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11 招かれざる客
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スーザンたちが王都に戻ると本格的な冬が訪れた。冬の間、スーザンは服飾部門の責任者として毎日商会に顔を出した。
少しはサミュエルとの距離感が近付くかと思ったが、サミュエルは相変わらずそっけなかった。
春になると再び社交シーズンがやって来た。
スーザンは出来るだけたくさんの夜会に参加して、商会のドレスや宝石をアピールした。
元々、スーザンは顔が広くスタイルも良いので、広告塔として申し分なかった。
スーザンが夜会に参加するたびにスーザンが身につけたドレスの注文が相次いだ。
時に夜会にはサミュエルと参加した。人前では仲のいい夫妻を演じ、ダンスも踊った。
しかし行き来の馬車の中では一言も話をしなかった。
初めの頃は何度か話しかけたがその度に睨まれるのでスーザンから話しかけるのはすっかり諦めてしまった。
夫婦でなく、上司と部下だとしたってもう少し話をするものじゃないのかしら、そんな事を思ったがサミュエルはこの態度を変えるつもりはないらしかった。
服飾部門が元気であることがスーザンの心の糧だった。
真夏が来ると社交の場は避暑地へと移る。最近はもっぱらシープシャーで過ごす貴族が多い。
そのシープシャーではサミュエルの両親が隠居している。
スーザンはドレスの売り込みのためハロー家のシープシャーの屋敷でひと夏を過ごした。
シープシャーでの社交シーズンが終わり再び王都に戻って来た時、屋敷に異変を感じた。
エントランスの絨毯が張り替えられており、玄関に花が飾られたりしたのだ。
そして、その原因はすぐにわかった。
「あら、おかえりなさい。シープシャーはいかがでして?王都の夏は暑いわー」
そう言いながら階段から優雅に降りて来たのはレディサマンサだった。
スーザンは何も言えずに固まってしまった。
家令に
「これはどういうことかしら?」
と尋ねると、
「旦那様が・・・」
としか答えず明快な回答は得られなかった。
*
翌日、スーザンは商会に顔を出し、会長室に向かった。
「どういうことですの?」
そうスーザンが聞くとサミュエルは悪びれもせずに答えた。
「大臣がレディサマンサと別れたと。それで、俺が支援することにした。」
「そう。それは、ずっとですの?」
「そうだな。そのつもりだ。」
「その、旦那様はレディサマンサを、、、愛していらっしゃるのでしょうか?」
スーザンは思い切って聞いてみた。
サミュエルは
「そうだな。」
そう言ってサミュエルはわずかに微笑んだ。
結婚して以来初めて見る笑顔だった。
「左様でございますか。あの・・・いえ、何でもありませんわ」
きっとこの時のスーザンはひどい顔をしていたことだろう。サミュエルがスーザンにトコトン興味がなくてバレていないことが幸運だった。
少しはサミュエルとの距離感が近付くかと思ったが、サミュエルは相変わらずそっけなかった。
春になると再び社交シーズンがやって来た。
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元々、スーザンは顔が広くスタイルも良いので、広告塔として申し分なかった。
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時に夜会にはサミュエルと参加した。人前では仲のいい夫妻を演じ、ダンスも踊った。
しかし行き来の馬車の中では一言も話をしなかった。
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夫婦でなく、上司と部下だとしたってもう少し話をするものじゃないのかしら、そんな事を思ったがサミュエルはこの態度を変えるつもりはないらしかった。
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そして、その原因はすぐにわかった。
「あら、おかえりなさい。シープシャーはいかがでして?王都の夏は暑いわー」
そう言いながら階段から優雅に降りて来たのはレディサマンサだった。
スーザンは何も言えずに固まってしまった。
家令に
「これはどういうことかしら?」
と尋ねると、
「旦那様が・・・」
としか答えず明快な回答は得られなかった。
*
翌日、スーザンは商会に顔を出し、会長室に向かった。
「どういうことですの?」
そうスーザンが聞くとサミュエルは悪びれもせずに答えた。
「大臣がレディサマンサと別れたと。それで、俺が支援することにした。」
「そう。それは、ずっとですの?」
「そうだな。そのつもりだ。」
「その、旦那様はレディサマンサを、、、愛していらっしゃるのでしょうか?」
スーザンは思い切って聞いてみた。
サミュエルは
「そうだな。」
そう言ってサミュエルはわずかに微笑んだ。
結婚して以来初めて見る笑顔だった。
「左様でございますか。あの・・・いえ、何でもありませんわ」
きっとこの時のスーザンはひどい顔をしていたことだろう。サミュエルがスーザンにトコトン興味がなくてバレていないことが幸運だった。
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