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第三話 異世界エレベーターと王子様
1 非モテ童貞大学生代表としてあんたを今抹殺したいですよ *R18
しおりを挟む第三話 異世界エレベーターと王子様
汐見の肉じゃが事件が終わった後、晴瀬に言われた言葉を俺は無下にはできなかった。
「誰のご褒美えっ……えっちですか」
「俺のに決まってんだろ」
初めて晴瀬の家に招かれた俺は思ったより汚い家にビビっていた。
顔もスタイルも上の上で、女にもモテまくる小綺麗なイケメンだから家もスタイリッシュなもんだと思ってたが…。
脱ぎっぱなしの服、食べっぱなしのコンビニ弁当。
まあ確かに、普段着ている灰色のくたびれたトレーナーを思い出すと、こんな部屋に住んでいることもうなづける。
「俺が自分の部屋に誰かを入れるなんて初めてなんだからな、ありがたく思えよ」
「まず掃除からですね」
「なんだと!?」
机の上に転がった野菜ジュースのパックに手をかけようとした瞬間。
晴瀬は俺の手首を掴んで、そのまま横にあった敷き布団の上にどしんと押し倒す。
マットレスならまだしも、せんべい布団に叩きつけられ頭を強打。
「あだああっ!」
「これ以上『待て』するつもりかよ、俺はもう数年待ってんだよ」
「何をご冗談を!?散々セクハラして来た癖に!」
「わかったんだろうが…俺の感情を」
知ってるか?
イケメンが真面目な顔をすると、ずるい。
いつものおちゃらけた雰囲気でいてくれたら俺だって恨み節や皮肉をのたまえる。
だけど、こんな雰囲気にされちゃ、嫌でも流される。
これが晴瀬の常套手段である可能性を捨てきれず、俺はまだ流されてやらない。
「俺のこと、好きだったんですか?それならなんで嫌がることして来たんすか」
「……俺はその、なんだ、今まで女の客相手に商売してきただろ。枕ってほどじゃねえけど、たらしこんで来たわけだ」
「えらいぶっちゃけましたね」
「自分で言うのもなんだが俺の容姿は超絶いい。鉄壁の女から名の知れた女優までいろんな女を相手にしてきた」
「非モテ童貞大学生代表としてあんたを今抹殺したいですよ俺は」
「そんな俺が…今更平凡なガキ、しかも男に『愛してる』なんていうアホみたいに純粋で一途な感情を抱いてるなんて、俺だって認めたくねえ」
それじゃ何か?
恋してる自分を認めたくなくていじめちゃう男子小学生みたいな発想で俺にセクハラを繰り返したと言うのか、最低じゃねえか!
「信じらんねえ~イケメンならなんでも許されると思ってる典型的な奴~~。平成ならまだしも、令和じゃ流行りませんよ」
「あのなぁ、今俺は恥を忍んでお前に本心を告げたんだが」
「……なんか言いましたっけ?」
え、最低発言が衝撃的すぎてなんも聞いてなかった。
本心ってなんだよ、確か俺が平凡で、ガキで、そんな俺のことを。
「『愛してる』って言ってんだ」
寝転がる俺の顔を覗き込んで言った。
ワンレングスの紫髪が、サラリと前にかかる。
いつもは気だるそうにしか見えない瞳は、よく見ると大きくて綺麗な形をしてる。
言い終わらないうちに、その白い頬は軽く紅潮する。
冗談なんかじゃないことを悟る。
俺までつられて紅潮、なんだかこっぱずかしくて心臓がバクバクいってる。
「晴…瀬、さ……」
「今くらいは真面目に愛させろよ」
晴瀬の慣れてる手つきにちょっとムッとする。
あれよあれよと服を脱がされ、二人でシャワーを浴びて、ワンルームのせんべい布団の上だと言うのに、呼吸が荒くて苦しくなるほど自分が興奮しているのがわかる。
「は……はぁっ……♡…ぁ…♡」
全身を撫でられ、キスを落とされ、乳首を摘まれて、髪をかき混ぜられる。
冷たいシーツと、晴瀬の体温が気持ちよくて、撫でられているだけで軽くイってしまいそうになる。
「やば…どうしよ……っ…晴瀬さ…気持ちぃっい♡」
「可愛すぎだろ……」
除霊として体を繋げることは何度もあったけど、こんなちゃんと愛し合ってます、みたいな行為をするのは初めてで酷く恥ずかしい。
どうせ童貞だし…俺に勃つようなモノ好きは晴瀬くらいだ。
さぞかし俺は余裕なく見えているのだろう。
いつだって晴瀬が俺と繋がる時は、痛くないように、苦しくないように、細心の注意を払ってくれていたのだと、今になってわかる。
向かい合った姿勢で俺は震える脚をおっぴろげる、見開いた眼は無意識に潤む、あまりにも恥ずかしくておかしくなりそうだ。
腕も膝も力が入らなくて、ガクッガクッと何度も折れるけど、なんとか足を閉じないように筋肉を痙攣させる。
上げた尻に、晴瀬の細く角ばった指が三本飲み込まれて、俺の腹をぐちゅぐちゅにかき乱していた。
「ひぐっ……♡は、る……ぁ…♡」
ぞくぞくする、尻がめちゃくちゃにされているのがわかる。自分が男じゃなくなるみたいで酷く怖い。
晴瀬はこんなに格好良くて、だらしがなくてもどこか人を誑し込む才能があって、どこに行っても誰と会ってもきっと上手くいくのだろう。
なんで、俺に優しくするんだ、俺を抱くんだ、俺はこんなぐちゃぐちゃで、気持ちよくされて、何も返せなくて。
あんたみたいに男前でカリスマ性があってモテる人間は、相手なんか選び放題遊び放題でしょ。
何でよりによって、俺みたいな男を選ぶんだ。
「俺みたいな……不幸で、ぅっ…うだつが上がらなくて……鼻水垂らして汚い顔晒して、情けない声を上げて……あんたのことを蹴る俺を、おもちゃにする意味がわかりませんっ……」
自分で言ってて悲しくなってくる。晴瀬と俺が自分が釣り合わないとわかっているから、どうしても自分を卑下してしまう。
しかし、晴瀬は怒るでも、呆れるでもなく、ただ俺の体を抱きしめた。
「不幸で、うだつが上がらなくて、霊に怯えて震える指で縋り付いてきて、鼻水垂らして気持ちいいってとろけた顔して、必死に抑えても漏れ出る声がエロくて、俺のことを蹴って殴って、最後には意識が飛んだまま抱きしめてくるお前が、可愛くて仕方がないからに決まってるだろうが」
晴瀬が平然と、顔色も変えずにまくし立てると、俺の顔がみるみる熱を持つのがわかった、さぞ真っ赤になっていることだろう。目を丸くしたまま俺は固まってしまった。
「……………………はえ???」
「だから可愛い顔もっと見せろ。」
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