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豪奢なシャンデリアの真下、煌びやかなホールのど真ん中にて、そこだけ周囲とは明らかに異質な空気が流れていた。


「ローズマリー!お前との婚約を破棄する!言われずとも理由は分かっておろうな!」

濁った赤い瞳が青年の正面に立つ少女を射抜いた。
声の主の隣に立っていた小柄な少女が彼に身体を擦り寄せると、彼のどこか焦点の合わない瞳が爛々と輝く。
その様子を見ていた少女は満足気にその上気したような濃い薄紅色の瞳を細める。そうして隣に立つ青年の腕を取ると、目の前に立つ少女を真っ直ぐに見据えて得意気にその顔を歪めた。彼女の胸元には、青年の瞳の色を思わせるような、大粒の真っ赤なルビーが輝いていた。

そんな視線を真正面から向けられた少女はと言うと、その涼やかな勿忘草色の瞳を溢れんばかりに見開き、自分を睨みつける青年をもう一度視認すると、寂しげにその目を伏せた。

本来ならば彼は自分と共にこのパーティーに出席するはずだったのだ。だが、自分のパートナーとしてこの場にいるはずだった青年は今、他の少女をそばに置いている。

青年は、自分の発した言葉に見せた、自身の婚約者である――あった少女の様子に一瞬戸惑ったかのように見えたが、具体的な動きを見せるよりも、彼の隣の少女が動くほうが早かった。
あっという間にうっすらと瞳を潤ませると、青年の袖を軽く引って顔を引き寄せると、真正面から見つめる。そんな彼女の瞳に釘付けとなった彼の隙をついて押さえめな、だがしかし、ホールにしっかりと響き渡るほどの声量で口を開く。


「まぁクロード様…………。そんなにお責めにならないで…………?ローズマリー様がお可哀想ですもの…………。」

青年に身を擦り寄せながらか細い声でおずおずと進言するその様子は、誰がどう見ても完璧に、恋敵にも心を砕く心優しく儚げな少女。
ローズマリーに向けた瞳が愉悦に輝いているなどと一体誰が想像できよう。
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