新宿アイル

一ノ宮ガユウ

文字の大きさ
上 下
45 / 116
広尾デリヴァランス

広尾デリヴァランス(1)

しおりを挟む

4. 広尾デリヴァランス

 モジャコは左手のグーを右手に叩きつけた。

「セキュリティ解除コード……どうやら核心に近づいてきたみたいじゃん」
「ふふっ! まさにそのとおり!」
「……!」

 振り返れば、いつの間にかコルヴェナが背後に立っていた。
 ——生乾きの状態で。

 ローズレッドの制服からも縦巻きロールの髪からも水がしたたちていた……。
 濡れたままの左腕を伸ばして、ばばん、とモジャコに指を突きつける。

「今度こそチェックメイトね、モヨコさん!!」

(微妙に名前覚えてもらえた)
(めげないなあ……)

 と、ハルは、スマホの画面の中で、地図の範囲が自動で変わっていることに気がついた。

(次の場所だ……)

「さあ、張り切っていきましょうね!!」

 コルヴェナは突っ込んできた。
 モジャコは体勢を整える——が、予想に反し、コルヴェナはモジャコの間合いをけた。

「え……あ! しまった!!」

 モジャコはすぐに意図を理解したが——遅い。
 コルヴェナはハルに向かって脚を振り上げた。

「きゃっ!」

 ハルは身をすくめることしかできない。
 コルヴェナのハイキックはハルの手をかすめ、スマホとメモリーカードは空中に舞った。

 同時に——鈍い金属音が響いたかと思えば、高速で向かってきたデッサのパンチをリグナが両手で受け止めていた。

 装甲が焼け焦げたように黒ずんでいる以外、デッサに特段の異常はないようだ。
 ただ、心なしか目が血走っているようにも見えた。

 2人はそのまま建物の上へ跳び上がった。


 コルヴェナは、空中でスマホとメモリーカードをキャッチした。

「ずばり策士! アイルを完成させるためなら手段を選ばず!」

 得意満面——だったのだが、その表情はあからさまにフリーズした。
 何か口を滑らせたらしい。

「い、いまのはナシで!!」
(アイル?)

 攻撃の手を休めないままにモジャコは反芻した。

 コルヴェナはモジャコの攻撃をかわしながら雑踏の中を逃げていく。
 公園へ続く狭い通りだ。

「速力アップで逃げ切らせてもらうわ!」
(だからいわなきゃいいのに)

 半透明のガントレットとブーツが右腕と左脚に実体化し、ブーツはあかい電撃をまとって火花を——散らさない。

「ええっ!? なんで!?」
(水没したからだろ……)

 コルヴェナの動きが一瞬もたつく。すかさずモジャコは前へ出た。

「ふふん! この剛腕のガントレットに敵うと思って——って、あらら!?」
(それはリグナに破壊された)

 モジャコは遠慮なく腕をとってコルヴェナを投げ飛ばした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』 という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。 それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。 そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。 まず、夫が会いに来ない。 次に、使用人が仕事をしてくれない。 なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。 でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……? そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。 すると、まさかの大激怒!? あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。 ────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。 と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……? 善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。 ────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください! ◆小説家になろう様でも、公開中◆

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

闇の世界の住人達

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
そこは暗闇だった。真っ暗で何もない場所。 そんな場所で生まれた彼のいる場所に人がやってきた。 色々な人と出会い、人以外とも出会い、いつしか彼の世界は広がっていく。 小説家になろうでも投稿しています。 そちらがメインになっていますが、どちらも同じように投稿する予定です。 ただ、闇の世界はすでにかなりの話数を上げていますので、こちらへの掲載は少し時間がかかると思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

日本国転生

北乃大空
SF
 女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。  或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。  ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。  その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。  ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。  その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

処理中です...