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異変
光の壁
しおりを挟む「うう……」
うずく頭を押さえながら、圭は上半身を起こした。
そこは、岡堰をはさんだ小貝川の対岸だった。
(確か、リバにしがみついて、地面を離れたとたん、真後ろから衝撃波を受けて——そうだ、リバは!?)
そのときになって、圭は、自分がリバに身を預けていることにようやく気がついた。
(僕を守ってくれたんだ……)
鼻先をさするとリバはすぐに気がついた。
「リバ! だいじょうぶ!?」
「……ケイ!? 何ともなかった!? ボクは平気だよ、頑丈だから!」
「ありがと。ルクフェネとケヤキちゃんは——」
と、そのときになってはじめて、圭は川の向こう——つまり、もといた取手市側の異変に気がついた。
青白い光の壁がまっすぐ立ちはだかっていたのだ。
「いったい……。あ、いた!!」
ルクフェネはケヤキちゃんを抱きかかえ、守るように気を失っていた。
駆け寄って肩を揺すれば、うめき声をあげる。
どうにか衝撃波を躱したらしい。
(安らぎと温もりで優しく癒そう)
圭は指先を走らせた。
柔らかな光が包み込み、ふたりは意識を取り戻した。
「……う……うん……。……圭?」
ルクフェネは、ケヤキちゃんを気遣いながら起き上がった。
「いったい……」
「うん」
圭も頷くしかない。
「ケイ! ルク! あのひとだ!!」
離れたところに、コヨ・タキッシェがうつぶせに倒れていた。
ルクフェネと圭は顔を見合わせる。
「ルクフェネ、コヨさんのほうは任せていい?」
「うん」
「リバ!」
「お任せ!」
リバは圭を背に乗せ、飛翔した。
壁は、小貝川に突き出た小さな岬を頂点に、2つの方向にのびていた。
1つはほぼ真東、1つはやや東寄りの南方向。
(5つの場所……)
直前にリバがいっていたことだ。
「リバが感じた残りの4箇所のうちの2つは、光の壁の行き先にある?」
「うん、ある」
つまり、残りの2つも含めて、5地点をもって光の壁が構成されていると考えるのが自然だ。
そして、二十日兎の目的が〈宇宙の扉〉で、コヨ・タキッシェがその下で動いていたということは、いま、光の壁は閉じた空間を構成し、その空間は防衛局——言い換えるのなら、正確にその真上に存在する〈宇宙の扉〉を囲んでいる、ということになる。
青白い光の壁の向こうはまったく見通せない。
高度を上げても同じで、壁は天に向かって垂直にそびえ立っていた。
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