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銀座ステレーション
銀座ステレーション(12)
しおりを挟むボンタンアメ。
それは都こんぶと双璧をなす、メジャーではないがマイナーでもなく、流行るでもなく廃れるでもない、なんだかよくわからない定番の駄菓子。
そのクラシックな藍色の箱には黄色いボンタンが描かれている。
ハルは苦笑した。
「またレトロなものを」
「地下鉄に乗ってる巫女さんよりはポピュラーじゃないかな」
「ぐうの音も出ません、ハイ」
突き当たりの4番出口から、ハルたちは地上へ出た。
「芳醇でありながら爽快な香り、モチモチとしていながら溶けゆく食感。あれは至高の食べ物に違いあるまい」
ボンタンアメを食したジシェの感想である。
喜んでもらえるのはいいことだが、モジャコは複雑な気分になった。
地上に出たところが室町三丁目交差点——改札口でも案内されていたところ。
周辺はオフィスビルが立ち並ぶ純然たるビジネス街で、休日のこの日、銀座からは打って変わって人通りはまばらだった。
お店もほとんど営業していない。
広い中央通りの右手の歩道を北方向、神田駅のほうへ歩いていく。
〈追憶のカケラ〉を示す光点は、次の信号を渡った先で点滅していた。
とりたてて何も無さそうな場所だ。
ハルはスマホの画面を確認しながら歩いていく。
それを、モジャコが手で制止した。
「なんか来る……!」
いい終わるまえにコルヴェナが出現した。
いきなり目の前といった感じだ。
間を置いてデッサが隣に降り立つ。
「ふふ」
コルヴェナは、ででんっ、と指を突きつけた。
「建物の上ではなく目の前に出現するなんて、驚いたかしら! 同じ手には二度と乗らなくてよ!」
決まった——と、悦に入る。
(こっちが仕掛けたもんじゃないし)
(仮にそうだとしても、同じ手に二度、乗ってるし)
疲れる……。
コルヴェナは続ける。
「しかも、今回は〈追憶のカケラ〉の実体化は阻止させてもらうわ! ルドゥフレーデの急激な能力アップのからくり、解き明かしてよ!」
同時に、周囲から粒子が集まってバリバリとスパークしたかと思えば、コルヴェナの右腕と左脚を何かが覆った。
ガーネット色の電撃をまとった半透明のガントレットとブーツだ。
両目には同じ色のゴーグルが装着された。
(なんか出した……)
(うわ……)
モジャコとハルは素直に驚いた。
2人の表情にコルヴェナは満足する。
「腕力と速力と動体視力アップ! ちなみにブーツは触れたらビリビリ痺れる効果付き! 切り札は隠し持っておくものね!」
(いわなきゃいいのに……)
(切り札は隠し持っておくもの……至言かも)
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