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新宿アイル
新宿アイル(14)
しおりを挟む停止しているエスカレーターをさらに駆け降りれば、「JR新宿駅方面」と書かれた大江戸線新宿西口駅の改札口。
入ってすぐの階段を降りればホームだ。
(さすがにしんどくなってきたな)
モジャコは口許でつぶやいた。
四ツ谷駅から走りっぱなしで、新宿三丁目駅からはボーデの大群相手。
こと体力に関しては相当の自負はあるが、それでも限界はある。
(あとひと踏ん張り——)
自分にいい聞かせる。
「ゔ」
後ろからコルヴェナの呻き声が聞こえた。
「うぎゃー」でも「ふんぎゃー」でもない。
珍しいこともあるもんだ——と、ボーデをいなしながら肩越しに見返れば、コルヴェナはこめかみから流れ落ちる血を拭い、鮮血に染まったその手を呆然と見つめていた。
「コ、コルヴェナ!」
「……」
けれども呼びかけには答えず、コルヴェナは一気に加速した。
押し寄せてくるボーデを躱していく——まるでそこには何も存在しないかのように。
(やるな!)
モジャコは笑みを浮かべた。
(——ということは、こっちも、こんなところでへばってる場合じゃないかな!)
すぐに追いつき、コルヴェナの動きに合わせてボーデを受け流していく。
(水のように……)
誰かとともに道を切り開くときこそ、楙蓙流の真骨頂。
階段を駆け降り、ホームへ。
都庁前駅の方向、緩やかな右カーブの向こうに赤紫の光が見えた。
「アイルの発生装置でござる!」
ホームドアを跳び越え、線路に降り立つ。
ボーデがモジャコを包囲する。
間に入ったコルヴェナがガントレットで振り飛ばし、彼女の背後に迫ったボーデをモジャコが撃退する。
すでに、コルヴェナの小型コンソールからは秒読みが聞こえていた——。
ミチルとリグナ、デッサは副都心線の新宿三丁目駅に突入した。
「ボーデがほとんどいない」
ミチルは〈ティアの羽根〉でホバリングしながら周囲の様子を探る。
「コハクさんとコルヴェナさんが引きつけてくれてるんだ」
「……」
〝コハクさん〟とは。
リグナは、誰じゃらほい? と小首を傾げた……。
残存する改六型ボーデを掃討しながら突き進み、長いエスカレーターを駆け上がる。
登り切ったところが伊勢丹正面改札で、ちなみに出口専用。
短いエスカレーターと階段、そしてコンコースを駆け抜ける。
途中で、副都心線のホームから続く白で統一された空間が、レンガ風のタイルを基調にした落ち着いたものに変わった。
都営新宿線の改札を抜けて左手の階段を駆け降り、そのままホームから続くトンネルへ。
トンネルを抜ければ新宿駅だった。
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