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本編
⑩
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少しの間2人をじっと見詰めた後、アリシアが合図を出すと、数人の使用人がホール内に入ってきた。それぞれが大小様々な物を運んでくる。それらを2人の前に並べさせるとオリバーの方へ向き直り、おもむろに口を開いた。
「ここにある物に見覚えは?」
「…………何故それを貴女が…………」
オリバーは驚愕そのものといった様子で固まっている。それも当然だろう。目の前に並べられたのは、彼がメアリーに贈ったはずのものだったのだから。
「これを私がどこで見つけたと思います?…………分かるはずないですわよね。街の質屋ですわ。」
「……は……?」
「彼女は、貴方に貢がせたものを売り払っていたのですよ。彼女の持ち物が破壊された時、貴方は彼女に元々の持ち物よりも高い物を贈っていたのでしょう?それに味を占めた彼女が次々と貴方から物を巻き上げ、換金して行ったのです。」
淡々と述べられていく事実にオリバーはただ呆然とする他ない。初めはただ同情と、……そしてほんの少しの見栄だった。明らかに立場が上である自分が施してやる――そんなほんの少しの奢り。その後少しずつ少しずつ、物が壊されたと落ち込む様子の彼女を見掛ける頻度が上がって行った。
「嘘よ!そんな事してないわ!今着てるドレスだって、このネックレスだったってオリバー様から貰ったのよ!全部大切に持ってるわ!ねぇ、信じて……?」
メアリーは慌ててオリバーの腕をとって抱え込み、自分の胸に押し当て、上目遣いで潤んだ瞳を向ける。
先程から都合が悪くなった時の行動がワンパターンである。今まではオリバーがこれで丸め込まれていた様が容易に想像できる。
とはいえ、オリバーは最早彼女への信頼を無くしているに等しい。よくよく考えてみると、確かに最初の頃は壊れた物自体を実際に見ていた。しかし、何時からだろうか、彼女の言葉を鵜呑みにして、確認する事も無くなっていたのだ。
目の前に並べられている物を見ればどちらを信じれば良いのか一目瞭然だろう。量産品ならまだしも、装飾品の中にはオーダーメイドの物もあるのだから。
顔色が青を通り越して白くなってきたオリバーを尻目に、今度はメアリーに向き合う。
「ポーラ男爵令嬢。先程仰ったドレスを汚された、というのは丁度1ヶ月前の出来事で合っていて?」
アリシアには、心当たりと言えなくもない出来事が頭に思い浮かんだのだった。
「ここにある物に見覚えは?」
「…………何故それを貴女が…………」
オリバーは驚愕そのものといった様子で固まっている。それも当然だろう。目の前に並べられたのは、彼がメアリーに贈ったはずのものだったのだから。
「これを私がどこで見つけたと思います?…………分かるはずないですわよね。街の質屋ですわ。」
「……は……?」
「彼女は、貴方に貢がせたものを売り払っていたのですよ。彼女の持ち物が破壊された時、貴方は彼女に元々の持ち物よりも高い物を贈っていたのでしょう?それに味を占めた彼女が次々と貴方から物を巻き上げ、換金して行ったのです。」
淡々と述べられていく事実にオリバーはただ呆然とする他ない。初めはただ同情と、……そしてほんの少しの見栄だった。明らかに立場が上である自分が施してやる――そんなほんの少しの奢り。その後少しずつ少しずつ、物が壊されたと落ち込む様子の彼女を見掛ける頻度が上がって行った。
「嘘よ!そんな事してないわ!今着てるドレスだって、このネックレスだったってオリバー様から貰ったのよ!全部大切に持ってるわ!ねぇ、信じて……?」
メアリーは慌ててオリバーの腕をとって抱え込み、自分の胸に押し当て、上目遣いで潤んだ瞳を向ける。
先程から都合が悪くなった時の行動がワンパターンである。今まではオリバーがこれで丸め込まれていた様が容易に想像できる。
とはいえ、オリバーは最早彼女への信頼を無くしているに等しい。よくよく考えてみると、確かに最初の頃は壊れた物自体を実際に見ていた。しかし、何時からだろうか、彼女の言葉を鵜呑みにして、確認する事も無くなっていたのだ。
目の前に並べられている物を見ればどちらを信じれば良いのか一目瞭然だろう。量産品ならまだしも、装飾品の中にはオーダーメイドの物もあるのだから。
顔色が青を通り越して白くなってきたオリバーを尻目に、今度はメアリーに向き合う。
「ポーラ男爵令嬢。先程仰ったドレスを汚された、というのは丁度1ヶ月前の出来事で合っていて?」
アリシアには、心当たりと言えなくもない出来事が頭に思い浮かんだのだった。
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