝料は両親ではなく、自分で返済するとの事であった。
その後、無一文で家を出たオリバーは持ち前の素直さと努力、そしてマーシャル侯爵家特有の商才によってのし上がり、立ち上げた商会は国内随一の大商会として成功を納めたのだった。
そこで、改めて現王太子夫妻へ謝罪と報告、そして感謝の意を伝えに来たのだった。
「本当に久しぶりですね。噂は王宮内まで届いていますよ。」
「今の私があるのはあの時寛大な処置をして頂いたお陰です。本当に、何と感謝を伝えれば良いのか……。」
「いやはや……。失礼だが、君が本当に慰謝料を完済するとは思わなかったよ。評価を改めなくてはね。」
正直な所、アリシアとルーカスは実際に慰謝料が満額支払われる事は期待していなかった。
これまで貴族の子息として勉強に励み、働く事など夢にも思わなかった筈の彼が平民と共にやって行けるとは思っていなかったのだ。
「それで……本日は、慰謝料の最後の分と、……これを。もしも、もしもご都合がつけばですが、お越しくださると嬉しいです。」
渡されたのは、彼の結婚式の招待状だった。
どうやら、商会を立ち上げた当初から共に働いていた女性との結婚が決まったようだ。
アリシアは、女性不信になっていたオリバーが回復出来たようで微笑ましく思った。
「ええ。勿論参加させて頂くわ。おめでとう。」
まさか祝福されるとは思ってもいなかった彼はその言葉に驚いて目を丸くした。その後、花が綻ぶように笑った彼の目には涙が浮かんでいたのだった。
今日はルーカスとアリシアの長子である王子の10回目の誕生日であった。彼は現在、次期王太子として勉学に励んでいる。
2つ下の彼の弟王子はツェローラ公爵家を継ぐべく、日々母の生家に通い、次期当主として祖父に教えを乞うていた。
2人の兄に可愛がられて育ったさらに3つ下の長女は兄ふたりを見習い、齢5つながらなかなかに強かに成長している。将来彼女に泣かされる子息達の様子が目に浮かぶようだ。
そんな平和な王太子一家の元に、本日は意外な人物が訪れていた。
「お久しぶりです、王太子殿下、王太子妃殿下。本日は面会を許可頂きありがとうございます。」
客間に通されたのはオリバーだった。
あの騒動の後、メアリーは処刑され、ポーラ男爵家の人間は爵位を剥奪の上鉱山へ鉱夫として送られた。これは国法と照らし合わせ、裁判で決定した事であった。
彼らは一生そこから出てくる事は叶わないだろう。
一方、オリバーは翌日両親と共に公爵家へ謝罪に訪れた。マーシャル侯爵夫妻は賠償を完済した後爵位を返上し、平民として暮らすと申し出たが、それは公爵が止めたのだ。
確かに元金として投資をしたのは事実だが、それを元に成功し、財産を増やす事に成功したのはひとえに彼らの才能と努力の結果だ。国として失うにはあまりにも惜しい存在だったのだ。
その為、投資は打ち切らず、その代わり侯爵家は今までの1.5倍の金額を公爵家へと納めることになった。
対して、オリバーの決意は強固であった。
女ひとりに騙され、まんまと信じ込んで踊らされた自分は貴族社会でやって行ける自信はないとの事だ。その為、平民として働き、慰謝料は両親ではなく、自分で返済するとの事であった。
その後、無一文で家を出たオリバーは持ち前の素直さと努力、そしてマーシャル侯爵家特有の商才によってのし上がり、立ち上げた商会は国内随一の大商会として成功を納めたのだった。
そこで、改めて現王太子夫妻へ謝罪と報告、そして感謝の意を伝えに来たのだった。
「本当に久しぶりですね。噂は王宮内まで届いていますよ。」
「今の私があるのはあの時寛大な処置をして頂いたお陰です。本当に、何と感謝を伝えれば良いのか……。」
「いやはや……。失礼だが、君が本当に慰謝料を完済するとは思わなかったよ。評価を改めなくてはね。」
正直な所、アリシアとルーカスは実際に慰謝料が満額支払われる事は期待していなかった。
これまで貴族の子息として勉強に励み、働く事など夢にも思わなかった筈の彼が平民と共にやって行けるとは思っていなかったのだ。
「それで……本日は、慰謝料の最後の分と、……これを。もしも、もしもご都合がつけばですが、お越しくださると嬉しいです。」
渡されたのは、彼の結婚式の招待状だった。
どうやら、商会を立ち上げた当初から共に働いていた女性との結婚が決まったようだ。
アリシアは、女性不信になっていたオリバーが回復出来たようで微笑ましく思った。
「ええ。勿論参加させて頂くわ。おめでとう。」
まさか祝福されるとは思ってもいなかった彼はその言葉に驚いて目を丸くした。その後、花が綻ぶように笑った彼の目には涙が浮かんでいたのだった。
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