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銀座ステレーション
銀座ステレーション(1)
しおりを挟む2. 銀座ステレーション
「なんと、やはりか……」
絞り出すようにジシェはつぶやいた。
上野広小路駅を発車した電車は、レールを軋ませながら急カーブを曲がっていく。
「その人、〈追憶のカケラ〉を残した人だよね?」
ハルが質問する——が、答えようとするジシェを、モジャコは遮った。
「ここだとアレだし。——で、そのカケラのひとつって、浅草あたりじゃなかったっけ?」
アレとはなんぞや? とアレはきょとんとする。
そんなソレを見て、ハルはスマホの画面を切り替えた。
(ほかのインパクトが強過ぎて、モモンガもどきがしゃべってるの、なんとも思わなくなってたかも)
画面には、6キロメートル四方を収める地図が表示されていて、現在位置のほか、3つの点が明滅を繰り返していた。
モジャコがいうように、そのうちの1つが浅草付近にある。
モジャコはドアの上の路線図を見上げた。
「稲荷町駅で降りるとちょうどよさそうだな」
上野駅では、乗り降りする人が多く、ドアの前を開ける。
駅を出発すると、電車はまた急カーブを曲がっていく。
ほどなく稲荷町駅。
末広町駅と同じように、改札口を抜けて階段を上れば、地上はすぐだった。
リグナは、自動改札をそのまま通ろうとして、またチャイムを鳴らす。
背後には大きく、なんじゃらほーい? の文字が浮かぶ。
「降りるときもタッチするの」
「?」
ハルに教えられ、リグナはぎこちなくタッチして通過。
3番出口の前でハルは画面を確認した。
地図は自動で拡大され、〈追憶のカケラ〉を示す点はずっとはっきりしていた。
稲荷町駅は、東西方向の浅草通りと、南北方向の清洲橋通りとが交わるところにあった。
銀座線は浅草通りの地下を走っていて、光点は、東隣の田原町駅のほうが近いが、通り1本分くらいの差で、困るほどでもない。
周辺はいわゆる下町と呼ばれる地域で、通りの名前になっている浅草も目と鼻の先。
とはいえ、大きな通りとなれば都内のどこでも見られるように、両側には、マンションや中規模の商業ビルがありきたりにずっと立ち並び、平凡で日常な風景だ。
ただ、目に付くのは仏壇や仏具を扱う店で、大通りから一歩入ればやたら寺社も多く、そこが古い寺町であることを物語っていた。
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