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秘花91
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
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しかも、王位継承権第一位と第二位という尊い立場にいる王子たちの眼に止まり玉の輿に乗りたい。夢見る女官たちは実に多かったのである。それを知らぬ王ではなかった。
ある意味で、あの宦官は賢を根底から変えたともいえる。
―あの男は俺の知らない賢を知っている。
二人で過ごしたのは二ヶ月ほどだ。だが、二ヶ月は短いようでも長い。嘉礼を挙げてから既に三ヶ月を経ているけれど、〝夫婦〟でありながら広大な宮殿で別々に過ごすことの多い自分たちより、あの男と賢が二人きりで過ごした二ヶ月ははるかに密度の濃いものであったはずだ。
賢はいつもあの男のために料理を作り、眩しい笑顔を見せていたのか。あの男は賢の身体に触れ、口付けの一つくらいはしたかもしれない。そういえば、賢がいつかの夜、〝抱かれる〟という言葉に過剰に反応したことを思い出した。
あのときの賢は頬を染め、恥ずかしげにしていた。あの様子を見て、王は賢がてっきりもう生娘ではないのかと勘違いしそうになっのだが―。たとえ処女を失ってないとしても、それだけであの宦官が賢の身体に触れなかったとは言い難い。
例えば、つい最近の視察前夜の自分のように、最後まで抱かなくても女に歓びを与え、絶頂に導くことはできる。もしや、と、王の中で暗い疑念が湧き上がった。
あの男は俺の賢に触れているのではないか。宦官だといっても、性欲はそれなりにあるのだといつか若い内官が紅くなりながら話していたことがある。
性欲があるのだとしたら、二ヶ月も共に過ごしながら、あの男が賢に触れていないとは思えない。もし自分があの男だったとしても、手を出しているだろう。
賢は俺のものだ、誰にも渡しはしない。ふいにあらぬ妄想が瞼で閃いた。一糸纏わぬ賢が美しい肢体を投げ出し、あの男が賢の身体に触れている。あの男の指があの夜、王が賢にしたように秘められた狭間に差し入れられ、賢が歓びの声を上げる。その白い膚が桜色にほんのりと染まる。
―許さぬ。
嫉妬が王の心で燃え立ち、彼はついに、怒りに我を忘れた。
ある意味で、あの宦官は賢を根底から変えたともいえる。
―あの男は俺の知らない賢を知っている。
二人で過ごしたのは二ヶ月ほどだ。だが、二ヶ月は短いようでも長い。嘉礼を挙げてから既に三ヶ月を経ているけれど、〝夫婦〟でありながら広大な宮殿で別々に過ごすことの多い自分たちより、あの男と賢が二人きりで過ごした二ヶ月ははるかに密度の濃いものであったはずだ。
賢はいつもあの男のために料理を作り、眩しい笑顔を見せていたのか。あの男は賢の身体に触れ、口付けの一つくらいはしたかもしれない。そういえば、賢がいつかの夜、〝抱かれる〟という言葉に過剰に反応したことを思い出した。
あのときの賢は頬を染め、恥ずかしげにしていた。あの様子を見て、王は賢がてっきりもう生娘ではないのかと勘違いしそうになっのだが―。たとえ処女を失ってないとしても、それだけであの宦官が賢の身体に触れなかったとは言い難い。
例えば、つい最近の視察前夜の自分のように、最後まで抱かなくても女に歓びを与え、絶頂に導くことはできる。もしや、と、王の中で暗い疑念が湧き上がった。
あの男は俺の賢に触れているのではないか。宦官だといっても、性欲はそれなりにあるのだといつか若い内官が紅くなりながら話していたことがある。
性欲があるのだとしたら、二ヶ月も共に過ごしながら、あの男が賢に触れていないとは思えない。もし自分があの男だったとしても、手を出しているだろう。
賢は俺のものだ、誰にも渡しはしない。ふいにあらぬ妄想が瞼で閃いた。一糸纏わぬ賢が美しい肢体を投げ出し、あの男が賢の身体に触れている。あの男の指があの夜、王が賢にしたように秘められた狭間に差し入れられ、賢が歓びの声を上げる。その白い膚が桜色にほんのりと染まる。
―許さぬ。
嫉妬が王の心で燃え立ち、彼はついに、怒りに我を忘れた。
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