20 / 32
20
しおりを挟む
20
「共犯者が居たと言いたいのか……?」
「いいえ。共犯ではありません。ですが、全ての隠蔽に協力した人間はいるはずです。」
アイリーンはそう言うと、小さく一息ついて、その後を続けた。
「殿下、先程私に『侯爵家に未練はあるか』とお聞きになりましたわね?…………ある訳が無いですわ!私を陥れようとしたクラリスも、彼女に加担して貴方の婚約者を力技ですげ替えた上、さっさと手のひらを返した父にも!何も考えずにただただヘラヘラして笑って誤魔化して、面倒な事は隠して誤魔化して人に押し付けようとしてる母にも!!私が侯爵令嬢としての責任を取ると言ったのは、それでも私に希望を持って侯爵領に居続けてくれる領民の為だけですわ……!!」
彼女の表情はどんどん曇って行き、今にも泣き出さんばかりだ。
「私が何とかしないと彼らの生活が苦しくなってしまいます……!両親やクラリスより私の方が身分を持ってないと彼らの豪遊を止めることが出来ませんわ!!侯爵家と共に私も堕ちてしまえば彼らの生活を守ることも出来ません!」
「ふむ。確かに君の言う通りだと僕も思う。領民にはなんの罪も無いからな。……ならば君が守ってやれば良い。」
「侯爵家と共に堕ちれば私の力は平民以下ですわ。借金を返すために死にものぐるいで働きに出ねばならない私が彼らに出来ることなど無いのが分からない殿下では無いでしょう……!?」
「ふふ……確かにそうだな。」
ギルバートは堪えきれないというように不敵な笑みを零した。アイリーンには彼が大事なところをわざとひた隠しにして勿体ぶっているように映っているだろう。だが、ギルバートとて何も彼女をイラつかせる為に確認をした訳では無い。でもこれは必要な事だった。
彼が提案したかったのは、彼女の心が侯爵家から完全に離れていることを確認しなければ実行し得ないものだったのだから。
激情を理性で何とか抑え込んでいるようなアイリーンに、彼が出来うる最高の笑顔を向ける。
「これは君への提案なんだが。」
「共犯者が居たと言いたいのか……?」
「いいえ。共犯ではありません。ですが、全ての隠蔽に協力した人間はいるはずです。」
アイリーンはそう言うと、小さく一息ついて、その後を続けた。
「殿下、先程私に『侯爵家に未練はあるか』とお聞きになりましたわね?…………ある訳が無いですわ!私を陥れようとしたクラリスも、彼女に加担して貴方の婚約者を力技ですげ替えた上、さっさと手のひらを返した父にも!何も考えずにただただヘラヘラして笑って誤魔化して、面倒な事は隠して誤魔化して人に押し付けようとしてる母にも!!私が侯爵令嬢としての責任を取ると言ったのは、それでも私に希望を持って侯爵領に居続けてくれる領民の為だけですわ……!!」
彼女の表情はどんどん曇って行き、今にも泣き出さんばかりだ。
「私が何とかしないと彼らの生活が苦しくなってしまいます……!両親やクラリスより私の方が身分を持ってないと彼らの豪遊を止めることが出来ませんわ!!侯爵家と共に私も堕ちてしまえば彼らの生活を守ることも出来ません!」
「ふむ。確かに君の言う通りだと僕も思う。領民にはなんの罪も無いからな。……ならば君が守ってやれば良い。」
「侯爵家と共に堕ちれば私の力は平民以下ですわ。借金を返すために死にものぐるいで働きに出ねばならない私が彼らに出来ることなど無いのが分からない殿下では無いでしょう……!?」
「ふふ……確かにそうだな。」
ギルバートは堪えきれないというように不敵な笑みを零した。アイリーンには彼が大事なところをわざとひた隠しにして勿体ぶっているように映っているだろう。だが、ギルバートとて何も彼女をイラつかせる為に確認をした訳では無い。でもこれは必要な事だった。
彼が提案したかったのは、彼女の心が侯爵家から完全に離れていることを確認しなければ実行し得ないものだったのだから。
激情を理性で何とか抑え込んでいるようなアイリーンに、彼が出来うる最高の笑顔を向ける。
「これは君への提案なんだが。」
29
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説
「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた
今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。
二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。
ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。
その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。
が、彼女の前に再びアレクが現れる。
どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…
転生令嬢だと打ち明けたら、婚約破棄されました。なので復讐しようと思います。
柚木ゆず
恋愛
前世の記憶と膨大な魔力を持つサーシャ・ミラノは、ある日婚約者である王太子ハルク・ニースに、全てを打ち明ける。
だが――。サーシャを待っていたのは、婚約破棄を始めとした手酷い裏切り。サーシャが持つ力を恐れたハルクは、サーシャから全てを奪って投獄してしまう。
信用していたのに……。
酷い……。
許せない……!。
サーシャの復讐が、今幕を開ける――。
【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。
西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。
路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。
実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく―――
※※
皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。
本当にありがとうございました。
ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな、と婚約破棄されそうな私は、馬オタクな隣国第二王子の溺愛対象らしいです。
弓はあと
恋愛
「たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな」婚約者から投げられた言葉。
浮気を許す事ができない心の狭い私とは婚約破棄だという。
婚約破棄を受け入れたいけれど、それを親に伝えたらきっと「この役立たず」と罵られ家を追い出されてしまう。
そんな私に手を差し伸べてくれたのは、皆から馬オタクで残念な美丈夫と噂されている隣国の第二王子だった――
※物語の後半は視点変更が多いです。
※浮気の表現があるので、念のためR15にしています。詳細な描写はありません。
※短めのお話です。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません、ご注意ください。
※設定ゆるめ、ご都合主義です。鉄道やオタクの歴史等は現実と異なっています。
初夜開始早々夫からスライディング土下座されたのはこの私です―侯爵子息夫人は夫の恋の相談役―
望月 或
恋愛
本日、サオシューア侯爵子息のグラッド様と結婚した私……リファレラは、『初夜』の現在、彼のスライディング土下座を受けております。
「済まない、僕は君を愛することは出来ない!!」
話を聞くと、婚姻式の数日前に『初恋の人』と付き合い始めたとか。えぇ、これはもう完璧な“浮気”ですわね。
更に旦那様は、妻の私に「彼女との相談に乗ってくれないか」とお願いしてきて……。
旦那様……相談のお相手、思いっ切り間違っていませんか?
※基本は主人公の一人称ですが、三人称の文章にはタイトルの横に「◇」が付いています。
※全体的にコメディで設定がゆるめなので、ゆるい気持ちでお読み下さいませ。少しでもクスリとして頂けたら至高の幸せです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる