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絆
ヨディーレの矢
しおりを挟む「助けに来て遣ったぞ、リバ」
「……ずいぶん遅かったじゃないか」
リバは不機嫌に答えた。
「此方にも都合が有るのだ。拘束のユーグネアを施されて居るな。何れ、其奴を打ち砕く力を与えて遣ろう」
幻影は、指先で空中に何かを描く——が、途中でやめた。
ユクルユフェーアを描き切る前に阻まれたからだ。
(ヨディーレの矢……。アイツの力を跳ね返している……)
リバはつぶやく。
別名電気ショック——逆らえないようにルクフェネがリバに施したもの。
ただ、そのとき感じたのは決して刺々しい力ではなく、むしろ、リバを優しく包み込むようなぬくもりだった。
「思ったより堅いな。此方の力も強めよう」
「待ってよっ、先に教えてよ!」
「何だ?」
男は仮面の向こうで訝しむ。
「ボクには、あんたの名前や素性を話せないようにするユーグネアが掛けられてるっていうじゃないか」
「彼のアルテリウアに言われたのか? ふふ、我は用心深いのだ。気にする程でも有るまい」
「気にするに決まってる、話したら死んじゃうなんて聞いたらっ! どういうことなのか説明してもらう!」
「……。其れは彼のアルテリウアの偽りだ。施したユーグネアに其のような作用は無い」
「その証は!?」
「彼のアルテリウアの言葉にも証など無かろう。何方を信じるのだ? 従え、而して信じろ」
「……」
沈黙を了解と受け取ったのか、男は満足そうに頷いた。
「然うだ、御前は言われた通りに動けば良いのだ」
しかしリバは首を振った。
「……それじゃ、ほかの連中がボクらにいうことと同じじゃないか……。いわれたとおりに動けばいい? モミョ族は捨て駒じゃないっ! ルクやケイなら、きっと、ボクが信じられるようになるまで待ってくれる。『従え、而して信じろ』なんていわないっ!」
「やれやれ……」
男は指先で素早く紋様を描いた。
「なっ……!!」
「要らぬ知恵を付け居って」
「何をする! あ、あああ……!!」
頭が破裂するような苦痛に、リバはのたうち回る。
「やめろ、やめろ! うわあああ……!!」
「リバ!」
圭がプランシェを飛ばして駆けつけた。
とっさに仮面の男に体当たりする。幻影はかき消えた。
「だ、だいじょうぶ!?」
駆け寄ってのぞき込めば、リバは苦痛に表情を歪めながらも何とか起き上がった。
「……なんとか……ありがと、助かったよ……」
「まだ無理に動かないほうがいいよ。そうだ、ルクフェネに知らせなくちゃ!」
圭は、手首の通信機を操作しようとした——が、猛烈な殺気に思わず飛び退いた。
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