42 / 167
絆
絶体絶命
しおりを挟む「!!」
リバの鋭い鉤爪が薙ぎ払う。
圭はかろうじてよけたものの、通信機が弾き飛ばされた。
「リ、リバ! どうしたのっ!?」
しかし、リバは焦点の定まらない目で唸るばかりだ。
明らかに様子がおかしい。
(何かのユーグネアを掛けられた……。ルクフェネのヨディーレの矢を打ち消すほどの力……!?)
リバの背後にあの仮面の男が現れる。
男の姿は、はっきりせず、向こうの景色が透き通って見える。
それを見て圭は否定した。
(違う、どうにか姿を保てている——というより、姿を隠せていない)
ルクフェネがリバに施したヨディーレの矢は、いまだ健在で、仮面の男はそれに対抗することに力の大半を費やしているのだ。
だから姿を隠すことができていないし、そして、リバは完全に掌握されているわけではない——。
リバは唸りながら、ゆっくりとにじり寄ってくる。
視線はそのままに、圭は後ずさりながら背中のバックパックに手を伸ばす。
手首の通信機は弾き飛ばされてしまったものの、ゴーグルのほうがまだある——が、それはバックパックの中だ。
(でも何とかなるかもしれない……)
が、圭の表情に、男はほくそ笑んだ。
「小童が。アルテリウアでも無い貴様に何が出来る?」
リバの前脚が飛んでくる。
「よけられない……! リ、リバッ!!」
鉤爪が夜の色の制服を切り裂く——が、どうにか圭は躱す。
しかし、今度は3本のしっぽが飛んでくる。
体勢も中途半端で圭は吹っ飛ばされた。
地面を転がり、何とか立ち上がる。
まるで余裕がない。
リバはにじり寄る。
ライオンサイズのケモノであるところのモミョ族に、生身の人間が太刀打ちできるはずがない。
圭はどんどん後退していく。
「全く彼んな小娘なんぞ、然したる問題でも無かったのだ」
仮面の男は、リバの頭上あたりをゆらゆらと浮遊する。
「然るに、貴様が現れたことで予定が狂って仕舞った。貴様如きで、全く不愉快だ……」
(〈セグレンデの二つ耳〉のことをいっている……?)
「まあ良い、貴様は此処で死んで貰おう。無論、くく……存分に甚振ってからだがな……」
(どうしたら……)
と、踵が何かがふれた。
目線はそのままに視界ギリギリに見れば、それは、さっき弾き飛ばされた通信機だった。
(……!! リバが誘導してくれた……?)
考えてみれば、リバが本気なら、最初の鉤爪をよけられたはずがない。
(僕の声はリバに届いている……?)
「——む!?」
仮面の男は何かを空中に描いた。
「う……うあああ……!!」
リバは頭を両手で抱え、苦痛の声をあげた。
0
お気に入りに追加
337
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる