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新宿アイル
新宿アイル(10)
しおりを挟む丸ノ内線には、地形の関係で地上を走る区間が3か所かある。
その1つが四ツ谷駅。
モジャコとコルヴェナは、駅の南側に降り立った。
地下を走ってきた丸ノ内線は、ここでトンネルから谷へ飛び出し、谷底を走るJR中央線を高架で越え、すぐにまたトンネルに吸い込まれる。
谷はかつての外濠の跡。
柵を乗り越え、斜面を下って線路へ。
モジャコとコルヴェナは、そのまま線路の上を走り、駅舎が覆いかぶさる新宿側のトンネルへ入った。
天井の低い箱形のトンネルだ。
新宿駅へ急ぐ。
リグナとミチル、デッサは、雑司が谷駅の1番出口の前にやってきた。
周囲は静かな住宅地で、背の高い建物はほとんどなく、確かに副都心線の駅らしくはない。
真上の道路には都電荒川線の線路もあって、停留場の名前は鬼子母神前。
道路は工事中のようで、あちこちがフェンスや白い鋼板で覆われ、工事関係の車両やオレンジ色の看板も多く、雑然としていた。
もっとも深夜とあっては物音はなく、照明がただ煌々と照らすだけ。
1番出口は換気塔を兼ねた小さな建物で、リグナがシャッターの鍵を壊して中へ侵入した。
非常灯だけの薄暗いなか、エスカレーターと階段のある空間を降りていく。
池袋方面とある改札口を通り抜け、さらにホームのあるフロアへ。
ホームドアを越えて線路に降りると、細いチューブ状の円形トンネルを新宿方面へ進んだ。
深夜の街を瑪瑙のバイクは走っていく。谷田橋交差点から不忍通りへ。
(ロートの追憶)
ハルは考える。
ルジェの民が円環を展開するための環状地下空間を構築しはじめたのは1923年9月。
これはまさに関東大震災が発生したときだから、あの大地震が結界を揺り動かしたと考えるのは正しいだろう。
一方で、場所の特定まではできなかったものの、ルジェはそれよりもまえに〈ロートの追憶〉がこの星に存在することは察知している。
それが1888年。
秋葉原という地名は、現在は松が谷にある秋葉神社がそこにあったことに由来する。
すぐには思い出せなかったけれども、その秋葉神社が秋葉原駅に場所を譲って立ち退いたのは明治21年——1888年。
秋葉神社にソニテがあって、その秋葉神社が秋葉原から離れてしまったから結界が弱まった——だからルジェは星の舟の存在を知ることができたのだ——と考えるのはどうだろうか。
偶然かもしれない。
しかし、ジシェが転移先として秋葉原を選んだのは、ヴォーユ・ア・ヴォエレ座標系上、抜群に安定している場所だからだ。
そうであるのなら、星の舟の眠りが妨げられないように施されていた結界、その制御装置であるソニテも秋葉原にあったのではないだろうか?
なにより、リグナは秋葉原に眠っていた。
秋葉原駅の中央改札口北側にある広場の真ん中。
そこは——まさに秋葉神社があったところ。
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