3 / 32
3
しおりを挟む
3
「滞り……なく……?」
両親から聞かされたアイリーンは、呆然とそう呟くことしかできなかった。
婚約式とは、主に貴族、それも高位貴族や王族間の婚約を世間に知らせる目的で行われる、結婚式の簡略版のようなものである。貴族、特に高位貴族は縁談が多く上がるぶん、他の貴族からの妨害も多くなる。その牽制の意味もこめて周知させることで邪魔を入れないために行うのが婚約式であり、婚約式が終わった後は基本的にそれを撤回することが叶わなくなる。特に王族の婚約式に際しては、近隣の王族が出席することもあるため、そうそう簡単に開くことも撤回することも、破棄することもできなくなるのだ。これは特に王族と繋がりを求める家門が多く、幼い頃から決められた婚約者は社交界で嫌がらせにあったり爪弾きにされたり、中には直接危害を与えようとする者も多くいたため、同時に彼ら・彼女らを守るための仕組みでもあるのだ。
つまり何が言いたいかというと。
アイリーンの婚約者だったはずのギルバートは、妹に奪われてしまい、もう取り戻すことが不可能である、と言うことだ。
それだけはどうしても我慢できなかった。
次の瞬間には思わず言葉がアイリーンの口をついて出てしまっていた。
「どうしてそんなことを勝手に……!!!」
「どうしたのよアイリーン?せっかくあなたの代わりにクラリスが婚約してくれたんじゃないのよ。」
「でも本来なら……!」
「五月蝿いぞアイリーン!!我が家の大事な時期を台無しに仕掛けたのは誰だと思っているんだ!?お前にそんな口を出す権利があるとでも思っているのか!!!」
そう吐き捨てると侯爵は荒々しく部屋を出ていってしまった。
「そうよアイリーン……。あなたの失敗をクラリスが取り戻してくれたんだから感謝しなきゃ。」
侯爵夫人は終始ヘラヘラと笑いながらそういうと、侯爵に続いてアイリーンの自室を後にした。
アイリーンはただ信じられない気持ちで絶望する他残された道はなかった。
「滞り……なく……?」
両親から聞かされたアイリーンは、呆然とそう呟くことしかできなかった。
婚約式とは、主に貴族、それも高位貴族や王族間の婚約を世間に知らせる目的で行われる、結婚式の簡略版のようなものである。貴族、特に高位貴族は縁談が多く上がるぶん、他の貴族からの妨害も多くなる。その牽制の意味もこめて周知させることで邪魔を入れないために行うのが婚約式であり、婚約式が終わった後は基本的にそれを撤回することが叶わなくなる。特に王族の婚約式に際しては、近隣の王族が出席することもあるため、そうそう簡単に開くことも撤回することも、破棄することもできなくなるのだ。これは特に王族と繋がりを求める家門が多く、幼い頃から決められた婚約者は社交界で嫌がらせにあったり爪弾きにされたり、中には直接危害を与えようとする者も多くいたため、同時に彼ら・彼女らを守るための仕組みでもあるのだ。
つまり何が言いたいかというと。
アイリーンの婚約者だったはずのギルバートは、妹に奪われてしまい、もう取り戻すことが不可能である、と言うことだ。
それだけはどうしても我慢できなかった。
次の瞬間には思わず言葉がアイリーンの口をついて出てしまっていた。
「どうしてそんなことを勝手に……!!!」
「どうしたのよアイリーン?せっかくあなたの代わりにクラリスが婚約してくれたんじゃないのよ。」
「でも本来なら……!」
「五月蝿いぞアイリーン!!我が家の大事な時期を台無しに仕掛けたのは誰だと思っているんだ!?お前にそんな口を出す権利があるとでも思っているのか!!!」
そう吐き捨てると侯爵は荒々しく部屋を出ていってしまった。
「そうよアイリーン……。あなたの失敗をクラリスが取り戻してくれたんだから感謝しなきゃ。」
侯爵夫人は終始ヘラヘラと笑いながらそういうと、侯爵に続いてアイリーンの自室を後にした。
アイリーンはただ信じられない気持ちで絶望する他残された道はなかった。
23
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説
「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた
今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。
二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。
ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。
その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。
が、彼女の前に再びアレクが現れる。
どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…
転生令嬢だと打ち明けたら、婚約破棄されました。なので復讐しようと思います。
柚木ゆず
恋愛
前世の記憶と膨大な魔力を持つサーシャ・ミラノは、ある日婚約者である王太子ハルク・ニースに、全てを打ち明ける。
だが――。サーシャを待っていたのは、婚約破棄を始めとした手酷い裏切り。サーシャが持つ力を恐れたハルクは、サーシャから全てを奪って投獄してしまう。
信用していたのに……。
酷い……。
許せない……!。
サーシャの復讐が、今幕を開ける――。
【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。
西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。
路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。
実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく―――
※※
皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。
本当にありがとうございました。
たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな、と婚約破棄されそうな私は、馬オタクな隣国第二王子の溺愛対象らしいです。
弓はあと
恋愛
「たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな」婚約者から投げられた言葉。
浮気を許す事ができない心の狭い私とは婚約破棄だという。
婚約破棄を受け入れたいけれど、それを親に伝えたらきっと「この役立たず」と罵られ家を追い出されてしまう。
そんな私に手を差し伸べてくれたのは、皆から馬オタクで残念な美丈夫と噂されている隣国の第二王子だった――
※物語の後半は視点変更が多いです。
※浮気の表現があるので、念のためR15にしています。詳細な描写はありません。
※短めのお話です。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません、ご注意ください。
※設定ゆるめ、ご都合主義です。鉄道やオタクの歴史等は現実と異なっています。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。
悪役令嬢のお姉様が、今日追放されます。ざまぁ――え? 追放されるのは、あたし?
柚木ゆず
恋愛
猫かぶり姉さんの悪事がバレて、ついに追放されることになりました。
これでやっと――え。レビン王太子が姉さんを気に入って、あたしに罪を擦り付けた!?
突然、追放される羽目になったあたし。だけどその時、仮面をつけた男の人が颯爽と助けてくれたの。
優しく助けてくれた、素敵な人。この方は、一体誰なんだろう――え。
仮面の人は……。恋をしちゃった相手は、あたしが苦手なユリオス先輩!?
※4月17日 本編完結いたしました。明日より、番外編を数話投稿いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる