1 / 13
1
しおりを挟む
1
豪奢なシャンデリアの真下、煌びやかなホールのど真ん中にて、そこだけ周囲とは明らかに異質な空気が流れていた。
「ローズマリー!お前との婚約を破棄する!言われずとも理由は分かっておろうな!」
濁った赤い瞳が青年の正面に立つ少女を射抜いた。
声の主の隣に立っていた小柄な少女が彼に身体を擦り寄せると、彼のどこか焦点の合わない瞳が爛々と輝く。
その様子を見ていた少女は満足気にその上気したような濃い薄紅色の瞳を細める。そうして隣に立つ青年の腕を取ると、目の前に立つ少女を真っ直ぐに見据えて得意気にその顔を歪めた。彼女の胸元には、青年の瞳の色を思わせるような、大粒の真っ赤なルビーが輝いていた。
そんな視線を真正面から向けられた少女はと言うと、その涼やかな勿忘草色の瞳を溢れんばかりに見開き、自分を睨みつける青年をもう一度視認すると、寂しげにその目を伏せた。
本来ならば彼は自分と共にこのパーティーに出席するはずだったのだ。だが、自分のパートナーとしてこの場にいるはずだった青年は今、他の少女をそばに置いている。
青年は、自分の発した言葉に見せた、自身の婚約者である――あった少女の様子に一瞬戸惑ったかのように見えたが、具体的な動きを見せるよりも、彼の隣の少女が動くほうが早かった。
あっという間にうっすらと瞳を潤ませると、青年の袖を軽く引って顔を引き寄せると、真正面から見つめる。そんな彼女の瞳に釘付けとなった彼の隙をついて押さえめな、だがしかし、ホールにしっかりと響き渡るほどの声量で口を開く。
「まぁクロード様…………。そんなにお責めにならないで…………?ローズマリー様がお可哀想ですもの…………。」
青年に身を擦り寄せながらか細い声でおずおずと進言するその様子は、誰がどう見ても完璧に、恋敵にも心を砕く心優しく儚げな少女。
ローズマリーに向けた瞳が愉悦に輝いているなどと一体誰が想像できよう。
豪奢なシャンデリアの真下、煌びやかなホールのど真ん中にて、そこだけ周囲とは明らかに異質な空気が流れていた。
「ローズマリー!お前との婚約を破棄する!言われずとも理由は分かっておろうな!」
濁った赤い瞳が青年の正面に立つ少女を射抜いた。
声の主の隣に立っていた小柄な少女が彼に身体を擦り寄せると、彼のどこか焦点の合わない瞳が爛々と輝く。
その様子を見ていた少女は満足気にその上気したような濃い薄紅色の瞳を細める。そうして隣に立つ青年の腕を取ると、目の前に立つ少女を真っ直ぐに見据えて得意気にその顔を歪めた。彼女の胸元には、青年の瞳の色を思わせるような、大粒の真っ赤なルビーが輝いていた。
そんな視線を真正面から向けられた少女はと言うと、その涼やかな勿忘草色の瞳を溢れんばかりに見開き、自分を睨みつける青年をもう一度視認すると、寂しげにその目を伏せた。
本来ならば彼は自分と共にこのパーティーに出席するはずだったのだ。だが、自分のパートナーとしてこの場にいるはずだった青年は今、他の少女をそばに置いている。
青年は、自分の発した言葉に見せた、自身の婚約者である――あった少女の様子に一瞬戸惑ったかのように見えたが、具体的な動きを見せるよりも、彼の隣の少女が動くほうが早かった。
あっという間にうっすらと瞳を潤ませると、青年の袖を軽く引って顔を引き寄せると、真正面から見つめる。そんな彼女の瞳に釘付けとなった彼の隙をついて押さえめな、だがしかし、ホールにしっかりと響き渡るほどの声量で口を開く。
「まぁクロード様…………。そんなにお責めにならないで…………?ローズマリー様がお可哀想ですもの…………。」
青年に身を擦り寄せながらか細い声でおずおずと進言するその様子は、誰がどう見ても完璧に、恋敵にも心を砕く心優しく儚げな少女。
ローズマリーに向けた瞳が愉悦に輝いているなどと一体誰が想像できよう。
21
お気に入りに追加
207
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は、あの日にかえりたい
桃千あかり
恋愛
婚約破棄され、冤罪により断頭台へ乗せられた侯爵令嬢シルヴィアーナ。死を目前に、彼女は願う。「あの日にかえりたい」と。
■別名で小説家になろうへ投稿しています。
■恋愛色は薄め。失恋+家族愛。胸糞やメリバが平気な読者様向け。
■逆行転生の悪役令嬢もの。ざまぁ亜種。厳密にはざまぁじゃないです。王国全体に地獄を見せたりする系統の話ではありません。
■覚悟完了済みシルヴィアーナ様のハイスピード解決法は、ひとによっては本当に胸糞なので、苦手な方は読まないでください。苛烈なざまぁが平気な読者様だと、わりとスッとするらしいです。メリバ好きだと、モヤり具合がナイスっぽいです。
■悪役令嬢の逆行転生テンプレを使用した、オチがすべてのイロモノ短編につき、設定はゆるゆるですし続きません。文章外の出来事については、各自のご想像にお任せします。
※表紙イラストはフリーアイコンをお借りしました。
■あままつ様(https://ama-mt.tumblr.com/about)
悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。
しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。
次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。
破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。
とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
三月叶姫
恋愛
私はこの世界から嫌われている。
みんな、私が死ぬ事を望んでいる――。
とある悪役令嬢は、婚約者の王太子から婚約破棄を宣言された後、聖女暗殺未遂の罪で処刑された。だが、彼女は一年前に時を遡り、目を覚ました。
同じ時を繰り返し始めた彼女の結末はいつも同じ。
それでも、彼女は最期の瞬間は必ず笑顔を貫き通した。
十回目となった処刑台の上で、ついに貼り付けていた笑顔の仮面が剥がれ落ちる。
涙を流し、助けを求める彼女に向けて、誰かが彼女の名前を呼んだ。
今、私の名前を呼んだのは、誰だったの?
※こちらの作品は他サイトにも掲載しております
悪役令嬢は、いつでも婚約破棄を受け付けている。
ao_narou
恋愛
自身の愛する婚約者――ソレイル・ディ・ア・ユースリアと平民の美少女ナナリーの密会を知ってしまった悪役令嬢――エリザベス・ディ・カディアスは、自身の思いに蓋をしてソレイルのため「わたくしはいつでも、あなたからの婚約破棄をお受けいたしますわ」と言葉にする。
その度に困惑を隠せないソレイルはエリザベスの真意に気付くのか……また、ナナリーとの浮気の真相は……。
ちょっとだけ変わった悪役令嬢の恋物語です。
とある令嬢の婚約破棄
あみにあ
恋愛
とある街で、王子と令嬢が出会いある約束を交わしました。
彼女と王子は仲睦まじく過ごしていましたが・・・
学園に通う事になると、王子は彼女をほって他の女にかかりきりになってしまいました。
その女はなんと彼女の妹でした。
これはそんな彼女が婚約破棄から幸せになるお話です。
転生した悪役令嬢はシナリオ通りに王子に婚約破棄されることを望む
双葉葵
恋愛
悪役令嬢メリッサ・ローランドは、卒業式のパーティで断罪され追放されることを望んでいる。
幼い頃から見てきた王子が此方を見てくれないということは“運命”であり決して変えられない“シナリオ”通りである。
定刻を過ぎても予定通り迎えに来ない王子に一人でパーティに参加して、訪れる断罪の時を待っていたけれど。険しい顔をして現れた婚約者の様子が何やら変で困惑する。【こんなの“シナリオ”になかったわ】
【隣にいるはずの“ローズ”(ヒロイン)はどこなの?】
*以前、『小説家になろう』であげていたものの再掲になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる