46 / 167
絆
いつか絆を結べたら
しおりを挟むリバは少しいいよどむ。
「手付金をもらってるんだ、それなりの金額で。新しい田んぼを拓けるから、きっと、小さな子供たちがお腹を空かすことも、ずっと少なくなると思うんだ……。でも、こうなったら、それはケイとルクに渡すよ……」
「その必要はないよ」
ルクフェネは答える。
「どんな理由であろうと、リバが受け取ったものなら、わたしたちは関係ないもの」
「ほんと!? きっと、みんな安心するよ!」
そればかりが心配だったようで、リバは緊張していた表情をようやく緩めた。
「わかる範囲でいいから、いくつか聞いていい?」
「うん」
「二十日兎が現れたのは正確に何日前?」
「星にやってきたのは8日前かな」
「8日前……」
ルクフェネはふと考え込む。
圭とリバは顔を見合わせる。
「そのとき、ここシモウサのことをいっていた?」
「それはわからない、対談したのは長だから。ボクがアイツと会ったのはその次の日だよ。ケイやルクも見たような幽霊みたいのじゃなくて、ちゃんとしたヒトだった。そのときから仮面を着けていたから、顔はわからないけど。……」
「?」
今度はリバが考え込むので、ルクフェネと圭は顔を見合わせた。
「これはボクだけなんだ、ほかのみんなにはわかってもらえなくて」
「かまわないよ。情報があるのならなんでも欲しいの」
「情報っていえるかどうかも……」
リバはなおも悩む——が、圭とルクフェネの表情を見て口を開いた。
「アイツのにおいは〈共和国〉っていうより、セーグフレードなんだ。理屈じゃなくて、ボクの本能っていうしかないんだけど。し、信じなくてもいいんだよ、それに、どっちにしたって、大した情報でもないし……」
「ううん」
ルクフェネは首を左右に振った。
「信じるし、それに役に立つ情報だったよ」
「ほんと!? ならよかったよ」
リバは本当に嬉しくなって破顔した。
そして2人を見つめる。
(……)
思ったのは、この2人のために何かをしたい——ということ。
いいよどんだとき、圭とルクフェネの表情に見たのは、自分に対する信頼だった。
だから、話してみようと、こころを決めたのだ。
(こんなボクに、敵のはずのボクに。……。ボクも、ケイとルクみたいに、いつか絆を結べたらいいな——)
ルクフェネはまた少し考え込んでいた。
リバの情報に引っかかるものがあるようだ。
圭は首を傾げる。
「どうしたの?」
「うん、ちょっとね」
ルクフェネは曖昧に答える。
「——そうだ、圭は大事を取って、もう帰ったほうがいいよ」
「もう大丈夫だよ、ルクフェネのおかげで。痛みもないし」
「それはいまだから。怪我を治せても、無かったことにできるわけじゃないの。落ち着いたらきつくなるから、とにかく静養することが大切。しっかり休んで体調管理することも仕事のひとつだよ」
0
お気に入りに追加
338
あなたにおすすめの小説
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
好感度MAXから始まるラブコメ
黒姫百合
恋愛
「……キスしちゃったね」
男の娘の武田早苗と女の子の神崎茜は家が隣同士の幼馴染だ。
二人はお互いのことが好きだったがその好き幼馴染の『好き』だと思い、恋愛の意味の『好き』とは自覚していなかった。
あまりにも近くにいすぎたからこそすれ違う二人。
これは甘すぎるほど甘い二人の恋物語。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる