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フューリー夫人の態度 ヴァージニアside

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ヴァージニアは再びマーガレットの部屋まで戻ってきた。
お目当ての人物、フューリー夫人がマーガレットの部屋に行ったと聞いたからだ。

部屋の前に立つとフューリー夫人の大声が廊下まで響いていた。

「何を寝ているのです。あなたにはそんな時間はないのですよ?」

「まだ、ヴァージニア嬢の半分も上達しておりません!」

「さぁ着替えて。歩き方とお辞儀、ドレスさばきはなんとか見られるようになってきましたからね。そろそろダンスの練習をいたしましょう。」

マーガレットも返答しているのだろうが、声が小さくて廊下まで漏れ聞こえてくることはなかった。

ヴァージニアは栄養失調のあの身体にダンスを踊らせるなんて無茶だと思った。せめて今日くらいはフューリー夫人に帰ってもらった方が良い。

ヴァージニアは扉をノックした。
すると鬼のような形相のフューリー夫人が扉を開けた。マーガレットは侍女の手によってダンス用の衣装に着替えているらしい。

フューリー夫人は尋ね人がヴァージニアだと気づくとニコッと笑い、「まぁ、ヴァージニア様ではございませんか?お久しぶりね。どうなさったの?」と言った。

その変わり身の早さにヴァージニアは恐ろしさを感じた。

「実は、今日マーガレット嬢は酷い顔色だったので学園を早退したんです。医者に見てもらうと栄養失調ということでした。とてもダンスなど出来るようには思えないのですが、今日は私の顔に免じてお休みにしてもらえませんか?」

ヴァージニアはかなり丁重に下手に出たつもりだ。

「えぇ、話は聞いています。しかし、アンソニー殿下からは16の春のデビュー舞踏会までに、ヴァージニア嬢のデビューの時と同じくらいの淑女にするようにと仰せつかっております。マーガレット様のデビューまではあと1年を切っております。ヴァージニア嬢のデビューの頃と同じくらいにはまだまだほど遠く・・・」

マーガレットのデビューまではあと8ヶ月ほどだ。
8ヶ月で全ての項目について淑女にするのは難しい。しかし、デビューでは自分で招待状など書かない。
デビューの舞踏会では晩餐もないのでテーブルマナーもそこまで厳しくする必要はない。

貴族の顔と名前が一致し、立居振る舞いとダンスが出来ていれば及第点だろう。

「トニーは全ての項目について淑女にせよと言ったのでしょうか?デビューの舞踏会を淑女として乗り越えられれば良いのであれば、教える項目をもっと減らせるのではありませんか?特に書取りなどは王妃になるまで不要のもの。今すぐ出来なくても良いのではありませんか?」

「わたくしはアンソニー殿下より、マーガレット嬢をデビューまでにヴァージニア様と同じくらいの淑女にするようにと仰せつかっただけでございます。」

フューリー夫人はふん、と顔を上げて言った。

「ではせめて、書取りの課題の枚数を減らすことはできないのでしょうか?フューリー夫人はあの書取りに一枚何分かかるとお思いですか?」

「さぁ?3分かしら?」

「3分として、100枚書くのに何時間かかるか計算したことはありますか?3分だと1時間に書ける枚数は20枚です。と言うことは100枚書くのに5時間はかかる計算です。しかも、マーガレット嬢はこの国に来てまだ半年もたっていないのです。きっと一枚仕上げるのにもっとかかるでしょう。既に夕方ですがレッスンはいつも何時ごろ終わるのですか?」

「21時ごろです。」

「そこからすぐに課題に取り掛かり、他のことを何もしなかったとして、課題が終わるのが早くて深夜の2時。途中湯浴みもされるでしょうし実際は課題を仕上げるのにもっとかかるでしょう。学園の課題も出ているはずです。フューリー夫人、マーガレット様は寝なくても生きていける人形だとお思いですか?」

「しかし、アンソニー殿下が・・・」

「トニーには私の方から進言しておきます。明日、これからの妃教育について話し合いましょう。今日は帰ってください。」

「しかし・・・」

「帰りなさいと言っているのです!」

そうして、フューリー夫人が部屋から出て行こうとすると・・・

「殿下!?」

ドアの外に青い顔をしたアンソニーが立っていた。

「トニー、あなたも今日は執務が残っているのでしょう?今日はご自身の執務室にお帰りください。明日、みんなで話し合いましょう。」

そう言ってヴァージニアはマーガレットの部屋からフューリー夫人を追い出すと二人の目の前でマーガレットの部屋の扉を閉めた。
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