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18 サミュエルの過去
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13歳で入ったグリフィス校は俺以外ほとんど貴族か貴族に連なる者で、長男連中は入学の時点で婚約者がいた。
まだ婚約していない次男三男連中にとって一番の関心事はセバスティアーノ=ストウ家の令嬢が誰と婚約するか、ということだった。
美しい令嬢に爵位まで付いてくるとなれば、次男三男連中には喉から手が出る好条件の令嬢だろう。
セバスティアーノ=ストウ家はグリフィス校の創設者に名を連ねる名門貴族で在校生か卒業生の中から婚約者を選ぶと噂されていた。何人か有力な候補がいたが、彼らの令嬢への熱の入れようはすさまじかった。
ジェレミー・カーターもその1人だった。彼は親兄弟がイースタン校出身なのにセバスティアーノ=ストウ家の婚約者に名乗りをあげるため、進学直前にグリフィス校に進路変更したという猛者だった。
俺が知るだけで校内には何人かの婚約者候補が居て、彼らは学園でも互いに牽制しあっていた。入学当初はまだマシだったが、入学から3年目を越えたあたりか彼らは互いに悪態をつき、いざこざを起こすようになっていた。
俺は4年目に寮の監督生となった。監督生はいざこざを治めなくてはならない。婚約者候補同士のいざこざを何度か治めるうち、見たこともないスーザン・セバスティアーノ=ストウ令嬢に対して悪印象を抱くようになった。
何故、早く婚約者を確定させないのかと。
最終学年も終わりかけだった春にスーザン嬢のデビュタントのエスコートにジェレミーが選ばれという知らせを受けた時はものすごい騒ぎになった。
手紙を受け取った時、ジェレミーは寮で雄叫びをあげ、既に夜で寮外への外出禁止の時間だったというのに校内を走り回ってアピールした。
自分が選ばれたんだと。
彼のスーザン嬢への恋心は身近で見ていて痛いほど実感していたし、俺にとっては婚約者候補の中では一番親しかったので純粋に彼の思いが報われて良かったと心から思った。
ジェレミーはスーザンを通してのいざこざが無ければ、俺の代わりに寮監になっていただろうと思う。
頭も良く、剣術も優秀で、人望もあった。それになにより、前首相の孫だ。
俺が寮監になれたのは彼が恋に愚かだったおかげだった。
そして、デビュタントでジェレミーにスーザンを紹介された時、俺は長い間スーザンの噂を聞いていたからスーザンがサマンサだ、などとは思いもしなかった。
そして、俺はスーザンの憂いを帯びた瞳に見つめられただけで動けなくなった。
これが何人もの男を虜にし、ジェレミーを腑抜けにした女性なのだと、まるでファムファタールのような女だと思った。俺は心を強く持たないと俺も彼らと同じ穴の貉になると自分に言い聞かせることに必死だった。
スーザンは婚約が不服だとジェレミーを完全に蔑ろにする態度を取っていたが、それがまた俺の心に仄暗い影を落とした。
スーザンのご機嫌を懸命に取るジェレミーを見ているとどんどんこの感情が大きくなっていって、ついスーザンにはつっけんどんな態度を取ってしまった。
この頃から俺はかつての恋人だったサマンサを見つけるように尽力した。俺にとって数年も会っていなかったサマンサのことは良い思い出になっていて、今更、もう一度恋人にとかそんなことは思っていなかった。
スーザンと出会って何故か無性にサマンサにもう一度会いたいと思った。ハロー商会の手に掛かればすぐに見つかるだろうと思っていたがなかなか見つからず、つい躍起になって探すようになるうちに、サマンサのことを再び好ましく思うようになっていた。
ジェレミーとスーザンの結婚式には友人として参加した。スーザンが何かを諦めたような顔をしていたのが印象的だった。そしてこの時もまた俺の心には仄暗い影が落ちた。
ジェレミーが戦死し、父からセバスティアーノ=ストウ家の元侯爵令嬢と婚姻の話を聞いた時、断るつもりはさらさらなかった。俺はスーザンのことが嫌いだから嫌がらせをしてやろうと考えた。友を蔑ろにして許せないから彼女を不幸にするために結婚するのだと。
だから、結婚した後も白い結婚だったし、あまり自分から話しかけることはなく、話しかけられるとすぐに話題を切るようにしていた。
結婚してしばらくして、サマンサにかつてもらった刺繍と同じ図案のハンカチを持っているレディサマンサを見つけた時、俺はついにサマンサを見つけたと思った。
しかし、彼女は大臣の愛人で俺が手を出しても良い人ではなかった。
レディサマンサにも大臣にも不思議と何の感情も起こらなかった。昔からサマンサのことを妹のようにも思っていたから、恋愛感情よりそちらの感情が大きくなったのだろうと1人で納得した。
レディサマンサが大臣と別れた後、彼女を支援することになんの躊躇もなかった。彼女はかつての恋人ではあるが妹のようなものなのだから。
スーザンが彼女に嫉妬のような態度を取ると聞いて俺は彼女に怒った。
そして、サマンサが出て行った時つい言いすぎたのだ。俺は自分がスーザンを嫌いだと思い込んでいたからスーザンが家を出ていって溜飲が下がる思いだった。
しかし、すぐにその思いは消えてしまった。
スーザンが居なくなってからどうも眠れない。サマンサが出ていった時の比ではないくらい俺は荒れた。
しかし愚かな俺はまだその原因をサマンサが出て行ったからだと思っていた。
秘書のミスターゲーブルからその原因はサマンサではなくスーザンが出て行ったからなのではないかと言われた時はめまいがした。
スーザンがこれまで俺のために心を砕いてくれていたと言うではないか。
俺はその時初めてスーザンが俺のことを憎からず思ってくれていたのではないかと思った。それで、もう一度やり直せないかとそう思ったんだ。
そこまで話してサミュエルは口を閉ざした。
そして考えた。
引き摺り込まれないように気を強く持たなければと思った時点でもう引きずれ込まれていたのだと未熟な俺は気付けなかった。
その考えに至った時、全てのピースがうまく当てはまったような気がした。
ジェレミーを蔑ろにするスーザンの態度を見て仄暗い感情が芽生えた。あれは親友の婚約者なのに自分にも可能性があるんじゃないかと期待してしまう事への自己嫌悪だ。
どんな令嬢との婚約も断ってきた俺が、迷うことなく彼女との結婚を決めたのも、結局は好きだったからだ。それを不幸にするためなどと自分に言い訳しているからややこしくなったのだ。
必要以上に彼女との接触を取らないようにしていたのは、ジェレミーのように蔑ろにされないように自己防衛本能が働いたからだろう。
本当はもうとっくの昔にサマンサなんてどうでも良かったんだ。でも、スーザンがサマンサに嫉妬してくれるようで、それはまるで自分のことを好きだと言ってくれるようで心地よかった。それを俺はサマンサへの恋心だと錯覚していたのだから俺はおめでたい。
スーザンが家から消えて体調不良になっても自分が彼女を愛していたことに気付けなかった。
社交界で俺たちが一緒に過ごさなくても悪評が流れなかったのはひとえにスーザンが努力してくれていたからだと思っていた。しかし、自分では気付かなかっただけで、俺の態度にももしかすると起因していたのかもしれない。
そういえばレディサマンサに、貴方は遠回りしていると言われたがもしかして彼女も俺の気持ちに気付いていたのだろうか。
まだ婚約していない次男三男連中にとって一番の関心事はセバスティアーノ=ストウ家の令嬢が誰と婚約するか、ということだった。
美しい令嬢に爵位まで付いてくるとなれば、次男三男連中には喉から手が出る好条件の令嬢だろう。
セバスティアーノ=ストウ家はグリフィス校の創設者に名を連ねる名門貴族で在校生か卒業生の中から婚約者を選ぶと噂されていた。何人か有力な候補がいたが、彼らの令嬢への熱の入れようはすさまじかった。
ジェレミー・カーターもその1人だった。彼は親兄弟がイースタン校出身なのにセバスティアーノ=ストウ家の婚約者に名乗りをあげるため、進学直前にグリフィス校に進路変更したという猛者だった。
俺が知るだけで校内には何人かの婚約者候補が居て、彼らは学園でも互いに牽制しあっていた。入学当初はまだマシだったが、入学から3年目を越えたあたりか彼らは互いに悪態をつき、いざこざを起こすようになっていた。
俺は4年目に寮の監督生となった。監督生はいざこざを治めなくてはならない。婚約者候補同士のいざこざを何度か治めるうち、見たこともないスーザン・セバスティアーノ=ストウ令嬢に対して悪印象を抱くようになった。
何故、早く婚約者を確定させないのかと。
最終学年も終わりかけだった春にスーザン嬢のデビュタントのエスコートにジェレミーが選ばれという知らせを受けた時はものすごい騒ぎになった。
手紙を受け取った時、ジェレミーは寮で雄叫びをあげ、既に夜で寮外への外出禁止の時間だったというのに校内を走り回ってアピールした。
自分が選ばれたんだと。
彼のスーザン嬢への恋心は身近で見ていて痛いほど実感していたし、俺にとっては婚約者候補の中では一番親しかったので純粋に彼の思いが報われて良かったと心から思った。
ジェレミーはスーザンを通してのいざこざが無ければ、俺の代わりに寮監になっていただろうと思う。
頭も良く、剣術も優秀で、人望もあった。それになにより、前首相の孫だ。
俺が寮監になれたのは彼が恋に愚かだったおかげだった。
そして、デビュタントでジェレミーにスーザンを紹介された時、俺は長い間スーザンの噂を聞いていたからスーザンがサマンサだ、などとは思いもしなかった。
そして、俺はスーザンの憂いを帯びた瞳に見つめられただけで動けなくなった。
これが何人もの男を虜にし、ジェレミーを腑抜けにした女性なのだと、まるでファムファタールのような女だと思った。俺は心を強く持たないと俺も彼らと同じ穴の貉になると自分に言い聞かせることに必死だった。
スーザンは婚約が不服だとジェレミーを完全に蔑ろにする態度を取っていたが、それがまた俺の心に仄暗い影を落とした。
スーザンのご機嫌を懸命に取るジェレミーを見ているとどんどんこの感情が大きくなっていって、ついスーザンにはつっけんどんな態度を取ってしまった。
この頃から俺はかつての恋人だったサマンサを見つけるように尽力した。俺にとって数年も会っていなかったサマンサのことは良い思い出になっていて、今更、もう一度恋人にとかそんなことは思っていなかった。
スーザンと出会って何故か無性にサマンサにもう一度会いたいと思った。ハロー商会の手に掛かればすぐに見つかるだろうと思っていたがなかなか見つからず、つい躍起になって探すようになるうちに、サマンサのことを再び好ましく思うようになっていた。
ジェレミーとスーザンの結婚式には友人として参加した。スーザンが何かを諦めたような顔をしていたのが印象的だった。そしてこの時もまた俺の心には仄暗い影が落ちた。
ジェレミーが戦死し、父からセバスティアーノ=ストウ家の元侯爵令嬢と婚姻の話を聞いた時、断るつもりはさらさらなかった。俺はスーザンのことが嫌いだから嫌がらせをしてやろうと考えた。友を蔑ろにして許せないから彼女を不幸にするために結婚するのだと。
だから、結婚した後も白い結婚だったし、あまり自分から話しかけることはなく、話しかけられるとすぐに話題を切るようにしていた。
結婚してしばらくして、サマンサにかつてもらった刺繍と同じ図案のハンカチを持っているレディサマンサを見つけた時、俺はついにサマンサを見つけたと思った。
しかし、彼女は大臣の愛人で俺が手を出しても良い人ではなかった。
レディサマンサにも大臣にも不思議と何の感情も起こらなかった。昔からサマンサのことを妹のようにも思っていたから、恋愛感情よりそちらの感情が大きくなったのだろうと1人で納得した。
レディサマンサが大臣と別れた後、彼女を支援することになんの躊躇もなかった。彼女はかつての恋人ではあるが妹のようなものなのだから。
スーザンが彼女に嫉妬のような態度を取ると聞いて俺は彼女に怒った。
そして、サマンサが出て行った時つい言いすぎたのだ。俺は自分がスーザンを嫌いだと思い込んでいたからスーザンが家を出ていって溜飲が下がる思いだった。
しかし、すぐにその思いは消えてしまった。
スーザンが居なくなってからどうも眠れない。サマンサが出ていった時の比ではないくらい俺は荒れた。
しかし愚かな俺はまだその原因をサマンサが出て行ったからだと思っていた。
秘書のミスターゲーブルからその原因はサマンサではなくスーザンが出て行ったからなのではないかと言われた時はめまいがした。
スーザンがこれまで俺のために心を砕いてくれていたと言うではないか。
俺はその時初めてスーザンが俺のことを憎からず思ってくれていたのではないかと思った。それで、もう一度やり直せないかとそう思ったんだ。
そこまで話してサミュエルは口を閉ざした。
そして考えた。
引き摺り込まれないように気を強く持たなければと思った時点でもう引きずれ込まれていたのだと未熟な俺は気付けなかった。
その考えに至った時、全てのピースがうまく当てはまったような気がした。
ジェレミーを蔑ろにするスーザンの態度を見て仄暗い感情が芽生えた。あれは親友の婚約者なのに自分にも可能性があるんじゃないかと期待してしまう事への自己嫌悪だ。
どんな令嬢との婚約も断ってきた俺が、迷うことなく彼女との結婚を決めたのも、結局は好きだったからだ。それを不幸にするためなどと自分に言い訳しているからややこしくなったのだ。
必要以上に彼女との接触を取らないようにしていたのは、ジェレミーのように蔑ろにされないように自己防衛本能が働いたからだろう。
本当はもうとっくの昔にサマンサなんてどうでも良かったんだ。でも、スーザンがサマンサに嫉妬してくれるようで、それはまるで自分のことを好きだと言ってくれるようで心地よかった。それを俺はサマンサへの恋心だと錯覚していたのだから俺はおめでたい。
スーザンが家から消えて体調不良になっても自分が彼女を愛していたことに気付けなかった。
社交界で俺たちが一緒に過ごさなくても悪評が流れなかったのはひとえにスーザンが努力してくれていたからだと思っていた。しかし、自分では気付かなかっただけで、俺の態度にももしかすると起因していたのかもしれない。
そういえばレディサマンサに、貴方は遠回りしていると言われたがもしかして彼女も俺の気持ちに気付いていたのだろうか。
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