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8話

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龍は、月の光を集めたような見事な黄金色の瞳で辺りを見渡した。
その王者然とした静謐な佇まいに周囲の刻が止まったかのような錯覚に陥る。
ゆったりとした緩慢な動きで首をもたげると、輝く琥珀が目の前の少女をみとめた。

「やっと騒がしい奴らが帰ったと思ったらまた来たのか?…………いや、違うな。この気配は、随分と久しぶりだ。」

夜を思わせるような静かな声で語りかけてくる。
空気を震わせず、脳内に、直接。


「…………ああなたは私に普通に声をかけてくれるのね……。」

幼子とは思えぬ、歳不相応な寂しさと諦念を滲ませた声に龍は軽く目を見張る。


「お前はさっきここに来た少女の双子の姉だろう?さっきの子は周りからとても愛されているように見えた。……少なくとも、表面上は。お前もそうじゃないのか?」
「……ルチアは、みんなから認められた『聖女』だから……。」
「お前だってそうだろう?」

龍の言葉に、セレナは伏せられた睫毛をふるり……と揺らす。
顔を上げようとしたが思い直したのか、頑なに龍の方を見ようとはしない。


「私は気味悪いんだって。不吉な王女って言われてるもの……。」
「ふむ………………。ではお前に問おう。お前はわたしのことを気味が悪いと、……恐ろしいと思うか?」

セレナは、そんな龍の言葉に弾かれたように顔を上げる。


「そんなこと……っ!……っあ……。」

視線を上げた先で美しく輝く琥珀とかち合う。
その眼光に射抜かれて我に返った彼女はぱっと後ろを向いて顔を隠す。


「どうした?……やっぱりわたしが恐ろしいのか。」
「ち、違うわ!あなたはとても綺麗だもの。…………私とは大違い。」

その巨躯を心なしか縮ませて何処かしゅん……とした龍を前に慌てて取り繕った。
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