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高校二年生の頃② side凛花
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遊園地から急に帰ったものだからいっちゃんとサクラには心配され、その日の夜にグループ通話が掛かってきた。
そのタイミングで凛花は色々とカミングアウトをした。
圭とは中学時代からの知り合いであること、その時から好きで告白したものの振られたこと、圭は自分の存在すら忘れているらしいこと。
「脈はないってわかってたけど、この前の遊園地は本当に楽しかったの。いい思い出ができたよ。」
努めて明るい声で言った。
少し沈黙してしまったが、夏休みの宿題の話を凛花から振って、話題を変えた。
9月に入って学校が始まった。初日は始業式で昼前に授業が終わった。同好会のために食堂でランチを取ろうと移動しているところで圭が腕を掴んできた。
「なぁ、ちょっと、話いい?」
そう言われて頷いた。
圭が凛花になんの用事があるのだろう。
一緒にランチを食べる約束をしていた友人に断って圭についていく。
サッカー部用のグラウンドの傍にある遊歩道のベンチに腰掛けた。
周りには誰もいなかった。
あたりはまだ蝉がうるさく鳴いていた。
圭は凛花から目を逸らして手の拳を握り締めると言った。
「あのさ、俺と付き合ってくれない?」
凛花は驚いて圭を見つめた。
圭の顔は真っ赤だった。
「遊園地でもさ最後に言おうと思ってたのに居なくなるから。」
凛花は信じられなくてポカンとしていた。
「何で俺の好みじゃないって思ったの?」
確かに遊園地で別れる前にそんなことを言った。
「だって、だって、」
凛花の目からは感極まって涙が流れてきた。
「圭は昔、私が告白した時、断ったじゃない。可愛い女の子が好みだって言って。」
凛花がそういうと圭が目を見開いて声を上げた。
「はぁ?いつ?」
「中三の夏」
「なんだよそれ?」
圭は本当にわかっていないようだった。
「北公園でシュート練習してた圭に二人で花火大会に行かないかって誘ったら『可愛い女の子が好きだからごめん』って言われた。」
凛花のセリフを聞いて圭は少し考えた後、弾かれたように席を立った。
「お前、八中のタカヤか?」
圭はまじまじと凛花の顔を見た。
「高谷凛花だよ。」
「嘘だろ。」
そう言って圭は自身の口を大きな手で押さえた。
「言われてみれば顔が、確かに。でも、俺、タカヤって男だと思ってた。だってみんなタカヤって呼んでたし」
「苗字だからね」
凛花の目からすでに涙は消え、それでもうるうるした目で笑いながら言った。
「一緒に居るダチも男だったじゃねーか」
圭は少し怒ったように言った。
「うちのバスケ部、試合以外は男女混合だったんだよ。確かに男の友達の方が多かったかもだけど。」
「なんだよ。早く言ってくれよ。俺がどれだけ悩んだと思うんだよ。」
そういうと圭は再び凛花の隣に腰を下ろした。
「悩んだの?」
「そうだよ!悩んだんだよ。俺、お前に告白されてからお前の事が気になって。自分は男が好きなのかなって思ったり。やっと好きになれるオンナが出来たと思ったら本人かよ!」
前屈みになり顔を押さえながら圭が言う。
凛花は先ほどからの圭のセリフが聞き捨てならない。
「私のこと男だと思ってたの?」
「そうだよ。あの頃、僕って言ってたし。」
確かに中学の時はボーイッシュだったため自分のことを私と言うのが恥ずかしくて僕と言ってたかもしれない。
ただ、言い訳させてもらうと凛花の中学ではそう言う女の子が何人かいて、凛花だけが特別と言うわけではなかった。
確かに初対面の人に男の子と間違えられることはたまにあったが、何度も話していると流石に気付くと思うのだが・・・
「じゃあ、中学の頃から好きだったの?」
「そうだよ。いや、気付いたのは告白されたあとだけど。あの頃のタカヤってさ、すげー負けず嫌いで闘志剥き出しなのにちょっとプレスしたらすぐ尻もちつくのが意外で。だけど、その時の恥ずかしそうな顔が可愛いなって。俺にくれるアドバイスも的確だしスリーオンで一緒のチームになった時に何も打ち合わせしてないのに速攻がバチッと決まるし、そういうの、良いなって。でも男だからダメだってずっと思ってた。」
言い終わる頃に圭はやっと凛花の顔を見た。
その顔を見て圭の言っている事が嘘やからかいではないとわかった。
「嘘みたい。すごく嬉しい。」
圭は目尻を下げたまま少し凛花を睨んだ。
「何で中学の頃からの知り合いだって言ってくれなかったの?」
「自分から?中三の時に告白して振られた高谷凛花です。って?そんなの言えないよ。忘れられてるのかと思ってたから。」
「告白してくれた子のこと忘れるわけないだろ。」
そう言うと圭が再び手を握ってきた。
夏だからか圭の手はとても熱かった。
「ずっと、圭のこと諦めなきゃって思ってた。だから本当に嬉しい。」
「俺も」
圭はそう言うと凛花の手を引っ張った。
凛花は圭の胸に倒れ込んだ。それを圭が受け止める。圭の胸の鼓動が隣家にも伝わってきたが、凛花も同じくらいドキドキしている。
しばらくそうしていたが、サッカー部が練習を開始し練習のホイッスルの音に気づいた圭が
「やばっ、俺も部活。」
と言った。
「連絡先!交換!」
そう言って慌てて二人は連絡先を交換した。
交換が終わると圭は「部活終わったら連絡する」と言って走っていった。
あっという間の出来事で凛花は夢でも見たのかと思ったが、携帯の中に記憶された圭の連絡先を見て、嘘ではなかったのだと、喜びを噛み締めた。
そのタイミングで凛花は色々とカミングアウトをした。
圭とは中学時代からの知り合いであること、その時から好きで告白したものの振られたこと、圭は自分の存在すら忘れているらしいこと。
「脈はないってわかってたけど、この前の遊園地は本当に楽しかったの。いい思い出ができたよ。」
努めて明るい声で言った。
少し沈黙してしまったが、夏休みの宿題の話を凛花から振って、話題を変えた。
9月に入って学校が始まった。初日は始業式で昼前に授業が終わった。同好会のために食堂でランチを取ろうと移動しているところで圭が腕を掴んできた。
「なぁ、ちょっと、話いい?」
そう言われて頷いた。
圭が凛花になんの用事があるのだろう。
一緒にランチを食べる約束をしていた友人に断って圭についていく。
サッカー部用のグラウンドの傍にある遊歩道のベンチに腰掛けた。
周りには誰もいなかった。
あたりはまだ蝉がうるさく鳴いていた。
圭は凛花から目を逸らして手の拳を握り締めると言った。
「あのさ、俺と付き合ってくれない?」
凛花は驚いて圭を見つめた。
圭の顔は真っ赤だった。
「遊園地でもさ最後に言おうと思ってたのに居なくなるから。」
凛花は信じられなくてポカンとしていた。
「何で俺の好みじゃないって思ったの?」
確かに遊園地で別れる前にそんなことを言った。
「だって、だって、」
凛花の目からは感極まって涙が流れてきた。
「圭は昔、私が告白した時、断ったじゃない。可愛い女の子が好みだって言って。」
凛花がそういうと圭が目を見開いて声を上げた。
「はぁ?いつ?」
「中三の夏」
「なんだよそれ?」
圭は本当にわかっていないようだった。
「北公園でシュート練習してた圭に二人で花火大会に行かないかって誘ったら『可愛い女の子が好きだからごめん』って言われた。」
凛花のセリフを聞いて圭は少し考えた後、弾かれたように席を立った。
「お前、八中のタカヤか?」
圭はまじまじと凛花の顔を見た。
「高谷凛花だよ。」
「嘘だろ。」
そう言って圭は自身の口を大きな手で押さえた。
「言われてみれば顔が、確かに。でも、俺、タカヤって男だと思ってた。だってみんなタカヤって呼んでたし」
「苗字だからね」
凛花の目からすでに涙は消え、それでもうるうるした目で笑いながら言った。
「一緒に居るダチも男だったじゃねーか」
圭は少し怒ったように言った。
「うちのバスケ部、試合以外は男女混合だったんだよ。確かに男の友達の方が多かったかもだけど。」
「なんだよ。早く言ってくれよ。俺がどれだけ悩んだと思うんだよ。」
そういうと圭は再び凛花の隣に腰を下ろした。
「悩んだの?」
「そうだよ!悩んだんだよ。俺、お前に告白されてからお前の事が気になって。自分は男が好きなのかなって思ったり。やっと好きになれるオンナが出来たと思ったら本人かよ!」
前屈みになり顔を押さえながら圭が言う。
凛花は先ほどからの圭のセリフが聞き捨てならない。
「私のこと男だと思ってたの?」
「そうだよ。あの頃、僕って言ってたし。」
確かに中学の時はボーイッシュだったため自分のことを私と言うのが恥ずかしくて僕と言ってたかもしれない。
ただ、言い訳させてもらうと凛花の中学ではそう言う女の子が何人かいて、凛花だけが特別と言うわけではなかった。
確かに初対面の人に男の子と間違えられることはたまにあったが、何度も話していると流石に気付くと思うのだが・・・
「じゃあ、中学の頃から好きだったの?」
「そうだよ。いや、気付いたのは告白されたあとだけど。あの頃のタカヤってさ、すげー負けず嫌いで闘志剥き出しなのにちょっとプレスしたらすぐ尻もちつくのが意外で。だけど、その時の恥ずかしそうな顔が可愛いなって。俺にくれるアドバイスも的確だしスリーオンで一緒のチームになった時に何も打ち合わせしてないのに速攻がバチッと決まるし、そういうの、良いなって。でも男だからダメだってずっと思ってた。」
言い終わる頃に圭はやっと凛花の顔を見た。
その顔を見て圭の言っている事が嘘やからかいではないとわかった。
「嘘みたい。すごく嬉しい。」
圭は目尻を下げたまま少し凛花を睨んだ。
「何で中学の頃からの知り合いだって言ってくれなかったの?」
「自分から?中三の時に告白して振られた高谷凛花です。って?そんなの言えないよ。忘れられてるのかと思ってたから。」
「告白してくれた子のこと忘れるわけないだろ。」
そう言うと圭が再び手を握ってきた。
夏だからか圭の手はとても熱かった。
「ずっと、圭のこと諦めなきゃって思ってた。だから本当に嬉しい。」
「俺も」
圭はそう言うと凛花の手を引っ張った。
凛花は圭の胸に倒れ込んだ。それを圭が受け止める。圭の胸の鼓動が隣家にも伝わってきたが、凛花も同じくらいドキドキしている。
しばらくそうしていたが、サッカー部が練習を開始し練習のホイッスルの音に気づいた圭が
「やばっ、俺も部活。」
と言った。
「連絡先!交換!」
そう言って慌てて二人は連絡先を交換した。
交換が終わると圭は「部活終わったら連絡する」と言って走っていった。
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