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第三話 異世界エレベーターと王子様
8 オカルト雑誌で宣伝すれば死体も効率よく集められるか…
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バアン!と勢いよく扉が開き、バリバリのスーツの大男が入ってきた。雑誌の編集長。見た目からして3,40歳ほどで、眉をキリリと寄せた堅物そうな鉄仮面。
開口一番。
「うちの記者が失礼しました。」
「ひっ!要さん!?なんでここに!」
男の顔を見るなり狼狽して逃げ出そうとする氷堂。
「誰ですか?」と聞く間もなく、要と呼ばれた男は氷堂の服の襟首をがっと掴んで自身の方へ引き寄せた。
「試し行動をするのはやめろと何度言ったらわかる」
「試し行動!?何を冗談を、僕の能力を俗物に落としているのはあなたでしょ!?」
「今度は被害妄想か……いいか」
氷堂の顎をグイっと乱暴につかんで、自身の方を向かせると顔と顔が10数センチの距離に接近する。
「文章もロクにかけない、社会の常識も知らない高卒の役立たずをうちに入れたのは、温情などではない。8年もここにいてまだわからないのか」
「……僕のこと…道具としか思っていないくせに…!僕の能力を、本当は気持ち悪いと思ってるんでっぶふぉおっ」
さらに頬をぎゅむっと強く掴んで、口をつぐませた。氷堂の背が仰け反るほどの圧をかけて、鉄仮面のまま語りかける。
「自惚れるな、お前の『異世界を作る能力』とやらにそこまでの利用価値を見出していない、まだな」
「……へ?」
「頭の回転の速さ、人の懐に入りこむ愛嬌、人を騙しぬくタフさ、記者に不可欠なポテンシャルをお前は秘めていた」
我ら葛宮葬儀屋の面々は完全にほったらかし状態、完全に二人の世界である。
「お前という人間そのものを評価されて、今お前はここにいる。俺たち編集部は皆、そう思っている」
「かなめ……さ」
そのまま氷堂はボコン!という音を立ててたんこぶができるほどぶん殴られた。
「い"っだぁ……!!」
「わかったら今すぐ仕事に戻れ、業務時間中に油を売った始末書を書かせるからな」
氷堂から離れた要という男は、きびきびとした動きで葛宮の前まで歩いてきて、お手本のような所作で名刺を渡した。
まるでトップが葛宮であることを知っていたかような動きだ。
「月刊ミステロの編集長、要と申します。この度はうちの氷堂がご迷惑をおかけしました。一個人の勝手な行動でありミステロは関与してませんので悪しからず」
「いやぁ面白いものが見れたよ、ありがとう」
「オーナー何感謝してんですか!?」
「感情むき出しの晴瀬、面白かったなあ」
ニマニマするオーナー、軽く舌打ちをする晴瀬。晴瀬も激昂が収まり、我に返ったようで俺はほっとした。
リアルに俺のために争わないで!状態を経験することになるとは思わなかった。乙女の憧れだか何だか知らないが、当事者になると怖いぞこれ。
要はおもむろに胸ポケットから手帳とペンを取りだし、葛宮に迫って言った。
「ところで、この葬儀屋は除霊師が常駐しているとのことですが、超常現象によく巡り合うのではないですか?ちょっとお話聞かせてくださいよ」
「おいこんなところで記者魂発揮すんな!ずうずうしいぞ!」
晴瀬が叫ぶ。
ってあれ?なんでこの編集長、俺たちのことを知って……。
「あーー!!一個人の勝手とか言いながらやっぱり俺のことミステロに引き入れるつもりだったんですか!?」
「……引き入れる話が持ち上がっていたのは本当です。しかしこのような無謀な計画を立てたのはこのバカの独断ということです」
と言って、要は氷堂の耳をぐいっと引っ張った。王子様のはずだった男が子どものように怒られているのはちょっと面白い。
「で、どうです?」
「オカルト雑誌で宣伝すれば死体も効率よく集められるか……」
「馬鹿な事考えないでください!悪事がばれて下手すりゃ捕まりますよ」
乗り気な葛宮を抑えるが、はなから葛宮は本気ではなかったらしい。ニヤリとずる賢く笑った葛宮。
「まぁでも、僕の大事な部下たちを傷つけた責任はとってほしいものだねぇ?」
「……氷堂、行くぞ」
脅しのようなその言葉にこれ以上この場に長居したら不味いと察したのか、バツの悪そうな顔をして編集長は氷堂の耳を引っ張って扉に向かう。
「あなた方も、ここは出版社の会議室ですから速やかにご退室願います」
そう言い残し、二人は完全に部屋を出ていった。はぁ、誰からともなくため息が漏れ、一気に緊張が解ける。
その静寂を破り、晴瀬は俺に声をかけた。
「久遠、余裕のないところ見せて悪かった」
「……俺は情けなかったですよ。あんたに守られるだけの自分が」
「んなこと……」
「何の力もない俺が、霊能力者の晴瀬さんと対等になりたいなんておこがましいけど、多分あなたを大事に思う気持ちは、負けてないんじゃないかな、なんて……」
くそ、言ってて恥ずかしくなってどうする。
耐えろ俺!晴瀬がいつものニヤニヤいけ好かないにやけモードに入ってるけど、知ったこっちゃない!
俺は覚悟を決めた。
「だから今度あんたのこと、聞かせてください。気持ちも対等になりたいから」
開口一番。
「うちの記者が失礼しました。」
「ひっ!要さん!?なんでここに!」
男の顔を見るなり狼狽して逃げ出そうとする氷堂。
「誰ですか?」と聞く間もなく、要と呼ばれた男は氷堂の服の襟首をがっと掴んで自身の方へ引き寄せた。
「試し行動をするのはやめろと何度言ったらわかる」
「試し行動!?何を冗談を、僕の能力を俗物に落としているのはあなたでしょ!?」
「今度は被害妄想か……いいか」
氷堂の顎をグイっと乱暴につかんで、自身の方を向かせると顔と顔が10数センチの距離に接近する。
「文章もロクにかけない、社会の常識も知らない高卒の役立たずをうちに入れたのは、温情などではない。8年もここにいてまだわからないのか」
「……僕のこと…道具としか思っていないくせに…!僕の能力を、本当は気持ち悪いと思ってるんでっぶふぉおっ」
さらに頬をぎゅむっと強く掴んで、口をつぐませた。氷堂の背が仰け反るほどの圧をかけて、鉄仮面のまま語りかける。
「自惚れるな、お前の『異世界を作る能力』とやらにそこまでの利用価値を見出していない、まだな」
「……へ?」
「頭の回転の速さ、人の懐に入りこむ愛嬌、人を騙しぬくタフさ、記者に不可欠なポテンシャルをお前は秘めていた」
我ら葛宮葬儀屋の面々は完全にほったらかし状態、完全に二人の世界である。
「お前という人間そのものを評価されて、今お前はここにいる。俺たち編集部は皆、そう思っている」
「かなめ……さ」
そのまま氷堂はボコン!という音を立ててたんこぶができるほどぶん殴られた。
「い"っだぁ……!!」
「わかったら今すぐ仕事に戻れ、業務時間中に油を売った始末書を書かせるからな」
氷堂から離れた要という男は、きびきびとした動きで葛宮の前まで歩いてきて、お手本のような所作で名刺を渡した。
まるでトップが葛宮であることを知っていたかような動きだ。
「月刊ミステロの編集長、要と申します。この度はうちの氷堂がご迷惑をおかけしました。一個人の勝手な行動でありミステロは関与してませんので悪しからず」
「いやぁ面白いものが見れたよ、ありがとう」
「オーナー何感謝してんですか!?」
「感情むき出しの晴瀬、面白かったなあ」
ニマニマするオーナー、軽く舌打ちをする晴瀬。晴瀬も激昂が収まり、我に返ったようで俺はほっとした。
リアルに俺のために争わないで!状態を経験することになるとは思わなかった。乙女の憧れだか何だか知らないが、当事者になると怖いぞこれ。
要はおもむろに胸ポケットから手帳とペンを取りだし、葛宮に迫って言った。
「ところで、この葬儀屋は除霊師が常駐しているとのことですが、超常現象によく巡り合うのではないですか?ちょっとお話聞かせてくださいよ」
「おいこんなところで記者魂発揮すんな!ずうずうしいぞ!」
晴瀬が叫ぶ。
ってあれ?なんでこの編集長、俺たちのことを知って……。
「あーー!!一個人の勝手とか言いながらやっぱり俺のことミステロに引き入れるつもりだったんですか!?」
「……引き入れる話が持ち上がっていたのは本当です。しかしこのような無謀な計画を立てたのはこのバカの独断ということです」
と言って、要は氷堂の耳をぐいっと引っ張った。王子様のはずだった男が子どものように怒られているのはちょっと面白い。
「で、どうです?」
「オカルト雑誌で宣伝すれば死体も効率よく集められるか……」
「馬鹿な事考えないでください!悪事がばれて下手すりゃ捕まりますよ」
乗り気な葛宮を抑えるが、はなから葛宮は本気ではなかったらしい。ニヤリとずる賢く笑った葛宮。
「まぁでも、僕の大事な部下たちを傷つけた責任はとってほしいものだねぇ?」
「……氷堂、行くぞ」
脅しのようなその言葉にこれ以上この場に長居したら不味いと察したのか、バツの悪そうな顔をして編集長は氷堂の耳を引っ張って扉に向かう。
「あなた方も、ここは出版社の会議室ですから速やかにご退室願います」
そう言い残し、二人は完全に部屋を出ていった。はぁ、誰からともなくため息が漏れ、一気に緊張が解ける。
その静寂を破り、晴瀬は俺に声をかけた。
「久遠、余裕のないところ見せて悪かった」
「……俺は情けなかったですよ。あんたに守られるだけの自分が」
「んなこと……」
「何の力もない俺が、霊能力者の晴瀬さんと対等になりたいなんておこがましいけど、多分あなたを大事に思う気持ちは、負けてないんじゃないかな、なんて……」
くそ、言ってて恥ずかしくなってどうする。
耐えろ俺!晴瀬がいつものニヤニヤいけ好かないにやけモードに入ってるけど、知ったこっちゃない!
俺は覚悟を決めた。
「だから今度あんたのこと、聞かせてください。気持ちも対等になりたいから」
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