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シモウサへようこそ

マリモちゃんはマリモちゃんなのです

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 カスミちゃんは両腕を夜空に向かって掲げた。
 すると、複雑な曲線が組み合わされた武器が実体化するのだった。

 樹木の枝か、あるいは根が絡み合ったような有機的な造形。
 ただ、その先端からはっきりとわかるように、ルクフェネのロクティーレと同じような多砲身の重火器——ガトリング砲なのだ。

 もっとも、その回転する部分はとある根菜の形をしていた。

「本家れんこん砲!」
「きゅっきゅっきゅっ!」

 回転するレンコンの穴から砲弾が連射されまくるらしい……。

れんこん
根菜のひとつ。断面に複数の穴があるのが特徴。調理法によってシャキシャキとした食感にもモチモチとした食感にもなるが、どちらもおいしい。霞ケ浦の周辺が一大産地で、茨城県が生産量全国1位を誇る。

「オリジナルはアヤメちゃんの『元祖れんこん砲』なんです!」
「そ、そうなんだ……。でも……カスミちゃんの『本家』っていうのは……?」
「『本家』は本家の意地です!」

 ぐぐっと小さなグーをつくってカスミちゃんは鼻息を荒くした。
 れんこん砲はともかく、レンコンの生産量でいえば、カスミちゃんの月読宮二十三夜尊つきよみのみやにじゅうさんやそんがあるつちうらは、アヤメちゃんのくまじんじゃがある潮来いたこを生産量で圧倒するので、つまりまあ、そういうことなのだろう……。

「きゅっきゅっきゅっ!」

 喜ぶマリモちゃんの円らな瞳と視線が合う。

「そ……そういえば、マリモちゃんは、かんから遊びにきて仲よくなったとか……なの?」

「またまた、なにをいってるんですか~。マリモちゃんはアオコの精霊ですよ~」

 カスミちゃんがいうには、精霊とはひとの想いを受けて姿を得た存在だ。
 が、とすれば、マリモちゃんは、いったい誰の想いを映しているのだろう……。

(あと、なぜに『マリモちゃん』……?)

「ちなみに得意技は『くさい息』です!」
「きゅっきゅっきゅっ!」

 モルボル……?
 それはともかく、マリモちゃんがアオコの精霊であるということだけは、圭は納得することにした。

【アオコ】(再掲)
大発生すると、池や湖沼の水面を緑色に覆いつくし、さまざまな影響をもたらす微小な藻類の総称、およびその現象自体のこと。悪臭オイニーがステキ♥

 ——と、リバは不意に歩みを止めた。
 遅れて、圭のゴーグルのなかに、断片的な情報がもたつきながら表示された。
 それは、計測不能な数の侵入者に取り囲まれている、という情報だった。
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