葛宮葬儀屋の怪事件

クズ惚れつ

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第四話 水川弓月とエセ占い師

4 サミシイ言えたら、愛してあげる *R18

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 痛みの方が、まだましだ、耐えられる。耐えられなくても、贖罪だと自分を納得させることができる。苦しみに理由と救いができる。

「もっといたく、痛くして、痛く、いたく」
「あなたのそれ、罰ちがうよ。おなにー、マスターベーション一緒よ。本物の痛み、感じたら目え覚めるネ」

 占い師はしがみつく弓月の腕を振りほどくと、そばに置いてあった鞄に右手を伸ばした。
 取り出したのは、ピアッサーだった。
 弓月はそれが何なのか、理解をしていなかった。
 困惑する弓月の白シャツの中に手を差し込み、消毒を施すと左乳首にピアッサーをあてがってバチンっと音を立てて針を突き立てた。

「ぎゃあ"ぁ"あ"あ"あ"あ"ーーーーーっ!!ひぐっいだぁ"…♡痛"い"ぃ"♡血…血出て…出てる…ぁぁぁ"…♡」

 突然乳首に針で穴を開けられ、あまりの激痛に弓月は絶叫を上げた。
 針が通った瞬間、尻穴をぎゅぅうっ♡と強く締め付け、占い師はそのあまりの締め付けにうめき声を上げた。
 赤い粒のような血が穴から滲むのを熱っぽい視線で凝視。
 痛みを抑えたいのに、乳首という部位をどうしたらいいのかわからない。
 占い師は素早い手つきでティッシュで血を拭い、持っていた金属のリングピアスをさっと左乳首に装着した。

「はぁ…あ”…穴……♡痛い”…っ…乳首……♡」

 自身の乳首に淫乱のような、あるいは支配の証のようなピアスがつけられて、屈辱と痛みで目が潤む。
 しかしすぐさま、震える指先が耳たぶをなぞり、右乳首、へそ、亀頭、そして唇、鼻をなぞる。完全に無意識だった。
 まるでそこにも穴を開けて欲しがるように、痛みを媚びるように。
 指は最後に口内に辿りつき、赤くなるほど舌を摘まんで引き出した。口の端からだらりと唾液がこぼれ落ちてシーツに糸が垂れる。ぐちょぐちょの口内は官能を通り越してもはや下品なほど淫らに蠢いていた。
 冷ややかな目元がぼんやりと紅く染まり、悩ましげに眉を寄せる弓月の表情は酷く嗜虐欲を煽った。
 涙も鼻水も唾液も垂れ流して顔中を汚しながら、体に穴を開けてくれと必死にねだる。痛みを与えてくれと媚びる。
 しかし、占い師はピアッサーを床に放り投げ、激しい律動を再開した。
 馴染んでちんぽに絡みついていたとろとろの肉襞を引き剥がしては、結腸まで突き入れる。

「はあぁあ♡いく……いくぅっ♡イくぅ"っ♡あ"あ"あ"♡♡やめ"ろぉお"お"っ♡♡」

 反射的に手足をバタつかせ、シーツを搔きむしり、甘い声で泣き叫ぶ。
 せっかく痛みが来たのに、また快楽に上塗りされる。
 痛みすら快楽に変換され、贖罪という逃げ場さえ塞がれる。
 極度の快感で思考回路がぐちゃぐちゃに繋がり、手足はぎゅうと占い師の体を抱きしめるのに、言葉は拒否を続ける。
 混乱して、もう何も考えないようにして、ただ占い師の律動に調子を合わせるように、弓月も全身を揺らした。
 ひときわ大きく腰を突き入れられると、腹の奥の奥に熱い体液がかかるのを感じて二人は同時に絶頂を迎えた。
 お互いの荒い呼吸が皮膚にかかる。
 絶頂を迎え、かつ腰振りが止まったせいか、弓月は我を取り戻し占い師の腹を足で思い切り蹴り上げた。

「痛っ……!」
「離せっ…離れろ!変態っ…俺に触るな!」
「気持ちよかったデショ?愛される、実感沸いたネ」
「……要らない、そんなもの、望んでないっ!」

 悪態をつく弓月の両手を自身の両手で包んで、占い師は言った。

「……結局アンタ、さみしいダケヨ」
「俺が……寂しい……?」
「家族イナイ、一人ぽっちの弟ともケンカ、育ての親も愛してくれなくて、金持ちに成り上がるためにウソっぱちの関係作って、大事なモノぜーんぶ切り捨てごめんヨ」

 自分の過去やプライベートを知っているということは、きっとこの占い師の占いは本物なのかもしれない。
 しかし、、この際もうどうでもいい。

「……何を知ったような口を……俺は…そんな弱い人間じゃない」
「サミシイ言えたら、愛してあげる」
「黙れ!!」

 今度は手足を暴れさせた。
 酔いも醒めてきたせいか、成人男性の本気の抵抗に占い師も慌てたようだった。
 なだめる様に両手首をつかみながら、占い師は思わず叫んだ。

「……ユヅキっ!」

 弓月はハッと顔を上げた。

「……なんで俺の名前を知っているんだ」
「……!な………………なんでもワカル言ったでしょ?」
「名前なんかわかるものか……離せっ!俺に触るな!」

 再び、今度は全力で腹を蹴り上げると、痣になるほどの痛みで占い師はよろけ後ろに後ずさった。
 弓月は震える声を絞り出した。

「最初から全部知ってて、哀れな男だと俺を嘲笑ってたのか」
「ちが……!」
「あるいは俺を脅すつもりだったのか?写真かなにかを撮って揺すって、金でもむしりとる気だったのか」
「話を」
「こんなっ…ふざけたエセ占い師の真似して、いいようにされる俺はさぞ滑稽だったろうな…?」

 弓月は肩を震わせながら、顔を腕で隠した。

「これ以上俺を……惨めにしないでくれ……っ!」
「違う、そんなつもりじゃ……ごめん、ごめんね」

 占い師は急いで自身の髪を乱し、張り付いたような笑みを消した。
 今までの芝居じみた態度が嘘のように、ただの一人の気弱な青年のように、恐る恐る弓月に近づいた。

「僕……リウだよ、劉浩然リウハオラン。…覚えてない?」

 占い師がその名を口にした瞬間、弓月の頭に走馬灯のように映像がなだれ込んできた。
 放課後の教室、一つの机を挟んで座りながら、他愛もない話をして、初めて打算なしで心を開けた友人。
 最後に心の底から笑えた、顔も名前も忘れていた、生涯でたった一人の「友人」。
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