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13 二度目の・・・
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レディサマンサとのすったもんだがありながら何とかシーズン最後の晩餐会(ファイナル)を迎え、王都での社交シーズンが終わりを告げた。
スーザンはサマンサをサミュエルの愛人として丁重に扱うよう使用人に言い聞かせた。
サマンサは、スーザンがサマンサのことを追い出す気はないとわかると意外なほど質素に暮らしはじめた。
彼女にとって贅沢は外からの攻撃から身を守るための鎧のようなもので案外、本来の彼女はあまり派手なのは好きでは無いのかもしれない。
サミュエルは相変わらず忙しそうでせっかく招き入れたサマンサともほとんどあっていないようだった。
ハロー商会の服飾部門は過去最高の売り上げを達成し、来シーズンに向けてのドレスの注文数も過去最高となった。
この一年ちょっとでスーザンが行ったことはドレスの宣伝だけではない。生産体制を整えるため最近開発されたソーイングミシンという物を大量に購入し、針子に代わってミシン職人を養成した。
これまでは針子がデザインを考え、布を裁断し縫製まで行っていたが、縫う部分をミシン職人に任せる事で多くのドレスを作れるようにしたのである。
今はその規模を大きくするための工場の立ち上げを行なっている。
そのため、この冬は目の回る日々を送っており、年末年始の行事もまともに取り行えなかった。
社交シーズンまで後一ヶ月という頃(貴族たちが領地から王都に戻り始める時期である)サミュエルはグリフィス校ボート部OBの集まりに顔を出した。毎年この時期に行われるボートのスクール対抗戦にグリフィス校が優勝し、OB会が開かれたのである。
サミュエルは前回グリフィス校が優勝した際のキャプテンだったということもあり、年配のOBからたらふく飲まされたらしい。その日は前後不覚になるくらい酔って帰ってきた。
レディサマンサは仕事ばかりのサミュエルに愛想を尽かしたのか、最近はどこかにふらっと出かけて帰って来ないことが増えていた。
そのことを知ってか知らずか、夜遅くにサミュエルはスーザンの部屋と繋がる内扉を使った。
その扉が開いたのはスーザンの記憶にある限り初めてのことである。
サミュエルは扉にもたれかかるとスーザンを見つめだした。
「どうされたのですか?」
スーザンが駆け寄るとサミュエルは上機嫌に言葉を放つ。
「今日、学友たちに再開して、君はグリフィス校でとても人気があったと言うことを思い出したのさ。」
そして、スーザンの手を掴むと腕を引っ張り、腰に手を回した。
「その憧れのマドンナが、平民の俺の奥様とはな、と思って」
「酔ってらっしゃるのですか?」
すると、サミュエルはクスクスと笑いながらこう言った。
「あぁ、俺は初めて君にあった時からずっと君に酔ってるみたいなもんだ」
そう言ってサミュエルはスーザンの唇にそっと口を落とした。
そして去年のミドルボアと同じようにスーザンは酔ったサミュエルに抱かれたのである。
スーザンがその異変に気付いたのは社交シーズンが始まってすぐのことである。
どうも胃がムカムカして仕事が手につかない。匂いに敏感になり、特にパンの匂いが苦手になった。
この変化はアレだとすぐに気が付いた。
スーザンはサマンサをサミュエルの愛人として丁重に扱うよう使用人に言い聞かせた。
サマンサは、スーザンがサマンサのことを追い出す気はないとわかると意外なほど質素に暮らしはじめた。
彼女にとって贅沢は外からの攻撃から身を守るための鎧のようなもので案外、本来の彼女はあまり派手なのは好きでは無いのかもしれない。
サミュエルは相変わらず忙しそうでせっかく招き入れたサマンサともほとんどあっていないようだった。
ハロー商会の服飾部門は過去最高の売り上げを達成し、来シーズンに向けてのドレスの注文数も過去最高となった。
この一年ちょっとでスーザンが行ったことはドレスの宣伝だけではない。生産体制を整えるため最近開発されたソーイングミシンという物を大量に購入し、針子に代わってミシン職人を養成した。
これまでは針子がデザインを考え、布を裁断し縫製まで行っていたが、縫う部分をミシン職人に任せる事で多くのドレスを作れるようにしたのである。
今はその規模を大きくするための工場の立ち上げを行なっている。
そのため、この冬は目の回る日々を送っており、年末年始の行事もまともに取り行えなかった。
社交シーズンまで後一ヶ月という頃(貴族たちが領地から王都に戻り始める時期である)サミュエルはグリフィス校ボート部OBの集まりに顔を出した。毎年この時期に行われるボートのスクール対抗戦にグリフィス校が優勝し、OB会が開かれたのである。
サミュエルは前回グリフィス校が優勝した際のキャプテンだったということもあり、年配のOBからたらふく飲まされたらしい。その日は前後不覚になるくらい酔って帰ってきた。
レディサマンサは仕事ばかりのサミュエルに愛想を尽かしたのか、最近はどこかにふらっと出かけて帰って来ないことが増えていた。
そのことを知ってか知らずか、夜遅くにサミュエルはスーザンの部屋と繋がる内扉を使った。
その扉が開いたのはスーザンの記憶にある限り初めてのことである。
サミュエルは扉にもたれかかるとスーザンを見つめだした。
「どうされたのですか?」
スーザンが駆け寄るとサミュエルは上機嫌に言葉を放つ。
「今日、学友たちに再開して、君はグリフィス校でとても人気があったと言うことを思い出したのさ。」
そして、スーザンの手を掴むと腕を引っ張り、腰に手を回した。
「その憧れのマドンナが、平民の俺の奥様とはな、と思って」
「酔ってらっしゃるのですか?」
すると、サミュエルはクスクスと笑いながらこう言った。
「あぁ、俺は初めて君にあった時からずっと君に酔ってるみたいなもんだ」
そう言ってサミュエルはスーザンの唇にそっと口を落とした。
そして去年のミドルボアと同じようにスーザンは酔ったサミュエルに抱かれたのである。
スーザンがその異変に気付いたのは社交シーズンが始まってすぐのことである。
どうも胃がムカムカして仕事が手につかない。匂いに敏感になり、特にパンの匂いが苦手になった。
この変化はアレだとすぐに気が付いた。
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