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秘花63
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
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婚礼の夜、乾は賢に半ば脅迫めいた宣言をした。
―俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。必然的に次の高麗国王もそなたに宿るだろうな。
しかしながら、口では脅すようなことを言ったが、待つつもりであった。何と言っても自分たちは実の姉弟のようにして育った幼なじみであり、賢は従姉なのだ。邪魔者の宦官もいなくなった今、いつかは心を開いてくれると信じていた。
気長に、賢がその気になるまで待つのだ。
振り返ってみれば、自分はこれまで賢に嫌われるようなことしかしていない。その自覚はむろん、乾にも十分すぎるくらいあった。
まだ賢が正式な王妃に冊立される前、乾は一度だけ夜、後宮に渡ったことがある。国王が夜に後宮を訪れるその目的は一つしかない。それを知った尚宮長はあろうことか賢に薄物の夜着を着せた。
奥手な賢は何故、その夜に限って薄物の夜着を着せられたかを深く考えてもみなかったはずだ。自分が国王に捧げられる供物として扱われているとも知らず、賢は無防備な姿をしていた。
正直言って、その夜着は殆ど夜着の役割を果てしていなかった。まだ小さいけれど、形の良い双つの膨らみどころか、その先端の朱鷺色の突起までもがはっきりと薄い生地を通して透けて見えていた。むろん、その下の小さな下着をつけているだけの秘められた下腹部も丸見えだった。
つまりは裸を曝しているようなものだ。かえって極薄の生地を通して見るその身体は何とも淫らに見えた。
賢自身は寝所に潜んでいる乾に愕いていたものの、裸同然の格好をしていることに気付いている様子はなかった。だから、夜着から身体の輪郭が透けて見えると指摘してやった時、賢は泣きそうになっていた。
―僕、気付かなくて。
狼狽して掛けてある上着を取りにいく賢の前に立ちはだかり、乾は上着を先に奪った。
意識してしたわけではない。ただ、賢が手を伸ばして上着を取ろうとする度に、こんもりとした乳房が揺れるのを見ていたら、その魅惑的な光景から眼が離せなくなった。
それで、揺れる胸をいつまでも見ていたいと思ってしまったのだ。裸同然の賢はこの上なく魅惑的で、まだ成熟しきっていない稚い肢体が余計に劣情をかきたてた。
―返して、返してよ。
けれど、賢はとうとう泣き出した。あまりに虐めすぎた自分を恥じ、どれだけ賢に残酷なことをしたかを悟った。
賢の身体も女として成熟して、これで名実共に夫婦になれる日も近くなった。後はゆっくりと時間をかけて、愛しい女が靡いてくるように心を尽くそう。このときの乾には間違っても賢の身体を無理に奪うつもりはなかった。
あの宦官はもう、この世の者ではない。乾はあの洪周緻(ホン・ジユチ)という内官が気に入らなかった。その感情は、まだ乾と賢が子どもの頃から続いていた。あの内官を初めて見たのは、賢と同じ七歳のときだけれど、何か厭な予感がしたものだった。それまでは何かといえば〝乾、乾〟と自分を頼りにしていた従兄が自分ではなく、あの内官を頼りにするようになったからだ。
十歳年上のあの男は既に十七歳になっていた。確かに賢と同じ歳の乾よりも、あの男の方が頼もしく頼り甲斐もあるように見えただろう。乾は賢にとって、自分が弟のような存在でしかないのをその頃から自覚していた。従兄にとってはいつまでも自分は〝可愛い従弟の乾〟なのだ。
だからこそ、あの宦官に負けたくないと思った。武術も苦手な学問にも今以上に励み、あんな下賤な者に大切な従兄の心を盗まれてなるものかと思った。従兄にふさわしい男になるのだと幼いなりに研鑽を積んだ。
案の定、怖れていたことが起こった。いつしか、ずっと側にいたホン内官を賢は兄のように慕うようになった。従兄とあの男が急接近したのは、前王暗殺の下手人として捕らえられていた賢に乾が求婚をした夜ではないか。あくまで推量の域を出ないが、そう考えるのには理由がある。その同じ夜半、二人が打ち揃って王宮を脱出したという事実があるからだ。
だとしたら、皮肉なことだ。自分が長年恋い焦がれてきた美しい〝従兄〟に求婚したことが、あの二人を決定的に結びつけてしまったのだとしたら。
二人は手に手を取って宮殿から逃れ、夫婦として鄙の小さな村に隠れ住んでいた。乾は宦官を無情にも惨殺し、嫌がる賢を攫うようにして王宮に連れ戻し強引に王妃とした。
―俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。必然的に次の高麗国王もそなたに宿るだろうな。
しかしながら、口では脅すようなことを言ったが、待つつもりであった。何と言っても自分たちは実の姉弟のようにして育った幼なじみであり、賢は従姉なのだ。邪魔者の宦官もいなくなった今、いつかは心を開いてくれると信じていた。
気長に、賢がその気になるまで待つのだ。
振り返ってみれば、自分はこれまで賢に嫌われるようなことしかしていない。その自覚はむろん、乾にも十分すぎるくらいあった。
まだ賢が正式な王妃に冊立される前、乾は一度だけ夜、後宮に渡ったことがある。国王が夜に後宮を訪れるその目的は一つしかない。それを知った尚宮長はあろうことか賢に薄物の夜着を着せた。
奥手な賢は何故、その夜に限って薄物の夜着を着せられたかを深く考えてもみなかったはずだ。自分が国王に捧げられる供物として扱われているとも知らず、賢は無防備な姿をしていた。
正直言って、その夜着は殆ど夜着の役割を果てしていなかった。まだ小さいけれど、形の良い双つの膨らみどころか、その先端の朱鷺色の突起までもがはっきりと薄い生地を通して透けて見えていた。むろん、その下の小さな下着をつけているだけの秘められた下腹部も丸見えだった。
つまりは裸を曝しているようなものだ。かえって極薄の生地を通して見るその身体は何とも淫らに見えた。
賢自身は寝所に潜んでいる乾に愕いていたものの、裸同然の格好をしていることに気付いている様子はなかった。だから、夜着から身体の輪郭が透けて見えると指摘してやった時、賢は泣きそうになっていた。
―僕、気付かなくて。
狼狽して掛けてある上着を取りにいく賢の前に立ちはだかり、乾は上着を先に奪った。
意識してしたわけではない。ただ、賢が手を伸ばして上着を取ろうとする度に、こんもりとした乳房が揺れるのを見ていたら、その魅惑的な光景から眼が離せなくなった。
それで、揺れる胸をいつまでも見ていたいと思ってしまったのだ。裸同然の賢はこの上なく魅惑的で、まだ成熟しきっていない稚い肢体が余計に劣情をかきたてた。
―返して、返してよ。
けれど、賢はとうとう泣き出した。あまりに虐めすぎた自分を恥じ、どれだけ賢に残酷なことをしたかを悟った。
賢の身体も女として成熟して、これで名実共に夫婦になれる日も近くなった。後はゆっくりと時間をかけて、愛しい女が靡いてくるように心を尽くそう。このときの乾には間違っても賢の身体を無理に奪うつもりはなかった。
あの宦官はもう、この世の者ではない。乾はあの洪周緻(ホン・ジユチ)という内官が気に入らなかった。その感情は、まだ乾と賢が子どもの頃から続いていた。あの内官を初めて見たのは、賢と同じ七歳のときだけれど、何か厭な予感がしたものだった。それまでは何かといえば〝乾、乾〟と自分を頼りにしていた従兄が自分ではなく、あの内官を頼りにするようになったからだ。
十歳年上のあの男は既に十七歳になっていた。確かに賢と同じ歳の乾よりも、あの男の方が頼もしく頼り甲斐もあるように見えただろう。乾は賢にとって、自分が弟のような存在でしかないのをその頃から自覚していた。従兄にとってはいつまでも自分は〝可愛い従弟の乾〟なのだ。
だからこそ、あの宦官に負けたくないと思った。武術も苦手な学問にも今以上に励み、あんな下賤な者に大切な従兄の心を盗まれてなるものかと思った。従兄にふさわしい男になるのだと幼いなりに研鑽を積んだ。
案の定、怖れていたことが起こった。いつしか、ずっと側にいたホン内官を賢は兄のように慕うようになった。従兄とあの男が急接近したのは、前王暗殺の下手人として捕らえられていた賢に乾が求婚をした夜ではないか。あくまで推量の域を出ないが、そう考えるのには理由がある。その同じ夜半、二人が打ち揃って王宮を脱出したという事実があるからだ。
だとしたら、皮肉なことだ。自分が長年恋い焦がれてきた美しい〝従兄〟に求婚したことが、あの二人を決定的に結びつけてしまったのだとしたら。
二人は手に手を取って宮殿から逃れ、夫婦として鄙の小さな村に隠れ住んでいた。乾は宦官を無情にも惨殺し、嫌がる賢を攫うようにして王宮に連れ戻し強引に王妃とした。
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