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本編
⑥
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「そんなはず無いだろう!あんなにも他の女と関わるなだの距離が近いだのなんだの言ってきて……嫉妬してたからじゃないのか!?」
「何を馬鹿げた事を……貴族の婚約と言うものは家同士の契約です。同様に、私達の婚約はツェローラ公爵家とマーシャル侯爵家の契約。信頼関係ありきのものです。それにもかかわらず私を蔑ろにして他の女性と遊び歩いているなんて注意するのは当然でしょう?」
そこに恋愛感情など関係ない。貴族に生まれたからには愛し愛される幸せな結構など夢のまた夢。何よりも優先すべきは家への利益なのだから。
「だが、僕がメアリーにプレゼントをあげるのも嫌がっただろう?自分は貰えないからか?全く、がめつい女だな!それはどう説明するんだ!」
「がめつい……ですか。そもそも婚約者に贈り物1つ寄越さないで他の女性にプレゼントを渡す時点で非常識極まりないなですけれど。なにも友人に一度や二度ちょっとした贈り物をするだけなら何も言いませんよ。ですが、あなたのそれは流石に度を過ぎています。装飾品や宝石、靴、バッグ、それにドレス。そう、ドレス。それはどういうおつもりで贈られたのかしら?」
男性が女性にドレスを贈るという行為には特別な意味がある。基本は恋人、もしくは婚約者にしか贈ることはない。なぜならそれは、そのドレスを着て次のパーティーではパートナーとして出席して欲しいという意味なのだから。
「僕の金なのだからどう使おうと僕の勝手だろう!」
「そうでは無いから言っているのです。」
「たかが婚約者の分際で僕の行動全てに口出しをしてくるな!全く可愛げがない……少しはメアリーを見習ったらどうだ!?」
「まぁ!オリバー様ったら♡」
真っ赤な顔でフーッ、フーッと肩で息をするオリバーとそんな彼に自分の寄せて上げたなけなしの胸を押し付けるメアリー。それに鼻の下を伸ばすオリバー。
そんな2人を尻目に、ふうっ、と一つ溜息をつくと、アリシアはまた口を開く。
「使い道についての問題点は先程申し上げましたわ。では大元のその『自分の金』はどこから出ているとお思いで?」
「?……そんなの両親からに決まっているだろう。」
「ええ。そうですわね。ですが彼女に贈った贈り物は貴方のお小遣いの額を遥かに超えているはずです。」
「……何が言いたい……!?」
「貴方、私への贈り物を買うお金と称してご両親に請求なさっていますね。」
「!?なっ、何でその事を……!」
「月に一度のお茶会。本来ならば貴方と私で行うはずのものですわ。貴方は最近その日に出歩くことが多くなったから知らなくても当然ですわね。貴方が欠席された日は代わりに貴方のご両親のどちらか、または両方が私の相手をして下さいますから。」
たまたまある日のお茶会の時、その話になったのだ。最近息子から贈り物の為のお金をよく無心されると。だが、息子の贈ったはずのものをアリシアが付けてくることは無い。そこで、気に入らなかったのかと心配して遠回しにだが聞いてきたのだ。
そこで今回のお金の流れの問題が発覚したのだった。
アリシアはついと視線をずらし、オリバーの後ろに向ける。
「ねぇ、そうですわよね、マーシャル侯爵、侯爵夫人。」
オリバーが慌てて後ろを振り返ると、そこには真っ赤な顔で怒りを抑えている侯爵と真っ青な顔で口元を抑え、今にも崩れ落ちてしまいそうになっている侯爵夫人が立っていた。
「何を馬鹿げた事を……貴族の婚約と言うものは家同士の契約です。同様に、私達の婚約はツェローラ公爵家とマーシャル侯爵家の契約。信頼関係ありきのものです。それにもかかわらず私を蔑ろにして他の女性と遊び歩いているなんて注意するのは当然でしょう?」
そこに恋愛感情など関係ない。貴族に生まれたからには愛し愛される幸せな結構など夢のまた夢。何よりも優先すべきは家への利益なのだから。
「だが、僕がメアリーにプレゼントをあげるのも嫌がっただろう?自分は貰えないからか?全く、がめつい女だな!それはどう説明するんだ!」
「がめつい……ですか。そもそも婚約者に贈り物1つ寄越さないで他の女性にプレゼントを渡す時点で非常識極まりないなですけれど。なにも友人に一度や二度ちょっとした贈り物をするだけなら何も言いませんよ。ですが、あなたのそれは流石に度を過ぎています。装飾品や宝石、靴、バッグ、それにドレス。そう、ドレス。それはどういうおつもりで贈られたのかしら?」
男性が女性にドレスを贈るという行為には特別な意味がある。基本は恋人、もしくは婚約者にしか贈ることはない。なぜならそれは、そのドレスを着て次のパーティーではパートナーとして出席して欲しいという意味なのだから。
「僕の金なのだからどう使おうと僕の勝手だろう!」
「そうでは無いから言っているのです。」
「たかが婚約者の分際で僕の行動全てに口出しをしてくるな!全く可愛げがない……少しはメアリーを見習ったらどうだ!?」
「まぁ!オリバー様ったら♡」
真っ赤な顔でフーッ、フーッと肩で息をするオリバーとそんな彼に自分の寄せて上げたなけなしの胸を押し付けるメアリー。それに鼻の下を伸ばすオリバー。
そんな2人を尻目に、ふうっ、と一つ溜息をつくと、アリシアはまた口を開く。
「使い道についての問題点は先程申し上げましたわ。では大元のその『自分の金』はどこから出ているとお思いで?」
「?……そんなの両親からに決まっているだろう。」
「ええ。そうですわね。ですが彼女に贈った贈り物は貴方のお小遣いの額を遥かに超えているはずです。」
「……何が言いたい……!?」
「貴方、私への贈り物を買うお金と称してご両親に請求なさっていますね。」
「!?なっ、何でその事を……!」
「月に一度のお茶会。本来ならば貴方と私で行うはずのものですわ。貴方は最近その日に出歩くことが多くなったから知らなくても当然ですわね。貴方が欠席された日は代わりに貴方のご両親のどちらか、または両方が私の相手をして下さいますから。」
たまたまある日のお茶会の時、その話になったのだ。最近息子から贈り物の為のお金をよく無心されると。だが、息子の贈ったはずのものをアリシアが付けてくることは無い。そこで、気に入らなかったのかと心配して遠回しにだが聞いてきたのだ。
そこで今回のお金の流れの問題が発覚したのだった。
アリシアはついと視線をずらし、オリバーの後ろに向ける。
「ねぇ、そうですわよね、マーシャル侯爵、侯爵夫人。」
オリバーが慌てて後ろを振り返ると、そこには真っ赤な顔で怒りを抑えている侯爵と真っ青な顔で口元を抑え、今にも崩れ落ちてしまいそうになっている侯爵夫人が立っていた。
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