新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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面影橋メモリーズ

面影橋メモリーズ(8)

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 モジャコは身を低くして一気に加速した。
 向かってくるボーデをあしらうようによけていく。

 そしてその中の1つを流れのままに右脚でいなし、地面に勢いよく叩きつけた——が、ボーデはバウンドして跳ね返った。

「なんだ……!?」
「ボーデには打撃は効かないでござる!」
「それを早くいえっ!」
「むう」

 いちおう説明しようとはしていたんですよ。

 高架線の上に跳び上がったリグナは、右脚からクロイツェルを分離し、ハンドガンに変形した。

 ボーデを狙う——が、ボーデは壁や別の個体にぶつかって跳ね回るものだから、簡単にはいかない。

 モジャコのポケットの中で携帯電話ケータイが震えた。
 ボーデをかわしながら、背面のサブディスプレイを確認する。

 ハルからメール着信だ。

 ああそういうことか——と、モジャコはようやく合点がいく。
 が、スクロールするメッセージは、ごく簡潔にこう伝えていた——。

 渡しても構わない。

(???)

 ハテナマーク再びどっさり。

 ともかく、モジャコは、ニットキャップにしがみついたモモンガもどきを、尻尾を引っつかんでぶん投げた。

「いったん、こっちへ!」
「みょーん」

 もうどうにでもなれってね。
 滑空してリグナの背中にひっつく。

 伝言を聞いて、リグナはモジャコの横に降り立った。

「無理に奪還しなくてもいいことになった。怪しまれない程度に追いかけて戻る」

 眠そうなそうぼうで、なんじゃらほい? とリグナは小首を傾げた。


 わかったのかどうかはまるでわからないが、リグナは、高架線を足がかりにマンションの屋上に躍り出た。

 クロイツェルをバズーカに変形して肩に担ぐ。
 線状の光が、周囲から砲口に収束する。

 トリガーを引き絞れば、後ろから勢いよく白い光が噴き出した。

 同時に放たれたあおい光弾は、一直線に飛んでいってデッサの背中を直撃。
 激しい電撃に包まれながらデッサは地面に落下した。

「ハンパねーな……」

 モジャコは呆れる。
 手加減がまったくない。

 リグナは右脚にクロイツェルを戻し、涼しい顔(といってもいつもそうだけれども)で降り立った。

「デバイスとメディアがどうなったのかは知らない」

 あ、そう——と、モジャコは意図を理解した。

 取り戻す必要がないのなら、遠慮も忖度もいらないということ。

 気の毒なのはジシェで、リグナの背中にへばりついたまま目を回していた。

 ハルはもとの場所で待っていて、「おかえり」と手を振って迎えた。
 合流して線の駅へ歩いていく。

「電車の中でリグナちゃんを調整していたとき、こんな1文があったの」

 ハルはスマホの画面をモジャコとジシェに見せた。

(ん……んん!?)

 何か猛烈な違和感を感じたが、モジャコはとりあえず話を聞くことにした。
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