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人間×小人
密かな決意(優榴side)
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「さて...」
小さな天使が帰っていく背中を見えなくなるまで見つめた後、スリープ状態になっているパソコンを起動させ長らく開いていなかったファイルをダブルクリックする。
橘 優榴は有名な製薬会社の跡継ぎだ。
海外の大学を飛び級で卒業し、父に与えられた社会人になるまでの自由時間は自然豊かな場所にある別荘で跡継ぎとしての仕事を淡々とこなすことにした。
勉強も運動も仕事も優榴にとっては赤子の手を捻るくらい簡単で、周りの『流石優榴君!橘家の将来は安泰だな』という大袈裟な反応をいつも冷めた目で見てしまう。
ただただ貯金が貯まっていくだけのつまらない日々だが、社会人にもなれば都会に出て仕事をすることになるのだから緑に囲まれ綺麗な風と空気を感じながら仕事ができるだけ良いのかもしれない。
そして今日もそんな変哲もない日になるものだと思っていた。
しかし、普段なら気にもしない小さな音が今日は妙に気になったことで優榴の人生は大きく変わった。
顔を上げると棚の上に垂れ目で可愛い小人がこっちを見つめて立っているではないか。
橘家の人間は世間では空想のものとして扱われている小人が実在することを知っている。
だからなぎさを見ても大して驚きはなかった。
それより、顔を真っ青にしてブルブル震えてる姿が可愛くって可愛くって気が付いたらなぎさをベッドの上に連れて行っていた。
近くで見ると一箇所寝癖がぴょこんとついていたなぎさ、自分が食われると思っているなぎさ、人間界に興味津々ななぎさ、おっちょこちょいななぎさ、会話していく中で彼の色んな面を垣間見て
“仲良くなりたい、彼の全てを把握したい、ずっと自分といてほしい、恋人になりたい、キスしたい、抱きしめたい”
30分ほど話しただけなのに、そんなドロドロした感情が腹の中で暴れまくっていた。
僕はなぎさに一目惚れしてしまったのだ。
--------------
遡ること150年前、
橘家の先々代が小人と偶然出会いそして恋に落ちた。
しかし体格差の壁に当たり交際は上手くいかず結局破局。
その時先々代は固く決意した。
『もし自分の子孫が小人と恋に落ちた時、自分と同じ後悔はさせまい』
こうして小人人間化の薬の開発は始まった。
しかし世間に出すと倫理的にどうにこうのと大騒ぎになってしまう為、この開発の存在は隠され代々橘家にのみ受け継がれることとなる。
--------------
例に漏れずこの開発に携わってる優榴は当初この開発に全く興味なかった。
しかし今は違う。
なぎさという天使に出会い、優榴は彼と一生を添い遂げる為にこの開発を完成させることを決意し、真剣に取り組み始めることにしたのだ。
“早くなぎさに会いたいな”
夜、いつも表情筋が全く仕事をしていない優榴が上機嫌で現れたその日の橘家の食卓に電撃が走ったのは言うまでもあるまい。
小さな天使が帰っていく背中を見えなくなるまで見つめた後、スリープ状態になっているパソコンを起動させ長らく開いていなかったファイルをダブルクリックする。
橘 優榴は有名な製薬会社の跡継ぎだ。
海外の大学を飛び級で卒業し、父に与えられた社会人になるまでの自由時間は自然豊かな場所にある別荘で跡継ぎとしての仕事を淡々とこなすことにした。
勉強も運動も仕事も優榴にとっては赤子の手を捻るくらい簡単で、周りの『流石優榴君!橘家の将来は安泰だな』という大袈裟な反応をいつも冷めた目で見てしまう。
ただただ貯金が貯まっていくだけのつまらない日々だが、社会人にもなれば都会に出て仕事をすることになるのだから緑に囲まれ綺麗な風と空気を感じながら仕事ができるだけ良いのかもしれない。
そして今日もそんな変哲もない日になるものだと思っていた。
しかし、普段なら気にもしない小さな音が今日は妙に気になったことで優榴の人生は大きく変わった。
顔を上げると棚の上に垂れ目で可愛い小人がこっちを見つめて立っているではないか。
橘家の人間は世間では空想のものとして扱われている小人が実在することを知っている。
だからなぎさを見ても大して驚きはなかった。
それより、顔を真っ青にしてブルブル震えてる姿が可愛くって可愛くって気が付いたらなぎさをベッドの上に連れて行っていた。
近くで見ると一箇所寝癖がぴょこんとついていたなぎさ、自分が食われると思っているなぎさ、人間界に興味津々ななぎさ、おっちょこちょいななぎさ、会話していく中で彼の色んな面を垣間見て
“仲良くなりたい、彼の全てを把握したい、ずっと自分といてほしい、恋人になりたい、キスしたい、抱きしめたい”
30分ほど話しただけなのに、そんなドロドロした感情が腹の中で暴れまくっていた。
僕はなぎさに一目惚れしてしまったのだ。
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遡ること150年前、
橘家の先々代が小人と偶然出会いそして恋に落ちた。
しかし体格差の壁に当たり交際は上手くいかず結局破局。
その時先々代は固く決意した。
『もし自分の子孫が小人と恋に落ちた時、自分と同じ後悔はさせまい』
こうして小人人間化の薬の開発は始まった。
しかし世間に出すと倫理的にどうにこうのと大騒ぎになってしまう為、この開発の存在は隠され代々橘家にのみ受け継がれることとなる。
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例に漏れずこの開発に携わってる優榴は当初この開発に全く興味なかった。
しかし今は違う。
なぎさという天使に出会い、優榴は彼と一生を添い遂げる為にこの開発を完成させることを決意し、真剣に取り組み始めることにしたのだ。
“早くなぎさに会いたいな”
夜、いつも表情筋が全く仕事をしていない優榴が上機嫌で現れたその日の橘家の食卓に電撃が走ったのは言うまでもあるまい。
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