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そして時は動き出した。(ダリフside)
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「ここで今、ダリフお兄様の王位継承権剥奪を言い渡します。」
淡々とホールに響く弟の声。
全て終わったのだと思っていた私は
4度目の人生を迎えていた。
目覚めた時、
危うく叫んでしまうところだった。
これからの人生に絶望しつつも、
側近候補として再会したシュリを一目見てしまったらまた
“生き抜いてシュリと幸せになる”
という欲望がムクムクと湧いてきた。
我ながら単純だと思う。
今世の作戦は、ゲームの知識を活かしてイベントを起こしユキルとの不貞によって平民になる。
実は王族が平民になるのは難しい。
普通は王位継承権が剥奪されても爵位を与えられる。
そのため前回と同じ内容になってしまうのが心配だったが、それを防ぐために流行病への薬を事前に開発したりシュリの脱出の計画を練ったりお金を貯めたりした。
シュリは側近の一人に過ぎないため、個人的な話はあまりできない。
だからこっそり手紙のやりとりをするしかなかったが、毎回最後に少しだけ愛を綴ってくれるシュリのおかげで人生がかかってるにも関わらず楽しく幸せなやりとりとなった。
そして何より、ユキルやレオの人格が変わっていることに気がついた。
ユキルは見た目も変わっていて、恋愛感情こそないものの前世よりは好感が持てる。
とても大きな変化。
このことに気がついたとき、
神が私に与えた最初で最後のチャンスなのだと思った。
イベントを起こそうとしても起こらない、むしろ彼らは何か知っているようだ。
ユキルの魅了にかからなかったのでスムーズにことは進めることが出来た。
そして今、レオから断罪された。
長い計画もそろそろ終わり。
気を抜かずに悲しい顔を作って退場する。
「私たちはここまでです。」
星の煌めく真っ暗な夜、
兵士が門の前で敬礼をする。
「世話になったな」
「ダリフ様、お元気で」
なんか泣いてないか?
前世の私は強制力が働いていたせいで最悪な性格だったから慕われることなどなかったのに。
「ありがとう」
自然と礼の言葉が口から出てきた。
愛する人しか見えていなかったけれど、これからのシュリとの生活の中ではもう少し周りの人たちも大切にしていこうと思った。
城に背を向けて歩き出す。
目指すのはシュリと決めた待ち合わせ場所
広場に着きその端へ向かうと段々と大きな影が見えてきて進める足が速くなる。
一筋の微かな光の下に、
馬に乗ったシェリが微笑んでそこにいた。
「......待ってたよ。
ずっと、この時を。」
真珠のような綺麗な涙がシュリの頬を伝ってこぼれ落ちる。
「もう離さないから」
彼の目を見てそう伝え、
準備していた馬に飛び乗る。
「さぁ、行こう。
私たちの人生を歩むんだ」
振り回された4回もの人生。
そしてようやくチャンスをもぎ取って、
これからは2人の世界で生きていくのだ。
パカッパカッ
馬の蹄の音が空気に溶けるように、
今宵、愛し合う2人の姿が
闇夜に消えていった。
淡々とホールに響く弟の声。
全て終わったのだと思っていた私は
4度目の人生を迎えていた。
目覚めた時、
危うく叫んでしまうところだった。
これからの人生に絶望しつつも、
側近候補として再会したシュリを一目見てしまったらまた
“生き抜いてシュリと幸せになる”
という欲望がムクムクと湧いてきた。
我ながら単純だと思う。
今世の作戦は、ゲームの知識を活かしてイベントを起こしユキルとの不貞によって平民になる。
実は王族が平民になるのは難しい。
普通は王位継承権が剥奪されても爵位を与えられる。
そのため前回と同じ内容になってしまうのが心配だったが、それを防ぐために流行病への薬を事前に開発したりシュリの脱出の計画を練ったりお金を貯めたりした。
シュリは側近の一人に過ぎないため、個人的な話はあまりできない。
だからこっそり手紙のやりとりをするしかなかったが、毎回最後に少しだけ愛を綴ってくれるシュリのおかげで人生がかかってるにも関わらず楽しく幸せなやりとりとなった。
そして何より、ユキルやレオの人格が変わっていることに気がついた。
ユキルは見た目も変わっていて、恋愛感情こそないものの前世よりは好感が持てる。
とても大きな変化。
このことに気がついたとき、
神が私に与えた最初で最後のチャンスなのだと思った。
イベントを起こそうとしても起こらない、むしろ彼らは何か知っているようだ。
ユキルの魅了にかからなかったのでスムーズにことは進めることが出来た。
そして今、レオから断罪された。
長い計画もそろそろ終わり。
気を抜かずに悲しい顔を作って退場する。
「私たちはここまでです。」
星の煌めく真っ暗な夜、
兵士が門の前で敬礼をする。
「世話になったな」
「ダリフ様、お元気で」
なんか泣いてないか?
前世の私は強制力が働いていたせいで最悪な性格だったから慕われることなどなかったのに。
「ありがとう」
自然と礼の言葉が口から出てきた。
愛する人しか見えていなかったけれど、これからのシュリとの生活の中ではもう少し周りの人たちも大切にしていこうと思った。
城に背を向けて歩き出す。
目指すのはシュリと決めた待ち合わせ場所
広場に着きその端へ向かうと段々と大きな影が見えてきて進める足が速くなる。
一筋の微かな光の下に、
馬に乗ったシェリが微笑んでそこにいた。
「......待ってたよ。
ずっと、この時を。」
真珠のような綺麗な涙がシュリの頬を伝ってこぼれ落ちる。
「もう離さないから」
彼の目を見てそう伝え、
準備していた馬に飛び乗る。
「さぁ、行こう。
私たちの人生を歩むんだ」
振り回された4回もの人生。
そしてようやくチャンスをもぎ取って、
これからは2人の世界で生きていくのだ。
パカッパカッ
馬の蹄の音が空気に溶けるように、
今宵、愛し合う2人の姿が
闇夜に消えていった。
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