1 / 6
第一話 フィーとレイフ
しおりを挟む
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
昔は仲が良かったが、最近は口も聞いていない。
今日も定例の茶会であるのに王子は姿を見せなかった。
「フィー様、そろそろ。」
城から付けられた従者に声をかけられておずおずと席を立った。
定例の茶会をすっぽかされるのはこれで何度目だろうか。
きっとまた、王子に相手にされない可哀想な婚約者をという事で、噂になるのだろう。
それでもフィーはレイフのことを信じていた。
レイフは少し人にどうみられているのかというところを気にしないところがある。
きっと、今日も魔法の研究がのっていてつい時間が過ぎてしまったのだろう。そして、婚約者に定例の茶会をすっぽかされるとどんな噂が流れるのか、と言うことに思い至らないのだ。
レイフは昔からそう言うところがあった。
きちんとすればイケメンなのに、髪はいつもボサボサで便利だからと平民のような格好をしている。
フィーはレイフのそういうところを憎からず思っていた。しかし、それでも、もう少し気を遣ってくれてもいいと思うのだけど。
そう思いなが馬車に乗り込んだ。
レイフは王宮の魔法使いをしている。
まだ18だというのに既に頭角をあらわしており、筆頭魔法使いになるのは時間の問題だと目されていた。
フィーは魔法のことはよくわからない。だから、そんなレイフの邪魔はしたくなくて、強く出れないでいた。
茶会をすっぽかされて数日後、フィーは夜会に参加していた。王子が参加を免除されるのに婚約者が参加必須なんて理不尽だと思う。
レイフは今日も研究で忙しいのか夜会には参加していない。フィーはエスコートもなく一人で入場した。
以前は必ず出なくてはならない公式行事の夜会の際にエスコートできない場合は、謝罪の手紙が届いていた。しかし、最近ではそれすら届かなくなった。
レイフ様がああでいらっしゃるからこそ、私が社交を頑張らないといけないのよね。
フィーはそう思って心を強く持った。
「ほら、あの方。またお一人で参加されていらっしゃるわ」
「そのうち、婚約も解消になるんじゃなくって?」
「定例のお茶会にも殿下は出てらっしゃらないようよ」
心ない人たちの噂話が耳に入る。
王子に嫁ぐ身であればそのくらい笑って跳ね除けなければならない。
しかし、この夜会では笑ってなどいられないことが起こった。
レイフが別の令嬢をエスコートして会場に現れたのだ。
フィーは身体が震えるのを何とか抑え、レイフを見た。
レイフも気付いたようでフィーに近づいてくる。
もういっそ、無視してくれたら良いのに。
周囲が注目しているのがわかった。
レイフが近付いてくるのが永遠のように感じた。
「やぁ、久しぶり。フィーも参加していたんだね?」
レイフは何事もなかったようにフィーに話しかけてきた。
王宮の夜会で他の令嬢をエスコートするということがどういうことなのかわからないのだろうか?
「お久しぶりでございます。ミッドサマーの夜会ですので王妃殿下から必ず出るようにと仰せつかっておりますれば。」
そう言って腰を折る。
「そんなに改まらなくていいよ。そうか、今日は夏至だったんだね。」
レイフがフィーを見る瞳はいつものように優しい。
それが逆にフィーの心を蝕んだ。
すると後ろから声がかかる。
「レイフ様。今日はわたくしをエスコートしてくださるのではなかったのですか?」
「あぁ、そうだったね。フィーこちら、研究室の同僚のジャニスだよ。ジャニス、こちらは婚約者のフィー。」
「はじめまして。プレップ国のスチュアート侯爵家のジャニスと申します。レイフ様には研究室でお世話になっております。」
ジャニスはそう言ってお辞儀をする。しかし、フィーから目を逸らすことはなく全てを見透かした猫のような顔でニヤリと笑った。
「はじめまして。アンダーソン公爵の長女、フィービーに御座います。以後お見知り置きを。」
フィーはそう言うのがやっとだった。
ジャニスはプラチナブロンドのゴージャスな美女でどこからどう見てもフィーは負けていた。
彼女の青色のドレスはレイフ様の目の色に合わせたのかしら。とても洗練されていて大人っぽくて、レイフ様にはお似合いだった。
レイフ様も彼女のためならきちんと髪をセットなさるのね。
黒髪のレイフとプラチナブロンドのジャニスが並ぶとまるで夜と月の精霊のようにしっくりきていた。
それに引き換え、フィーは平凡な栗色の髪でパッとしない。ドレスもフィーには似合っているが少女趣味でジャニスのドレスのように洗練されていない。
夜会への参加はフィーにとって公務である。
途中にあるミッドサマーの式典までは会場に居なければならず、レイフとジャニスの姿を見るハメになった。
レイフが何かを言ってジャニスが笑い、ジャニスが差し出した食事をレイフが食べる。そんな光景を見るのは流石のフィーでも胸が痛んだ。
昔は仲が良かったが、最近は口も聞いていない。
今日も定例の茶会であるのに王子は姿を見せなかった。
「フィー様、そろそろ。」
城から付けられた従者に声をかけられておずおずと席を立った。
定例の茶会をすっぽかされるのはこれで何度目だろうか。
きっとまた、王子に相手にされない可哀想な婚約者をという事で、噂になるのだろう。
それでもフィーはレイフのことを信じていた。
レイフは少し人にどうみられているのかというところを気にしないところがある。
きっと、今日も魔法の研究がのっていてつい時間が過ぎてしまったのだろう。そして、婚約者に定例の茶会をすっぽかされるとどんな噂が流れるのか、と言うことに思い至らないのだ。
レイフは昔からそう言うところがあった。
きちんとすればイケメンなのに、髪はいつもボサボサで便利だからと平民のような格好をしている。
フィーはレイフのそういうところを憎からず思っていた。しかし、それでも、もう少し気を遣ってくれてもいいと思うのだけど。
そう思いなが馬車に乗り込んだ。
レイフは王宮の魔法使いをしている。
まだ18だというのに既に頭角をあらわしており、筆頭魔法使いになるのは時間の問題だと目されていた。
フィーは魔法のことはよくわからない。だから、そんなレイフの邪魔はしたくなくて、強く出れないでいた。
茶会をすっぽかされて数日後、フィーは夜会に参加していた。王子が参加を免除されるのに婚約者が参加必須なんて理不尽だと思う。
レイフは今日も研究で忙しいのか夜会には参加していない。フィーはエスコートもなく一人で入場した。
以前は必ず出なくてはならない公式行事の夜会の際にエスコートできない場合は、謝罪の手紙が届いていた。しかし、最近ではそれすら届かなくなった。
レイフ様がああでいらっしゃるからこそ、私が社交を頑張らないといけないのよね。
フィーはそう思って心を強く持った。
「ほら、あの方。またお一人で参加されていらっしゃるわ」
「そのうち、婚約も解消になるんじゃなくって?」
「定例のお茶会にも殿下は出てらっしゃらないようよ」
心ない人たちの噂話が耳に入る。
王子に嫁ぐ身であればそのくらい笑って跳ね除けなければならない。
しかし、この夜会では笑ってなどいられないことが起こった。
レイフが別の令嬢をエスコートして会場に現れたのだ。
フィーは身体が震えるのを何とか抑え、レイフを見た。
レイフも気付いたようでフィーに近づいてくる。
もういっそ、無視してくれたら良いのに。
周囲が注目しているのがわかった。
レイフが近付いてくるのが永遠のように感じた。
「やぁ、久しぶり。フィーも参加していたんだね?」
レイフは何事もなかったようにフィーに話しかけてきた。
王宮の夜会で他の令嬢をエスコートするということがどういうことなのかわからないのだろうか?
「お久しぶりでございます。ミッドサマーの夜会ですので王妃殿下から必ず出るようにと仰せつかっておりますれば。」
そう言って腰を折る。
「そんなに改まらなくていいよ。そうか、今日は夏至だったんだね。」
レイフがフィーを見る瞳はいつものように優しい。
それが逆にフィーの心を蝕んだ。
すると後ろから声がかかる。
「レイフ様。今日はわたくしをエスコートしてくださるのではなかったのですか?」
「あぁ、そうだったね。フィーこちら、研究室の同僚のジャニスだよ。ジャニス、こちらは婚約者のフィー。」
「はじめまして。プレップ国のスチュアート侯爵家のジャニスと申します。レイフ様には研究室でお世話になっております。」
ジャニスはそう言ってお辞儀をする。しかし、フィーから目を逸らすことはなく全てを見透かした猫のような顔でニヤリと笑った。
「はじめまして。アンダーソン公爵の長女、フィービーに御座います。以後お見知り置きを。」
フィーはそう言うのがやっとだった。
ジャニスはプラチナブロンドのゴージャスな美女でどこからどう見てもフィーは負けていた。
彼女の青色のドレスはレイフ様の目の色に合わせたのかしら。とても洗練されていて大人っぽくて、レイフ様にはお似合いだった。
レイフ様も彼女のためならきちんと髪をセットなさるのね。
黒髪のレイフとプラチナブロンドのジャニスが並ぶとまるで夜と月の精霊のようにしっくりきていた。
それに引き換え、フィーは平凡な栗色の髪でパッとしない。ドレスもフィーには似合っているが少女趣味でジャニスのドレスのように洗練されていない。
夜会への参加はフィーにとって公務である。
途中にあるミッドサマーの式典までは会場に居なければならず、レイフとジャニスの姿を見るハメになった。
レイフが何かを言ってジャニスが笑い、ジャニスが差し出した食事をレイフが食べる。そんな光景を見るのは流石のフィーでも胸が痛んだ。
1,325
あなたにおすすめの小説
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
冷遇夫がお探しの私は、隣にいます
終日ひもの干す紐
恋愛
愛人がいるなら、さっさと言ってくれればいいのに!
妻に駆け落ちされた、傷心の辺境伯ロシェのもとへ嫁いでほしい。
シャノンが王命を受け、嫁いでから一年……とんでもない場面に立ち会ってしまう。
「サフィール……またそんなふうに僕を見つめて、かわいいね」
シャノンには冷たいの夫の、甘ったるい囁き。
扉の向こうの、不貞行為。
これまでの我慢も苦労も全て無駄になり、沸々と湧き上がる怒りを、ロシェの愛猫『アンブル』に愚痴った。
まさかそれが、こんなことになるなんて!
目が覚めると『アンブル』になっていたシャノン。
猫の姿に向けられる夫からの愛情。
夫ロシェの“本当の姿”を垣間見たシャノンは……?
* * *
他のサイトにも投稿しています。
【完結】真実の愛のキスで呪い解いたの私ですけど、婚約破棄の上断罪されて処刑されました。時間が戻ったので全力で逃げます。
かのん
恋愛
真実の愛のキスで、婚約者の王子の呪いを解いたエレナ。
けれど、何故か王子は別の女性が呪いを解いたと勘違い。そしてあれよあれよという間にエレナは見知らぬ罪を着せられて処刑されてしまう。
「ぎゃあぁぁぁぁ!」 これは。処刑台にて首チョンパされた瞬間、王子にキスした時間が巻き戻った少女が、全力で王子から逃げた物語。
ゆるふわ設定です。ご容赦ください。全16話。本日より毎日更新です。短めのお話ですので、気楽に頭ふわっと読んでもらえると嬉しいです。※王子とは結ばれません。 作者かのん
.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.ホットランキング8位→3位にあがりました!ひゃっほーー!!!ありがとうございます!
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。
誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。
salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。
6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。
*なろう・pixivにも掲載しています。
【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。
デートリヒは白い結婚をする
毛蟹
恋愛
デートリヒには婚約者がいる。
関係は最悪で「噂」によると恋人がいるらしい。
式が間近に迫ってくると、婚約者はデートリヒにこう言った。
「デートリヒ、お前とは白い結婚をする」
デートリヒは、微かな胸の痛みを見て見ぬふりをしてこう返した。
「望むところよ」
式当日、とんでもないことが起こった。
私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。
いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。
「僕には想い合う相手いる!」
初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。
小説家になろうさまにも登録しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる