18 / 78
本編
⑱《完結》
しおりを挟む
祝砲が鳴り、楽しげな音楽と美味しい料理の香りが国中に広がっている。
今日はルーカスとアリシアの長子である王子の10回目の誕生日であった。彼は現在、次期王太子として勉学に励んでいる。
2つ下の彼の弟王子はツェローラ公爵家を継ぐべく、日々母の生家に通い、次期当主として祖父に教えを乞うていた。
2人の兄に可愛がられて育ったさらに3つ下の長女は兄ふたりを見習い、齢5つながらなかなかに強かに成長している。将来彼女に泣かされる子息達の様子が目に浮かぶようだ。
そんな平和な王太子一家の元に、本日は意外な人物が訪れていた。
「お久しぶりです、王太子殿下、王太子妃殿下。本日は面会を許可頂きありがとうございます。」
客間に通されたのはオリバーだった。
あの騒動の後、メアリーは処刑され、ポーラ男爵家の人間は爵位を剥奪の上鉱山へ鉱夫として送られた。これは国法と照らし合わせ、裁判で決定した事であった。
彼らは一生そこから出てくる事は叶わないだろう。
一方、オリバーは翌日両親と共に公爵家へ謝罪に訪れた。マーシャル侯爵夫妻は賠償を完済した後爵位を返上し、平民として暮らすと申し出たが、それは公爵が止めたのだ。
確かに元金として投資をしたのは事実だが、それを元に成功し、財産を増やす事に成功したのはひとえに彼らの才能と努力の結果だ。国として失うにはあまりにも惜しい存在だったのだ。
その為、投資は打ち切らず、その代わり侯爵家は今までの1.5倍の金額を公爵家へと納めることになった。
対して、オリバーの決意は強固であった。
女ひとりに騙され、まんまと信じ込んで踊らされた自分は貴族社会でやって行ける自信はないとの事だ。その為、平民として働き、慰謝料は両親ではなく、自分で返済するとの事であった。
その後、無一文で家を出たオリバーは持ち前の素直さと努力、そしてマーシャル侯爵家特有の商才によってのし上がり、立ち上げた商会は国内随一の大商会として成功を納めたのだった。
そこで、改めて現王太子夫妻へ謝罪と報告、そして感謝の意を伝えに来たのだった。
「本当に久しぶりですね。噂は王宮内まで届いていますよ。」
「今の私があるのはあの時寛大な処置をして頂いたお陰です。本当に、何と感謝を伝えれば良いのか……。」
「いやはや……。失礼だが、君が本当に慰謝料を完済するとは思わなかったよ。評価を改めなくてはね。」
正直な所、アリシアとルーカスは実際に慰謝料が満額支払われる事は期待していなかった。
これまで貴族の子息として勉強に励み、働く事など夢にも思わなかった筈の彼が平民と共にやって行けるとは思っていなかったのだ。
「それで……本日は、慰謝料の最後の分と、……これを。もしも、もしもご都合がつけばですが、お越しくださると嬉しいです。」
渡されたのは、彼の結婚式の招待状だった。
どうやら、商会を立ち上げた当初から共に働いていた女性との結婚が決まったようだ。
アリシアは、女性不信になっていたオリバーが回復出来たようで微笑ましく思った。
「ええ。勿論参加させて頂くわ。おめでとう。」
まさか祝福されるとは思ってもいなかった彼はその言葉に驚いて目を丸くした。その後、花が綻ぶように笑った彼の目には涙が浮かんでいたのだった。
今日はルーカスとアリシアの長子である王子の10回目の誕生日であった。彼は現在、次期王太子として勉学に励んでいる。
2つ下の彼の弟王子はツェローラ公爵家を継ぐべく、日々母の生家に通い、次期当主として祖父に教えを乞うていた。
2人の兄に可愛がられて育ったさらに3つ下の長女は兄ふたりを見習い、齢5つながらなかなかに強かに成長している。将来彼女に泣かされる子息達の様子が目に浮かぶようだ。
そんな平和な王太子一家の元に、本日は意外な人物が訪れていた。
「お久しぶりです、王太子殿下、王太子妃殿下。本日は面会を許可頂きありがとうございます。」
客間に通されたのはオリバーだった。
あの騒動の後、メアリーは処刑され、ポーラ男爵家の人間は爵位を剥奪の上鉱山へ鉱夫として送られた。これは国法と照らし合わせ、裁判で決定した事であった。
彼らは一生そこから出てくる事は叶わないだろう。
一方、オリバーは翌日両親と共に公爵家へ謝罪に訪れた。マーシャル侯爵夫妻は賠償を完済した後爵位を返上し、平民として暮らすと申し出たが、それは公爵が止めたのだ。
確かに元金として投資をしたのは事実だが、それを元に成功し、財産を増やす事に成功したのはひとえに彼らの才能と努力の結果だ。国として失うにはあまりにも惜しい存在だったのだ。
その為、投資は打ち切らず、その代わり侯爵家は今までの1.5倍の金額を公爵家へと納めることになった。
対して、オリバーの決意は強固であった。
女ひとりに騙され、まんまと信じ込んで踊らされた自分は貴族社会でやって行ける自信はないとの事だ。その為、平民として働き、慰謝料は両親ではなく、自分で返済するとの事であった。
その後、無一文で家を出たオリバーは持ち前の素直さと努力、そしてマーシャル侯爵家特有の商才によってのし上がり、立ち上げた商会は国内随一の大商会として成功を納めたのだった。
そこで、改めて現王太子夫妻へ謝罪と報告、そして感謝の意を伝えに来たのだった。
「本当に久しぶりですね。噂は王宮内まで届いていますよ。」
「今の私があるのはあの時寛大な処置をして頂いたお陰です。本当に、何と感謝を伝えれば良いのか……。」
「いやはや……。失礼だが、君が本当に慰謝料を完済するとは思わなかったよ。評価を改めなくてはね。」
正直な所、アリシアとルーカスは実際に慰謝料が満額支払われる事は期待していなかった。
これまで貴族の子息として勉強に励み、働く事など夢にも思わなかった筈の彼が平民と共にやって行けるとは思っていなかったのだ。
「それで……本日は、慰謝料の最後の分と、……これを。もしも、もしもご都合がつけばですが、お越しくださると嬉しいです。」
渡されたのは、彼の結婚式の招待状だった。
どうやら、商会を立ち上げた当初から共に働いていた女性との結婚が決まったようだ。
アリシアは、女性不信になっていたオリバーが回復出来たようで微笑ましく思った。
「ええ。勿論参加させて頂くわ。おめでとう。」
まさか祝福されるとは思ってもいなかった彼はその言葉に驚いて目を丸くした。その後、花が綻ぶように笑った彼の目には涙が浮かんでいたのだった。
105
お気に入りに追加
1,395
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
残念ですが、その婚約破棄宣言は失敗です
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【婚約破棄宣言は、計画的に】
今夜は伯爵令息ブライアンと、同じく伯爵令嬢キャサリンの婚約お披露目パーティーだった。しかしブライアンが伴ってきた女性は、かねてより噂のあった子爵家令嬢だった。ブライアンはキャサリンに声高く婚約破棄宣言を突きつけたのだが、思わぬ事態に直面することになる――
* あっさり終わります
* 他サイトでも投稿中

この国では魔力を譲渡できる
ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」
無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。
五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?
カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。
フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる