113 / 116
お花茶屋マンデーモーニング
お花茶屋マンデーモーニング(3)
しおりを挟むお花茶屋駅——葛飾区にある京成線の駅で、ハルとモジャコが通う高校は程近い。
月曜の朝、欠伸を噛み殺しながらハルは電車を降りた。
狭いホームは制服姿の高校生でいっぱいだ。
いつもと変わらない見慣れた風景——なのだが、多少いつもと違うこともある。
それは後ろに着いてくる2人。
ふふっ——と、コルヴェナは笑った。
「さっそくはじまるスクールライフ! ずばり、素敵ね!!」
テンションの高さに関しては、感覚が麻痺しちゃったのでもうどうでもよく、ハルの率直な感想はただひとつ。
(疲れないなー)
仮眠する時間もなくそのままだから、ハルはくたくたで、とにかく眠い。
「楽しみでなくて!?」
コルヴェナは後ろのロカに人さし指を突きつけた。
混雑のなか、いくらか遠慮がちに見えなくもないが、遠慮するくらいなら黙っていてほしい。
「そうだな」
ロカは棒読み。
2人ともハルと同じ制服姿だ。
コルヴェナはハルと同学年、ロカは1つ上ということで、じじいいわく、だったら高校に通えばよい!——となったわけで。
(じじいが理事長とツーカーなのは知ってるけど)
こんな急な編入がよくまあ許されたものだとハルは呆れた。
正確には交換留学生とかの扱いらしい。
しかしそれはともかく、どうやって制服まで用意したんだか。
謎。
デッサも一緒だが、いまごろ駅の屋根の上で待っているはず。
いわく、ガルバルデはこんな低速な移動手段には頼らない——とのこと。
へこたれないでネ、京成……。
反対方向、上野からの下り電車も到着したばかりで改札口はごった返していた。
モジャコを見つけてハルは声をかけた。
ハルほか約2名は京成船橋から上り電車。
モジャコは湯島から東京メトロの千代田線、町屋で京成線に乗り換え、下り電車でお花茶屋。
「おはよー」
「おう、おはようさん」
——と、ハルのバックパックにへばりついていた何かしらが、もそもそっと動き出してジャンプした。
「にょーん」
滑空してモジャコのモフモフ癖毛の上に着地したのはジシェだ。
「あれ! 帰ったんじゃなかったのか!?」
「パルノー殿も3日ほどこの星に残り、オーラ殿の見た風景をたどってみることになったのでござる!」
そんなわけでジシェも残り、リグナも同様。
モジャコはジシェを、わーい、わーい、と高い高いをして持ち上げる。
振り返れば雑踏の向こうで、丸眼鏡が欠伸をしながら手を振っていた。
コルヴェナがハルを追い越し、すばびよーん、と人さし指をモジャコに突きつける。
「おはようございますですわ、モヨコさん!!」
「お、おう……」
そしてコルヴェナは改札口の扉に引っかかって、盛大にチャイムを鳴り響かせた。
「ふふっ、あたしを止めようなんて、笑止!」
改札機に啖呵を切られましても。
その横の改札機を、制服を着たリグナがごくスムーズに、いつものことのように、パスモをタッチして通り抜けた。
その碧い瞳は相変わらず、なんじゃらほ~い、と澄まし顔だが、ちょっとだけ得意げではあった。
(おしまい)
0
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜
あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』
という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。
それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。
そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。
まず、夫が会いに来ない。
次に、使用人が仕事をしてくれない。
なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。
でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……?
そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。
すると、まさかの大激怒!?
あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。
────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。
と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……?
善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。
────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください!
◆小説家になろう様でも、公開中◆
幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ
黒陽 光
SF
その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。
現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。
そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。
――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。
表紙は頂き物です、ありがとうございます。
※カクヨムさんでも重複掲載始めました。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
転生したら人気アイドルグループの美人マネージャーになって百合百合しい展開に悩まされている件
きんちゃん
ファンタジー
アイドル、それも国民的人気グループともなれば、毎日楽しく活動して、周りからもチヤホヤされて無敵の日々でしょ?ルックスだけで勝ち組の彼女たちに悩みなんてあるわけがない!
……そんな風に思っていた時期が俺にもありました。いざ内部に入ってみると、結構……いや、かなり大変です。
松島寛太。地味ながらも人のために一生懸命働いてきた彼だけれど、結局それが報われることはなかった。
しかし哀れに思った天使が生まれ変わることを認めてくれるかもしれない?認められた条件は「大人気のアイドルグループのために人生を捧げる」ということだった。……自分自身いまいちピンと来ていない条件だったが……いや、捧げるってのはどういう意味なの?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
闇の世界の住人達
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
そこは暗闇だった。真っ暗で何もない場所。
そんな場所で生まれた彼のいる場所に人がやってきた。
色々な人と出会い、人以外とも出会い、いつしか彼の世界は広がっていく。
小説家になろうでも投稿しています。
そちらがメインになっていますが、どちらも同じように投稿する予定です。
ただ、闇の世界はすでにかなりの話数を上げていますので、こちらへの掲載は少し時間がかかると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる