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6話
しおりを挟むセレナが本に夢中になっていた間、ルチアは着々と聖女としての立場を強めていた。毎日神殿でのお勤めを果たし、周囲からも褒め称えられていた。セレナも神殿に行きたがったのだが、「神殿は聖女さまのみが入れるのです」と一蹴されてしまった。
セレナも聖女であるのだから立場としてはルチアと同等、むしろ第一王女なのだから妹のルチアより上な筈なのだが、イングステン王国は第二王女・ルチアのみを『聖女』と認め、セレナを徹底的に不要な者として扱った。
ルチアには、家庭教師が複数人つき、国内で一番の教育を受けさせられた。
それは、二人の兄でありイングステン王国王太子であるクリストファーと同等の扱いであった。
しかし、不要な王女とされたセレナには一人の教師も付かず、放置された。
暇を持て余して図書館に通い詰めたことが結果として功を奏したのだ。
だが、幼いセレナは当然ながら何故自分だけが嫌われるのかが全く理解出来なかった。
双子なのに、両親からも兄からも使用人や臣下たちからも愛される妹と対照的な自分。
セレナはどうしてもルチアが羨ましかったのだった。
だから、偶然ルチアが神殿だけでなく、国境付近の森の泉でも歴代聖女よりも頻繁に祈りを捧げていると聞いて自分も行きたくて仕方がなくなった。
国境付近の森の泉には神獣がいる。
何度も図書館の本で読んだ内容だ。
もしかするとそこに行けば神獣に会えるかもしれないのだ。
このセレナの考えは当たらずとも遠からずで、ルチアが頻繁に泉に行っていたのは、対面の儀の折り、神獣が自ら姿を現したからだ。
再び神獣と会って、あわよくば都合よく神獣を使えないかと言った狙いがあった。
セレナはそこまで考えていた訳では無かったが、ルチアの行く先に単に興味があった。
抜け出した所でどうせ誰も気が付かない。
だって、誰も自分に興味がないのだから。
場所は分かる。何度も本で読んだから。
そう考えたセレナは王宮を抜け出し、自力で国境付近の森まで行く事にしたのだった。
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