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絶体絶命

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「!!」

 リバの鋭いかぎづめはらう。
 圭はかろうじてよけたものの、通信機が弾き飛ばされた。

「リ、リバ! どうしたのっ!?」

 しかし、リバは焦点の定まらない目でうなるばかりだ。
 明らかに様子がおかしい。


(何かのユーグネアを掛けられた……。ルクフェネのヨディーレの矢を打ち消すほどの力……!?)

 リバの背後にあの仮面の男が現れる。

 男の姿は、はっきりせず、向こうの景色が透き通って見える。
 それを見て圭は否定した。

(違う、どうにか姿を保てている——というより、姿を隠せていない)

 ルクフェネがリバに施したヨディーレの矢は、いまだ健在で、仮面の男はそれに対抗することに力の大半を費やしているのだ。
 だから姿を隠すことができていないし、そして、リバは完全にしょうあくされているわけではない——。

 リバはうなりながら、ゆっくりとにじり寄ってくる。

 視線はそのままに、圭は後ずさりながら背中のバックパックに手を伸ばす。
 手首の通信機は弾き飛ばされてしまったものの、ゴーグルのほうがまだある——が、それはバックパックの中だ。

(でも何とかなるかもしれない……)

 が、圭の表情に、男はほくそ笑んだ。

小童こわっぱが。アルテリウアでもい貴様に何がる?」

 リバの前脚が飛んでくる。

「よけられない……! リ、リバッ!!」

 かぎづめが夜の色の制服を切り裂く——が、どうにか圭はかわす。
 しかし、今度は3本のしっぽが飛んでくる。

 体勢も中途半端で圭は吹っ飛ばされた。
 地面を転がり、何とか立ち上がる。
 まるで余裕がない。

 リバはにじり寄る。
 ライオンサイズのケモノであるところのモミョ族に、生身の人間が太刀打ちできるはずがない。
 圭はどんどん後退していく。

まったんな小娘なんぞ、したる問題でもかったのだ」

 仮面の男は、リバの頭上あたりをゆらゆらと浮遊する。

しかるに、貴様が現れたことで予定が狂ってった。貴様ごときで、まったく不愉快だ……」

(〈セグレンデのふたみみ〉のことをいっている……?)

「まあい、貴様は此処ここで死んでもらおう。無論、くく……存分にいたってからだがな……」

(どうしたら……)

 と、かかとが何かがふれた。
 目線はそのままに視界ギリギリに見れば、それは、さっき弾き飛ばされた通信機だった。

(……!! リバが誘導してくれた……?)

 考えてみれば、リバが本気なら、最初のかぎづめをよけられたはずがない。

(僕の声はリバに届いている……?)
「——む!?」

 仮面の男は何かを空中に描いた。

「う……うあああ……!!」

 リバは頭を両手で抱え、苦痛の声をあげた。
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